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ちっこい黒玉の話。
「んー? どうするかなぁ。誰かにダンジョンマスターになってもらうか?」
ウチの連中でやりたがるヤツがいればあげてもいい。
『聞いてみるか?』
「ちなみにシヴィーはどうだ?」
「お戯れを。私にはアユム様に仕えるという崇高な任務がございますれば」
シヴィーは辞退っと。
「ノイー? ダンジョンマスターやらん?」
『ええ!? 突然どうしたんですっ?! ご主人引退するですか!?』
モニター越しにサブ指令室にいるノイに声をかける。
「や、ダンジョンコア拾った」
ジェリーの腹から。
『な、なるほど。ご、ご命令とあらば…やるですが』
別にやりたい訳ではないっぽい。
「あー、わかった。変な事聞いたな。ありがとう。エディはどうだ?」
『申シ訳アリマセンガ』
ノイもエディもパスっと。
「フィル。ダンジョンマスターやる気ない?」
『歩様、突然どうなさったのですか?』
「実はかくかくしかじかで」
拾った、と言うよりも長いなかくかくしかじか。
『なるほど、ですが申し訳ございません歩様。私は歩様の屋敷を完璧に管理しなければならず、ダンジョンマスターをやる時間は…』
フィルもダメ。
「リーヴァはどう?」
フィルの横にいる婆ちゃんドライアドにも聞く。
「あたしゃは頂いたお役目で満足しておりまする」
婆ちゃんもダメっと。
「みりあー?」
『はい? いかがしましたか我が主』
モニター越しに背中を向けていたミリアに声をかける。
羽を出す為の開いた背中がセクシー。
「かくかく」
『なるほど。それはご命令ですか?』
「いや、無理強いするつもりはないよ?」
『それであれば、私は今まで通り神殿の管理を続けたいと思っております。どのお花をどの神様へ送るか、とか果物はどれにするか、楽しいですから』
みんな命令じゃなければいらないのかな。
「リーサは?」
『あたしゃは頂いたお役目で満足しておりまする』
リーヴァと同じ台詞が帰って来た。
『やはり、一度失敗をしたダンジョンコアなど破壊されるしか…』
「そんなに破壊されたいのか、まあ待て。あとは…」
4Fを映す。
ケレンセリッシュ様の別荘のテラスでお茶をしている婆ちゃんズ。
…あれ? ケレンセリッシュ様いつの間に来てたの?
「ケレンセリッシュ様」
『おお、君か。お邪魔してるネ』
「いつの間に…」
『実はここに直接来れるように、お宅のミリアにお願いしてご神像を移動させておいたんだネ。今は
打ち合わせ中で忙しいネ。要件なら後にするネ』
「えーっと。少しだけ。リリル、リリア、リリナ、ダンジョンコア拾ったんだけどダンジョンマスターやる?」
その言葉に3人は顔を見合わせる。
『『『 あたしゃらは頂いたお役目で満足しておりまする 』』』
「さいですか。えー、と。じゃあケレンセリッシュ様やりません?」
『君は阿呆だネ、ダンマス出来るんだったらここで作物なんか作らせないネ。ダンジョンはナラヴィー様の管轄ネ。神々が管轄を越えて勝手をしたら破戒神が大暴れネ、邪神認定ネ』
「そうだったんですか…」
『ダンジョンなんて無理に作る物では無いネ。要らないコアなら宝物庫にでもしまっておくネ』
『要らないコア。コアはいらない子。やはり破壊されるしか』
要らないコアという単語でダメージを受けるミニコア。
こらこら、ピシっと言ってヒビを入れるんじゃない。
「ああ、そうか。管轄があるのか。お手数をおかけしましたケレンセリッシュ様、ゆっくりしていって下さい。後で顔を出しますね」
『来なくていいネ、何せ収穫作物を確認せねばならないからネ。ゆっくりもしてられないネ』
そんなことを言うと、また打ち合わせに戻ってしまった。
じ、自由だ、このウサギ。




