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雄大に空を泳ぐグレートシンガル達は眼下に見える魔物達の混成軍を確認すると、ゆっくりとした動作で地面に着水した。
そう、着水した。
「わざわざ水を出したんか……」
魔法で地面を掘り起こし、そこに水を生み出したうえで着水したのだ。
同じように後ろの2頭も地面へと着水する。
立派な池だか湖だかが完成した瞬間だった。
そのタイミングで巨体な背から続々と飛び降りるアーリマン達と、それに続くリザードマン達。
彼ら彼女らの前にコアを乗せた星丸がゆっくりと降り立つ。もちろんミリアも一緒だ。
『なあマスター』
「おお? コア? ホント便利だな」
こっちでもコアの声がするのが違和感。
『おっぱじめていいか?』
「向こうさんがどうでるかだが……」
そう思ってると、オーク達の一角が割れてそこから1匹の巨体が、オークが現れた。
『ブモオオオオオオオ!! ブモ!! ブモモ!! ブヒ!! ブヒッ!! ブフン!』
「一番槍は彼のようですね」
「なんて?」
「お耳汚しになるので、ご容赦下さい」
どうやらコアかミリアに向かって下種な事を言ってるらしい。
『はっ! ナマ言ってんじゃねえぞ豚野郎が! ぼっこぼこにしてやっかんな!』
両手の拳を叩き合わせたコアがモニター越しでしゃべる。
指ぬきのグローブなんてどっから持ってきた……。
挑発しあうようににらみつけると同時に、巨体のオークの周りにいるオークが雄たけびを上げながら走り出す。
コアは目を細めると、右手を高く上げて……。
『かかれぇぇぇぇぇ!!』
『『『『『 オオオオオオォォォォォォォォォォ!! 』』』』』
アーリマン達とリザードマン達も雄たけびを上げて武器を抜き走り出す。
「真っ正面からぶつかり合うのか……」
「そうでもないようですね」
上空から見ているジェリーの映像はアーリマン達の群れが正面に展開し、リザードマン達は左右へと広がっていってる。
『吹っ飛ばせぇぇぇぇ!!』
『前へ出なさい! 下がるような臆病者は私が切りつけますよ!』
コアとミリアも声を上げている。
アーリマン達はリザードマン達と比較して…… オーク達と比較しても、体が大きい。
頭二つ分はでかい。
ワニの顔を持ち、3m近い筋肉質で鱗を持つ魔物がその体に合ったサイズ1m以上もの幅のあるシミターやハルバードを片手で振り回してオークを受け止める。
否、ちぎり飛ばす。
『雑魚がぁぁ!』
『吹き飛べぇ!』
『ぶっ飛べぇ!』
『農作業で鍛えた筋力なめんなぁぁぁ!』
雄たけびを上げながら武器を振り回し、敵を切り倒す。
中には吹き飛んだオークの首を口でキャッチしてかみ砕いている奴もいる。
やだ、ウチのアーリマン達怖すぎ。あんなのが田んぼ管理してるの?
「部隊をしっかり分けてますね。アーリマン達が正面を受け止めてリザードマン達が展開…… なるほど。どうりで彼らは槍を持っている訳ですか」
オーク達は正面からまっすぐ走りこんでくる。
それに対して、左右に展開したリザードマン達はオーク達やゴブリン達を槍で刺しては離れて刺しては離れてをしている。
「いつの間に訓練してたんだ」
「コア様が戦国時代の合戦ドキュメントを彼らに見せていましたから」
や、訓練してたのは知ってましたけどね? あんな集団戦闘訓練をしてるなんて思ってなかったんよ?
安土桃山時代の戦国武将達の戦いを参考にしているらしい。
ただ突っ込んでくるだけの敵にはかなり有効なようだ。
しかもオーク達はともかく、ゴブリン達は無手。
ゴブリン達は蹴り飛ばされ、しっぽで飛ばされている。
『ブモァァァァ!!』
一際巨体のオークが声を上げて前へと進んでくる。
自然とそのオークの周りからは他のオークやゴブリンが離れていく。
その姿を見たコアは、星丸から降りると敵を見据えたままミリアと星丸に一言。
『お前ら、手出すなよ』
『はっ!』
『おん!』
星丸の鳴き声に和む。
「大丈夫だよな……」
『心配すんなって』
「問題ありませんよ、マスター」
コアが今度はこっちで声をだす。シヴィーも自信満々に頷いた。
『さて、プロボスとやら。勝負すっか』
『ブモオ! ブモオオオオ!!』
名付きの魔物か!
巨体だからタダのオークじゃないと思ってたが、もしかしなくても進化個体だろう。
アーリマン達もそのオークには手を出す様子が無い、実力差が明確なのだろうか。
「コア、怪我のないようにな?」
『心配すんなって! それと、今はコアじゃねえ!』
美しく長い金髪をかき上げてニカッと笑みを浮かべる。
『セカンド=ウォーカーだ!』
過去一で盛り上がってる話かもしれない。




