第20話 焦燥の剣、枯れゆく都
――戦場で、迷いは命取りになる。
だが、彼はそれを振り払うように剣を振るった。
「考えたら負けだ」と。
そんなジョーの焦りと苛立ちが交錯する中、世未の身に危険が迫る。
そして彼らが辿り着いたのは、水の国アクエル。
しかし、そこに広がっていたのは、砂漠と化した滅びの街だった――。
戦闘が激しくなる中、ジョーは周囲の声が耳に入らなくなっていた。
彼の目の前には、モンスター……そして、ほんの少しだけ、その奥にいる世未の姿が映っていた。
(隊長はすぐ世未の方に行った……。あいつはもう……俺のことなんて……)
思考が途中で切れた瞬間、ジョーは 『自分のことを考えるのが怖くて』 無理に前へ出る。
「ジョー、待て!突っ込みすぎだ!」
「チッ……考えてる暇なんかねぇんだよ!」
敵を一刀両断する。しかし、その直後、背後からの攻撃に気付くのが遅れた。鋭い爪が腕を掠めた瞬間、焼けるような痛みが走る。反射的に顔をしかめるが、気にしてる余裕なんてない。
「……クソッ、考えたら負けだ!」
痛みよりも、胸の奥に渦巻く「何か」のほうが、ずっと厄介だった。
剣を握る手に力がこもる。敵の数なんて関係ない。ただ斬る。斬って、斬って、前へ出る。それだけだ。頭の中にこびりついた『昨夜の光景』を振り払うように、無理にでも剣を振るう。
(ちげぇ、俺には関係ねぇ……!)
しかし、剣を振るたびに思考は空回りし、胸の奥が焼けるように熱くなる。まるで、答えの出ない迷路に迷い込んだような――。
「ジョー、大丈夫? そんなに無茶しなくても……」
「……放っとけよ。」
そっけない態度。でも、その横顔には、どこか「苛立ち」と「迷い」が入り混じっていた。
「(ジョーが、冷たい……どうしたのかな……)」
いつもなら、こんな時「世未は心配性だな」と笑うくせに。今のジョーは、まるで彼自身を追い詰めているようだった。
♦♦♦
前線でジョー、アディ、ルロンド隊長が戦っていて、狼モンスターの群れを食い止めている。世未はディーンとラトと共に後衛で援護をしている時だった。世未の背後から狼モンスターが現れ、勢いよく鋭い爪で肩を掻き切る。ズシャッ――肌が裂ける鋭い痛みが、遅れて襲う。傷口に熱がじわじわ広がる。
「痛っ……!?こんな所にもモンスターの群れが!?」
世未は流血する肩を反射的に押さえ込んでしゃがみ込む。肩の痛みがジクジクとうずく。傷口の熱がじわじわと広がり、動かすたびに鋭い痛みが突き刺さる。戦い続けるたび、肩の傷がズキズキと訴えかける。鈍い痛みがじわじわと広がり、まるで熱を持った鉄を押し付けられたようだった。だけど、仲間を守るために戦うしかない。
「くっ……痛い。酷い傷……でも今はそれどころじゃない!」
世未が立ち上がり魔法を唱えようとした瞬間、目の前の狼モンスターにラトの矢が降り注ぐ。その直後、ディーンの水の魔法により、敵を倒すことが出来た。
「ごめんね、世未ちゃん。ボクたちが気付かなかったばかりに怪我を追わせてしまって……」
申し訳なさそうにラトが世未に近付いたその時だった。
♦♦♦
「世未!?どうしたんだ、その怪我は……!?早く手当てを……」
世未は自分の怪我を気遣うルロンド隊長の行動に驚いたが、前衛が手薄になるのが気がかりだった。しかしルロンド隊長は「いいから動くな」と短く命じる。その言葉に、世未は思わず目を瞬かせた。
「(隊長がこんなに慌てるなんて……)」
ルロンド隊長が駆け寄り、世未の肩の傷を押さえる。彼の表情は、珍しく焦りが滲んでいた。
「ルロンド隊長!私のことは構わないで、前線に戻ってください!(ジョーとアディが心配……!)」
「……わかった。ラト、ディーン、世未の事を頼む」
(……何故だ?俺は、こんなにも……クソッ、違う。隊長として当然のことをしたまでだ。)
♦♦♦
敵を斬り伏せた次の瞬間、視界の端に映ったのは血を流す世未の姿だった。何かが胸を突くような違和感を覚えた瞬間、体が勝手に動いていた。
(……世未!? 何やってんだよ、そんな無防備な……)
その光景を戦場の端で見ていたジョーは、剣を振るいながらも、心の奥底がざわつくのを感じていた。
(……なんで隊長が先に駆け寄るんだよ)
剣を振るたび、胸の奥の何かが焦れる。
しかし、それを振り払うように、ジョーは唇を噛みしめ、力強く剣を握った。
「チッ……俺には関係ねぇ……」
そう吐き捨てながら、剣を振り抜く。だが、気づけば視線は勝手に世未の方を追っていた。
――違う、そんなつもりじゃない。なのに、拳を強く握りしめていた。
(……関係ねぇ、俺には……関係ねぇだろ……)
ジョーは乱暴に視線を外し、前線へと戻った。
♦♦♦
想像以上の狼モンスターの群れに苦戦を強いられたが、世未たちは無事、水の国アクエルへ辿り着く事が出来た。だが、水の国に足を踏み入れた瞬間、何かがおかしいと感じた。地面はひび割れ、噴水はとうに枯れている。水の都だったはずの国は、まるで砂漠のようだ。
乾いた空気が喉にまとわりつく。どこか、腐った水のような嫌な匂いがした。
空気さえも湿り気を失い、喉にまとわりつくような渇きが広がる。頬を撫でる風も、どこか粉っぽく、乾いた砂が舞うような感覚を覚えた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!✨
ジョーの苛立ち、世未の負傷、そして隊長の行動……
彼らの心の揺れ動きを感じていただけたでしょうか?
ついに水の国アクエルへ突入!
しかし、そこに待ち受けていたのは、まさかの砂漠化した水の都……
この異変の正体とは? 次回もお楽しみに!




