第19話 崩れゆく循環、導く炎と揺れる刃
水の国が近づくにつれ、ただならぬ異変の兆しが――。
風に混じる不穏な匂い、凶暴化するモンスター。
旅の仲間たちは、さらなる試練に直面することになる。
そして…ジョーの様子がどこかおかしい!?
「まほおし」新章、波乱の展開へ――
しばらく経った後、2人が戻ってきた。戻る途中に少し手強いモンスターと鉢合わせてしまい、時間がかかったという。火の国周辺のモンスターより手強かったという情報を得た。
「樹木の状況が変わったのか……?一度、確認をしに行ったほうがいいかもしれないな」
「樹木?」
初めて耳にする単語だったので、つい聞き返してしまった。
「惑星ファルナは、樹木という国の中心部によって成り立っている。その循環が滞っていたり、悪化すると国中のモンスターの凶暴化にも繋がってくる」
「樹木はどこにあるんですか?」
地図を開き場所の確認をする。ルロンド隊長は、その地図を指でなぞり教えてくれる。
「おおよそ地図の中心だな。とは言っても、この辺りより危険な可能性が高いから、後回しにした方が賢明かもしれない」
「整理すると……惑星ファルナは樹木を軸にして動いている。そして現状、水の国も帝国軍の支配下となっている。更にモンスターが凶暴化している可能性がある――ということは、これから先、もっと気を引き締めて旅をする必要がありそうですね……」
「ああ、その通りだ」
隊長の言葉に皆が頷いた。
しかし、私はどこか引っかかるものを感じていた。
――"樹木"が荒れているなら、水の国も安全ではないのでは?
ふと、風に混じる違和感に気づく。どこからか、潮の匂いに混じる腐敗臭がする。
「……なんか、水が変な匂いしない?」
仲間たちが周囲を見回す。
水の国の方角から吹いてくる風は、いつもよりも湿り気が強かった。
まるで、何かが腐っているかのように。
もしかすると、既に何かが起こっているのかもしれない。
その不安を振り払うように、私は改めて気を引き締めた。
「……急ぎましょう。今は先へ進むことが最優先です」
仲間たちと視線を交わしながら、私は足を踏み出した。
けれど、この時はまだ気づいていなかった。
――水の国が、想像以上の異変に見舞われていることを。
♦♦♦
「隊長!モンスターが近づいてきてるわよ!」
最初に気付いたのはラトだった。私とそれほど位置が変わらないのに、遥か遠くを見据えている。
「皆、気を付けましょう」
私とディーンは後方から呪文を唱え始めた。
黒い毛並みが逆立ち、黄色い瞳がギラつく。その牙の間から粘ついた唾液が滴り落ちる。低く唸る声が、威嚇するように響いた。
二足歩行の狼モンスターが、ズシン……と大地を踏み鳴らしながら迫ってくる。喉がゴロゴロと鳴り、黄色い瞳は獲物を逃がさぬ狩人のものだった。
爪が地面を抉るたびに、乾いた音が響く。喉の奥がカラカラに渇くのを感じた。その直後、指先が震え、放った火球は惜しくもモンスターの足元を掠めた。
「くっ……!」
焦りのせいで狙いが定まらない。指先が震え、火球は無情にもモンスターの足元を掠めた。すぐに体勢を立て直そうとするが、手が震えている。緊張で喉が渇く。手のひらはじっとりと汗ばんでいる。
「お姉ちゃん、落ち着いて。ボクも一緒だから大丈夫だよ!」
ディーンの声が、私の心を支えてくれる。
「(違う、落ち着いて……!……そうだ、ふわっ、だよ……!)」
私は深く息を吸って、ディーンの言葉を思い出しながら、もう一度魔法を撃つ。
今度は、確実に命中した。
「ディーン……ありがとう」
ディーンと後衛で戦っている中、前衛で戦う3人が怪我をしないか不安もあった。しかし、なんとかモンスターを倒し、私は肩で息をしながら、仲間たちと視線を交わした。
「ふぅ……なんとかなったね」
ディーンが笑いながら声をかける。
「うん、ありがとう」
私は微笑み、額の汗を拭った。
だが、胸の奥がざわつく。──まだ、終わりじゃない。
仲間たちが安堵の息を吐く中、一人だけ違う空気を纏っている人物がいた。
「(ジョー……?)」
彼は剣を、いつもより強く握りしめていた。
肩で荒く息をしながら、まだ目の前に敵がいるかのように視線を彷徨わせていた。
「ジョー?」
私が声をかけた瞬間、ジョーの肩がピクリと揺れた。しかし、振り返ることなく、剣を握りしめたまま前を睨みつけている。
──まるで、自分自身と戦っているように。
「(ジョー……何かあったの?)」
その違和感に気づいた時、戦場に再び緊張が走った。
「隊長!モンスターが近づいてきてるわよ!」
ラトの鋭い声が響く。
ジョーは一瞬だけ躊躇った。しかし、何かを振り払うように剣を振り上げ、前へ飛び出した――。
読んでくれてありがとう!
水の国編、ここから一気に物語が加速します!
ジョーの様子が気になる…?
モンスターが凶暴化してる理由とは…?
次回もお楽しみに✨
感想・RTで応援してくれたら嬉しいです!