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オーガってなんか別格に扱いたくなるよね。
「出たぞ! オーガチャンプだ!」
外壁から声が上がった。
「しっ!」
その声に呼応するように領主が矢を放つ。
その矢は、オーガチャンプが片手で持ち上げた仲間のオーガによって阻まれる。
「ぬう、いかんな。普通の矢を使うか」
「待て待て! もっと前に出してからだっつっただろうが!」
「詠唱始めていいかねぇ」
「良くねえよババア! 俺らごとふっとばす気か!」
ギルドマスターがツッコミ役だ…。
「はああああ! せいっ!」
その掛け合いを無視して、兵士長がオーガチャンプに切りかかりその肩口に剣を突き立てた。
「ドレッド! てめえ!」
「若いの! 抜け駆けかい?」
「あいつはあれでいいんだっつーの! もっと引き寄せるぞ!」
なんか騒ぎながらオーガを切り倒してるけど、相手に聞こえない?
「ぐおおおおおおおおん!」
オーガチャンプの雄たけびと共に、いまだに森にいたオーガやオーク達が次々と飛び出してきた!
「やはりまだ伏せていたかっ!」
「ほら! 下がるぞ! もうちょいひきつけるんだ! で攻撃くらうな! 倒すな! あとオレより目立つな!」
「滅茶苦茶言いますな、ギルドマスター」
一際大きく、筋骨隆々のオーガが刺された右肩を押さえながら前進を始めた。
「おお、怒ってる怒ってる」
『取り巻き、あれハイオーガだな。他にも進化した個体がいたんだな』
二人の剣士が後退しながらも、敵を捌いていく。
彼らを取り囲んでいたオーガ達は半裸伯爵が放った矢によって次々と倒れ伏す。
「上手いな」
開いたスペースを振り返って確認するような事もなく、二人はしっかりと後退する。
「勿体ねえなぁ。オーガの骨や牙は売れるんだが」
「睾丸は薬になるのにねぇ」
領主と婆さんの会話。
死体となったオーガ達はダンジョンに吸収されていくからだ。
「まあ、全部が全部回収出来てない訳じゃないから我慢だな」
ギルドマスターと兵士長の後に続いた冒険者達に視線を向ける。
彼らは何か袋を持って、魔物の死体を回収していた。
あれが噂の魔法の袋か! あるもんだな! ファンタジー!
「そろそろ満タンだ! 受け取れ!」
「こっちも終わりだ! 新しいの投げてくれ!」
「次だ次! 次のよこせ!」
「糞領主が! 吹き飛ばし方が雑なんだよ!」
「ああクソ! 間に合わなかったチクショウ!」
「やっぱここもダンジョンかよ!」
冒険者達はオーガの死体を中心に魔法の袋に入れている。
オークやフォレストウルフも回収している様だ。
『卑シイ連中ダ』
「まったくですっ!」
彼らなりの生活の知恵だろうか。
回収して周っている冒険者達は、腕利きのようだ。
死体目がけて駆けまわっているが、時には敵も倒している。
「結構強いな」
『アノ混戦ノ中デ死体漁リヲスルニモ、ソコソコノ実力ガ必要ダトイウ事デスナ』
イービルアイズも感心。
『呼び出す魔族連中に魔法の袋渡そうぜ! DPで出せるぜ!』
「いくら?」
『3000DP~50000DPだな。形やら入れられる量で結構変わるみたいだ』
幅があるなぁ。
「まあこれが終わったらだな」
ボスも出たし、そろそろ佳境だろう。




