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開かずの塔のダンジョンマスター  作者: てぃる
拾い物と湖の井戸
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水加減って単語、未だにオカシイと思ってるんだ!

 来たその日に、早速海人族の冒険者達は湖の前に移動した。


 宿とかでゆっくりするのかと思ったのに。


「おお、こんな山奥の湖だから大したレベルではないと思ったが」


 海人族の男が湖を眺めて呟く。


「不思議な形の湖ね、地面が陥没して出来たのかしら?」


 いえ、上空からドラゴンがブレスをぶっ放して出来たんです。


「湖自体は昔からあるんだよな? なんで開発がされてないんだ?」


「ここにはケイブシャークが出るんだ。普通の網で漁を行おうとすると網が破れるどころか船ごと湖にひきずりこまれちまう」


「湖面に船を浮かべるくらいなら問題はないけどな、魚を釣り上げても魚に傷がついて少しでも出血したらケイブシャークが追いかけてきやがる。種類は多くないが湖から魔物も上がってくるから騎士団が巡回してるくらいだ」


 案内をしていた冒険者2人が補足。


「ケイブシャーク、地底湖か何かに繋がってるのかしら? でもケイブシャークってC級の魔物じゃなかった?」


「そりゃ魔石のサイズでのランク付けじゃそうだけど、水中で戦うってなると普通の冒険者にゃ無理だよ」


 2mクラスのサメなんて陸上でも戦いたくないけどな。


「昼間はいないんじゃない?」


「巣に帰りそびれた個体が結構いるらしいんだよ」


「じゃあ昼間でも潜っちゃまずい?」


「まー武器をちゃんと持てば別にいいんじゃない?」


 そう言っておもむろに海人族の連中は脱ぎだす。


 うん、大事な所は布が巻かれてるよ? 期待してないよ?


 バシャン!


 全員が銛を持って湖に飛び込んでいく。


「おい、なんだこの湖」


「ええ、不思議ね…この感じ」


「季節的にもっと水温は落ちていてもいいものかと思ってたが」


「多少薄いけど塩分もあるのね、海にいるよう」


「水中は思った以上に生き物が多いな、魔物もいる」


「とにかく、言いたい事はだ」


「「「「 いい水加減だなぁ 」」」」


 全員がほっこりしている。水加減ってなんだ。


「ああー、なんか故郷の海にいるみたいだぁ」


「あそこよりも全然いい水質じゃないー」


「ただただ、気持ちいい………」


「もにゃもにゃもにゃ」


「あ、てめえ何食ってるんだ!?」


「千貫ぶどう! いっぱい生ってるわね!」


 浅い湖底部分に生えている水草をちぎって頬張る海人族の冒険者。


 後ろから見ると半魚人だなぁ。


「子供の頃によく海ぶどう食ったなぁ」


「最近は港町にいるからあんまりいいの無いんだよな」


「お、ケイブシャークだ。狩るか!?」


「そっちよりアクアチキータがいるぞ」


「あれキャンディシェルじゃないかしら」


「チップスフィッシュ…あれの鱗パリッパリで旨いんだよな」


「やべえ涎がとまんねぇ」


 水中の海人族が食い物談義をしている。


 水の中でも普通に会話が出来るのねこの人達。


「よし…今日は旅の疲れを取るべく、休息日にするか」


「「「 賛成! 」」」


「「 流石リーダー! 」」


「まずは邪魔なケイブシャークだな。あいつもそこそこ旨いが他と比べると見劣りするし」


「オレが釣りな」


「じゃあうち等で迎撃~」


「オレは……陸上がって調理の準備してくら。籠も用意して網焼きの準備して……」


 言うが早い、海人族の6人はそれぞれの役割に分かれて漁を始め、調理の準備を始めた。


「おい、水中はどうなんだ?」


 陸で待っていた人間の冒険者が唯一上がってきた海人族に問いかけた。


「え、あ! えーっと…調査中だ、うん。今日は手前の湖の魔物の、えーっと分類だな。うん。ケイブシャークも確かにいたな、とりあえずメシの準備をしようかなと」


「そうか、食事なら酒場を案内出来るが」


「酒か…酒も欲しいな…」


「え?」


「あ、えーっとだ。とりあえず今日中に調査は終わらないだろう。湖は思ってたより深いし広い」


 しどろもどろになりながら海人族の一人が体を拭きながら答えていく。


「陸に上がったら体が冷えそうだからな、火の準備だ」


「こっちでやるぞ?」


「いや、それよりもだ…あ~、あれだ。もういいや、あんたらならいいか」


「なんだ?」


 海人族の男は晴れ晴れしい笑顔を向けて言った。


「いやぁ、1週間以上陸地で肉くってばっかだったろ? オレ達は魚に飢えてんだ! そしたらここの湖、すっげえ旨い魚介類に水草が多いんだ! もう我慢出来んっ! 食うぞ! 今日はメシ日だ! 調査なんぞ明日以降にするんだ!」


「お? おう、まあ元々今日は移動後だから休んで貰うつもりだったし」


「じゃあ酒だ! 酒買ってきてくれ!」


「ええ~」


「あと宿、出来るだけ湖の近くがいい!」


「こんな街の隅っこに宿なんかないよ……」


 街の北西側は一般的な住人、兵士の家族などが多い。


 南側が一番人の出入りが多いので、商人や冒険者が多く宿もそちらに集まっている。


「じゃあ空き家かなんかでいいぞ! いっそこの辺りで野宿でもオレ達は……」


「あー、ギルマスに相談してくる……一応街中だからな」


 市街地からは離れているが外壁の内側にあたる。


 街中に青白い人が野宿とか浮浪者にしか見えない。


 ちなみに水中の海人族の5人は楽しそうに魚を追い回していた。

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[一言] 魚好きか。立場が違えば友達になれたかもしれない。
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