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もぶが現れた!
「到着に御座います」
「ああ」
草原の中にある神殿のような施設、とでも表現すればいいのだろうか? 降り立った場所はオレの乗ったゲートの魔法陣が巨大化したような場所。
「アユム様」
シヴィーの言葉に視線を向けると、他のダンジョンマスターだろう。
プチバッフォに先導される連中がいた。
大きな獣に乗っているのがダンジョンマスターかな? すぐ近くをハーピィのような女性型の魔物が飛んでいる。
「おイ」
「ん?」
声をかけられ、振り向くとそこには……烏賊人間? 人間の顔の部分に白い烏賊が乗っかってる烏賊の人間と、サメの顔を持った半魚人の2人も後ろに続く。
「ドコに向かえばいいんダ?」
「あんたは……」
「ダンマスだヨ、他にいないだロ。ウチの従者が案内のプチバッフォを食っちまって案内がいないんダ」
そう言いながら、その烏賊人間と従者の2人がゆっくりと……跪く。
「あレ?」
「……ロディーブ様、体が勝手に」
ロディーブと呼ばれたダンマスが首を捻る。
「おまエ、何をしタ? ……されましたカ?」
「いや、何もしてないけど……何かしたように見えた?」
「いヤ、だから不思議なんダ……とりあえず、頭を上げてい……よろしいでしょうカ?」
「あ、ああ」
だんだんと丁寧になっていく烏賊人間。
「こちらに危害を加えないと約束するのなら、少し離れて付いてくる事は黙認しよう」
良く分からないけど、余り気は許せない。
「感謝すル、余所のマスターヨ」
「オレ達がこの施設の外に出たら、付いてくる形で。ある程度距離をおいて付いて来てくれ」
「了解しタ、余所のマスター。君達に危害を加えないと約束しよウ。お前たちもいいナ?」
「シャーク!」
プチバッフォの先導で、オレ達は歩き出す。よし、きちんと距離を置いて付いてきてるな。
……シャークって返事?
「よろしいのですか? 従者モンスターを殺すような輩ですぞ」
「なんとなくだけど、オレに危害を加えてくるような感じはしなかったけど」
「アユム様、ご安心ください。何があっても私とコロで対処致しますから」
「わん!」
そんな言葉にオレは頷く。そうだ、腕時計試そう。
「コア、聞こえるか?」
『聞こえるぞマスター! 何か問題か?!』
切迫した声のコア。
「大丈夫。ちゃんとついたよって報告と、ちゃんとコアと繋がってるか確認したかっただけ」
『そ、そうか。は、心細くて声をかけてきたと思っちまったじゃねえか』
なんだそれ。
「ふふ、まあ問題ないよ。草原みたいな場所に出ていくつか分岐がある。そこをプチバッフォの先導で歩いて行ってるんだ。空に浮かんでいる島はオレ達の島か?」
「左様に御座います。どこに誰の島があるかは我々には分かりません、それと神々の別荘島や神々の従者の島なども御座いますよ」
「へぇ」
『用が無いなら呼ぶなよな! ったく』
や、使えるか確認したかっただけだよ。本当に。
そのまま徒歩でプチバッフォが先導。プチバッフォの歩幅が小さいから、歩くスピードも遅い。
「今歩いているこちらのゲートのある島も浮島の一つです。ほら、もう抜けますよ」
なるほど、浮島か。
ゲートのある施設から、何本かわかれた道の一つ。先には白く長い橋が架かっている。
左右を見ると、同じように別の浮島へとつながる橋が何本もかかっている。
その中の一つの橋を渡り、先に進むと大きなお屋敷が顔を出す。
「この先が夜会の会場?」
「ええ、夜会の会場の中でも小規模の施設です。島によっては大陸のような広い場所もあります。斎川様もより多くのDPを得られれば、このようなダンジョンを作成することも可能かもしれませんね」
ウチの5層でも海の範囲を入れると北海道くらいあるらしいんだけど……大陸とかスケールが違うなぁ。
「さて、手続きを取りますが……後ろの彼らはどうしましょうね」
「案内のプチバッフォがいないと入れないのか?」
「入れない事もないですが、少々揉めるでしょうな。我らが同胞に害を為した相手、歓迎なぞできましょうか」
「あー、そうか。まあそれは彼らの自業自得だろ」
「左様でございますか。それでは中に入りましょう」
 




