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腕時計。自動巻きや手巻き式でもこの手の世界では十分オーバーテクノロジーだよね
「ではご案内いたします」
「よろしく頼む」
「わん!」
オレとコロ、シヴィーを連れてプチバッフォが先導をしゲートの前に到着。
大きな丸い魔法陣が淡い光を放っている。
「これより出ますと、各ダンジョンマスターが転送される共有のゲートに出ます。広い場所ですので、転送時に誰かとぶつかったり重なったりする事が無い様になっておりますのでご安心ください」
ようは不思議ゲートだ。
「初参加の夜会にはどのくらいのマスターが来るんだ?」
「そうですねぇ、毎回5人程度でしょうか? 誰もいらっしゃらない時も御座いますね。申し訳ございませんが参加人数は聞かされておりませんし、どういったタイプのマスターが来るのかも存じ上げません」
「そっかぁ」
ふと、シヴィーの顔を見る。
今日のドレスは、黒のカラーを基調に、ブルーとイエローのラインの入ったラメラメのドレスだ。
前回に続き、スリットの入ったスカートから覗くおみ足様がセクシー。
薄く化粧をした整った顔、纏め上げられた黒い髪。
こんな美人がいれば緊張は増すものだが、今日はとても頼りになる。
「アユム様?」
「ん」
今度は足元のコロ。
コロは小さな赤いリボンを首輪代わりに着けている。
油断すると、舌を出すこの犬さんはプチバッフォの指導により舌を出さない様に口を閉ざすようにしている。
「はあ……緊張する」
神殿からこちらに移動した時も緊張したが、ここから先は完全にオレのダンジョンの外の世界だ。
「マスター、これをつけてけ」
コアに渡されたのは腕時計……?
「あたしと連絡が取れる端末だ。マスターの居場所も分かる様になるから」
そっぽ向いて渡された。
「今までダンジョンから出る事なかったから必要なかったけどな。ちゃんとフィルと話して作ったぞ? DPはかなり使ったけど」
スイスの名工が作る様な、金属部分が光輝く自動巻きの時計だ。
「かなりって、その言い方だと相当だよね?」
「距離無制限で、かつマスターの居場所が分かり、サポート出来るようなレベルの物だとどうしてもそうなっちまうんだよ」
「そっか。他にも色々出来る事が増えたんだろ?」
「新しいダンジョンの手引書も入手したから、時間がある時に読んでおけよ」
「わかった。ありがと」
少し背伸びをしてコアの頭を撫でる。
すぐに払いのけられた。
「つけてけ、絶対外すなよ」
オレの手を取ってコアが取り付けてくれる。
「コア、そっち右手」
「なっ! ちゃんと手を出せよ!」
「勝手に取ったんだろ」
オレは右利きだから左手につけたい。
「ちゃんと出せよ。ん、これでいい」
シンプルな銀色に輝く腕時計。秒針が絶え間なく動いている。
これ、時計の一部はホワイトゴールドだよな。それに針って作れないんじゃ?
「これで良し! 大丈夫だマスター、あたしも付いてる」
「そっか、そりゃ安心だ」
オレの不安をどこか感じ取ってくれてたらしい。
有り難い事だ。
「大丈夫だ、シヴィーもコロもいるんだから心配しないでいいよ」
「心配なんかじゃねえよ! でも、気をつけろよ」
「おう」
「シヴィーもコロも、頼んだぞ」
「はっ!」
「わん!」
「プチバッフォ、色々助けてやってくれ」
「ほっほっほっ、お任せ下さい」
プチバッフォがゲートの魔法陣に乗ると、魔法陣の輝きが強くなっていく。
「行ってくるネ」
「あ、ケレンセリッシュ様」
シエルに抱っこされたケレンセリッシュ様が顔を出す。
「何か不味い事があったらゴースを呼ぶネ。それで大体のマスターは黙るネ」
「分かりました、有難うございます」
ウサギ様に頭を下げて、オレは魔法陣に足を踏み入れる。
シヴィーとコロも続く。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
その言葉と共に、視界が白い光に包まれていった。




