報告書09 夢想の平和
リスティの弟妹たちが待つ《内地》に戻るためには、自分たちが今どこにいるかを知るための座標データが必要となる。この座標データは、この大地こと《圏外》においてはそこそこ商売になりうるものらしく、幸いなことに手に入りにくいアイテムであるということはなさそうだった。
入手できる場所は、今のリスティのように旅をしている命知らずと物々交換か。それともそんな命知らずたちが集結し、短時間で交流を図るターミナルと呼ばれる集会か。もしくは町と呼べるほど発展した集落か――マキナが前者二つに心当たりがなかったために、とにかく町を探して《大型四輪》は走り回っていた。
そうしてようやく見つけた町は、ずいぶんと賑やかかつ歓迎的だった。
「よく来てくれました! 旅人が来るのは久々です」
「お腹すかしてないかい? 交換受けつけてるよ?」
「珍しい機械部品持ってないか! 引き取るぜ!」
「この町には珍しい綺麗どころが二人も!」
「ええと……はは、その……」
「熱烈歓迎ね」
「皆さん、旅人さん困ってるじゃないですか!」
不思議と《機械》対策なとがされていないように見える壁を抜け、入口の関所で大型四輪を止めると、すぐさま暮らしていた人々に囲まれることとなった。関所には鉄棒を持った警備員がいたものの、その警備員も囲む人間たちに混じっているのだから、仕事をする気がないようだ。
マキナが言うところの熱烈歓迎にいきなり晒され、外に出て応対を担当していたリスティは困り果てていた。マキナもイユも助けてくれる様子はないらしく、何やら大型四輪に乗ったまま二人で話し込んでいるようで。その間にもさらに町の人間たちは増えていく。
囲んできた全員へそれぞれ個別に対応しながらも、三人目ほどでそれも果たせなくなってしまって。もはや愛想笑いしか浮かばないほどに、思考回路がショートを起こしかけたリスティに、知り合いではない救いの声が差し伸べられた。
リスティたちを囲んでいた人々の波を割るように現れた女性は、察するに上の立場の人間のようだった。とはいえ内気で心優しい、あまり自分を出さない女性だということは見て分かり、押しの強い町の人々にからかわれていたものの。
「もう! ……失礼しました。私、町の代表をしているバララ、と申します」
「は、はは……わたしはリスティです。皆さん、楽しくていい人そうですね」
「ええ、明るくていい人たちですよ。少し騒がしすぎますけど……そこ、静かに!」
「こちらはマキナさん、この四輪の持ち主です……よろしくお願いしますね!」
「はいはいどうもー。それで、《機械》がどうして人間のふりしてるわけ?」
「……え?」
「そっくりそのまま、お返ししていいですか?」
代表と言えども気さくで町民からは慕われているのは、リスティと話している途中にもかかわらず、「声が裏返ってるぞー」などと茶化されるバララの姿を見れば分かる。そんな姿にどこか、マキナに振り回される時の自分を重ね合わせて、リスティは苦笑いしながら握手を申し出て。
バララもしっかりと握り返しに応じてくれて――そこでリスティは、その感触に既視感を覚えると、大型四輪に乗ったままのマキナから思いもやらない言葉が放たれた。リスティがその言葉についていけない間に、バララはその言葉を認めるかのような返答を示して。
そこでリスティは思い出す。握手の感覚――それは始めてマキナと握手した時と同様のものであり、それはつまり、バララの手は機械部品で出来ていると。
ようやく事態を把握したリスティは飛び退いて大型四輪に乗り移り、ポケットの中にしまっていた機械柄のスイッチを押すと、バララたちに発生した光刃を向けた。しかしてバララたち町民はそれに怯えることもなく、変わらず明るく笑っていて。
「ま、待ってください! 私たちに戦う意思なんてありません」
「……ですが《機械》なのでしょう?」
「そうです。私だけでなく、この町にいる全てが、あなたの言う《機械》です」
「なら、信じられません!」
「貴女はさっきまで、明るくいい人たちだと思っていたのでは? ……それに隣にも《機械》があるじゃないですか」
「そ、それは……」
「私たちはこの平和が欲しいだけなんです。物資や座標も、きちんとした取引をしましょう? ……人間どうし」
先程まではこの《圏外》らしからぬ明るい人たちだと思っていたが、バララ含む町民全てが《機械》であるなどと聞いてしまえば、もはや恐怖しか感じなかった。これだけの《機械》に襲われてしまえば、どうあってもひとたまりもないだろうと。
……ただ、確かについ先程までは、明るくいい人たちだと思っていたのも、確かだ。そしてマキナという存在も含めて、リスティはバララの言葉には何一つ反論することは出来なかった。
ただ平和が欲しいだけ、というバララの言葉が真実かは分からない。ただしリスティたちは現に襲われず、特に人間を脅かした後も見られない。それ以上に、《機械》だという人々は平和に暮らしている。
リスティの故郷で待つ弟妹のように、《機械》には見えない町民たちは仲間とともに人間同然に、助け合って手を取り合っている。平和に暮らす者が人間であろうが《機械》だろうが、リスティにそれを切ることなど出来ない。機械柄のスイッチを切って光刃を収めると、リスティはマキナと立ち位置を交換した。
「……あとはお願いします」
「うん、機械は機械どうしってことで」
「……イユさん。彼女たちの言っていることは本当なんでしょうか」
『周辺を精査してみましたが、直近では争いの後はありません。平和的に暮らしたいだけというのも、今は嘘ではないかと思われます』
「マキナさんで慣れたつもりでしたが……人間のような《機械》というのは、まだよくわかりません」
『人間の心を持っていれば人間。リスティ、そうあなたは言っていませんでしたか?』
「心って、なんで見えないんでしょう。不便ですね」
リスティはイユとの会話のために大型四輪の奥に座り込むが、そんな配慮などいらなかったと思うほどに、町はイユの言葉通りの平和だった。バララとマキナは特に何か対立するようなこともなく、手早く交渉に入っていく。そんな様子が面白くないのか、大型四輪を取り囲んでいた町民たちも三々五々に散っていき、再び元の生活に戻っていった。
本当に大型四輪に危害を加える気などはなかったらしく、マキナとの交渉により必要な物資などを運んでくる者もいるほどだ。そんな人間らしい彼ら彼女らに、リスティはふと内心を偽らすに呟いてしまって。
人間の心を持っていれば人間、そうリスティは戦乙女の町で内心では定義づけた。その定義に収まるマキナやカツのような《機械》もいたのだから、もう少し頭を柔らかくしなくては――と考えたところで、リスティの思考に一つの考えが浮かぶ。
カツは音楽によって人間性を得たといっていた。ならば、この町の人間は――マキナは、どのようにして人間性を得たのだろう? その疑問からリスティが顔を上げると、マキナとバララの交渉は上手く終わったようだった。
「いい交渉でした。ありがとうございます」
「いやーこちらこそ! ……それで、なんで平和が一番! ってなったの?」
「……理由は、分かりません。ですが突然、そう思えたんです。ここはそんな《機械》たちの受け皿なんです」
「そっか! ごめんね、変なこと聞いて。それじゃ私たち、そろそろ出発するから!」
「は、はい。重ね重ね、ありがとうございました」
「……あの、バララさん」
「どうかしました? リスティさん……ですよね?」
「あなたたちのこと、応援はできません。……ですが、この町の平和が続くように、祈っています」
「……最高の言葉です。私もあなた方の旅路を祈っていますね」
そうして最後に少しだけ言葉を交わして、大型四輪はその町から出発していった。機械部品との交換で欲しがっていた座標カードを手にいれたため、ようやくリスティの故郷へと進路を変えることが出来る。
お互いに祈りを交わしたバララだけでなく、町民たち総出での見送りをしてくれていた。この町に来た時は、《機械》対策の壁がないことを不思議に思ったものの、真相は単純なものだった。町民自体が《機械》なのだから、人間狩りの《機械》対策の壁は必要はないだろう。
大型四輪からリスティは、見送ってくれる町民たちの姿を見る。その中の一人、見るからに腐ったパンを平気に食べる者がいて、やはり彼ら彼女らは人間ではないのだと再確認する。
どことなく、寂しさを感じた。リスティ本人にも、理由は分からないけれど。
『座標を読み込みました。後はお任せください』
「よろしくお願いします、イユさん」
「平和が一番……かぁ。リスティはどう思う? はいコーヒー」
「ありがとうございます。……そうですね、わたしもそう思います。平和に暮らせるなら、それが一番です」
「でもそうなると、私が今までしてた事がなくなっちゃう!」
「ふふ。それを言うならわたしも警備隊員は続けられませんね」
「……それじゃ、平和になったらリスティは何をするの」
「そう言われると……考えたこともありませんでした」
座標カードを大型四輪に挿入し、しばしの待ち時間とともに車両前方の鏡面に映し出される。幸いなことにリスティの故郷とは正反対、ということはなく、近づいてはいたようだ。
現在地点と《内地》までのルート検索はイユに任せ、リスティとマキナはコーヒーでも飲みながらゆっくりしていると。マキナから先の町でバララが言っていた言葉である、平和についての話題が振られる。
……正直、リスティは平和など考えていない。終わりのない《機械》との戦いを生き抜くのに精一杯で、そんな夢物語を考えていられる暇などないから。ただ夢物語なら、夢物語らしく夢想してもいいだろうと、リスティはコーヒーを飲みながら考えた。
「多分わたしは……平和になっても警備隊員です。平和になっても小さい揉め事はあるでしょうし……あ、道案内とかいいですね!」
「やだズルい、続けられませんね~って言ったじゃない」
「ええ、知りませんでした? わたし、ズルいんです。それで……リスティさんは?」
「何が?」
「何がじゃないですよ。ほら、平和になったら、ってやつです」
「私は――」
『お喋り中のところ申し訳ありません。この車両に人間が接近しています』
「――イーユー。車、止めて」
「わたし、行ってきます!」
あいにく考えても、リスティは今の自分の生き方以外は浮かばなかった。平和な時間など思い浮かべられないのだから当然だが、これではマキナのことも悪くは言えないと苦笑する。
そこは適当にごまかしながらマキナに話を振ると、マキナが何か言おうとする前にイユからの警告が届く。大型四輪に人間が接近している――その言葉とともに、車両前方の鏡面が地図から周囲の状況に映し出すものを変える。
そこに映っていたのは、倒壊した居住スペースを根城にしていたらしい、一人の男性。その手には護身用かハンマーが握られていたが、決して危害を加えるつもりはないというアピールか、両手を挙げながらゆっくり向かってきていた。何をするつもりかは分からないが、ひとまずは話を聞いてみようと、大型四輪を止めてリスティは車の外に出た。
「ええと、何かご用ですか?」
「あんたたち……あの町に行って平気だったのか!?」
「え? ええ……まあ」
「そうか……よかった。信じられないかもしれないが、あの町にいる連中は全員《機械》なんだ。ここらを旅する人間はみんな行方不明になってるらしい……」
「で、ですが! あの人たちに人間を襲う気はないって……」
「あんた《機械》が言ってるようなこと信じてるのか!? ……あんたらも、奴らに乗っ取られてるんじゃないだろうな」
「そんな……ことは」
「……心配して損したよ。イカレどもめ」
「ま、待ってくださ――」
大型四輪に近づいてきた男の表情は、心の底からリスティを心配してのことだった。しかしてその表情は、次第に嫌悪と恐怖へと変わっていった。《機械》であるバララたちの言葉を信じたこと、それが理解できないのだと言うように。
ただ理解できないのはリスティも同様だった。話し合ったのは短い間だったが、バララが嘘をついていたようには見えなかったこと。《機械》の言葉だというだけで、信じられないと断じる男のこと。
そしてこの世界において男の方が正常であり、リスティは異常だということが。
男は呆れて大型四輪から離れていき、廃墟となった居住スペースに隠れていた、男の仲間らしい武装した集団とともに町へ向かっていく。何をしようとしているかは火を見るより明らかであり、リスティが思わず止めようとした瞬間、町から悲鳴や爆発音が響き渡った。
『先程の町が襲われているようです』
「《機械》に? 人間に?」
『《機械》の反応はありません』
「……助けに行きましょう!」
「……助けるってどっちを? 人間を? 機械を?」
大型四輪に近づいてきた男たちを含むのは別動隊。恐らくリスティたちが出発するのを合図として、あの町を襲う手はずとなっていたのだろう――イユの言葉通りならば、《機械》ではなく、人間たちが。
そうしているうちにも町民たちのものであろう悲鳴や爆音は、少し離れた大型四輪にも聞こえてくるほどだった。そんな声にリスティはいてもたってもいられず、反射的に助けに行こうと宣言するものの、すぐにマキナから問いかけられた。
リスティが救おうとしているのは、平和に暮らしていた《機械》たちを襲う人間か? それともリスティが《機械》から守ろうとしている人間か? その問いかけに、リスティは一瞬だけ躊躇した後に迷いなく答えた。
「両方です!」
「……両方?」
「誰かから襲われてるなら、それが誰であれわたしは助けます!」
「うん、それでこそリスティだ! ……でもあの人間が言ってた通りに、平和に暮らしてるのが嘘だったらどうするの?」
「その時は……その時に考えます!」
「うんうん。……イーユー、聞いてたわよね?」
『……町に戻ります』
「はいスピード上げる!」
リスティが出した結論は、人間だろうと《機械》だろうと正常だろうと狂っていようと、誰かに襲われている人を助けること。リスティが戦うべき理由は、難しい理屈をこねくり回さずそれだけで充分だ。
もし本当にバララたちの言葉が全て嘘だったのであれば、その時はその時に今のように考えて決めればいい。
そんな言葉を聞いて何か嬉しかったのか、マキナはニッコリと笑いながらリスティの頭をクシャクシャと撫ではじめながら、ものすごく気の乗らなさそうなイユに反転命令を下す。さらに速度を上げさせたために、大型四輪は軽々と男たち別動隊を追い越して、すぐさま町に到着する。
リスティがマキナの頭撫で攻勢から脱することが出来たのは、そこでようやくだった。
「怪我をしてる人たちを助けます!」
「《機械》を助けるの初めて。じゃあ大型四輪の近くに運んでくる感じでね」
「はい!」
そうして大型四輪の扉を開いたリスティが見たものは、思い思いの武器を持って町民を襲う人間たちの姿だった。鉄槌で殴られ、ナイフで切り裂かれ、壁に叩きつけられた町民たちからは機械部品が露出しており、《機械》というのは本当だったらしい。
ただし《機械》であるはずの町民たちは何の抵抗も示しておらず、悲鳴をあげて逃げ回るのみでしかなかった。それを追う人間たちといった図式は、戦いというよりはまるで狩りとした方が正しいほどに。
それはこの世界で《機械》が人間たちに行っている日常的なようでいて、それ以上に残酷なことだった。
町で行われる狩りにいてもたってもいられず、リスティは大型四輪を飛び出した。転んだ町民の頭を潰そうと、鉄槌を振りかぶる人間の前に躍り出て、鉄槌の柄を発生させた光刃で切り裂いた。そのまま転んだ町民を庇うように立つと、人間たちと町民たち相互から混乱の声が上がった。
「リスティさん……どうして……?」
「バララさんでしたか! 助けに来ました!」
「なんだお前! どけ!」
「どきません!」
「お前も《機械》か!」
「人間です! でも……無抵抗の相手を一方的に殺す方こそ、それでも人間ですか!」
「……なに言ってるんだ? 相手は《機械》だろうが……よぉ!」
「……すいません!」
リスティと男の会話はまったくの平行線だった。お互いがお互いを理解しようともしていないので当然だが。らちがあかないと思った男が、鉄を失った槌で殴りかかろうとしてきたところ、先んじてリスティの肘打ちが腹部に直撃して倒れ伏す。
その間に襲われていた町民の手を引いて助ける時に気づいたが、リスティが助けた相手は町民の代表たるバララだった。驚愕に目を見開くバララは、いくつか機械部品が露出していたものの、大したことはないらしい。
ひとまず大型四輪の近くに運ぼうかとリスティが手を引いて走ろうとした瞬間、リスティの前に武装集団の男たちが立ちはだかった。
「そいつを渡してくれ」
「……嫌です」
「あんたのさっきの言葉は聞いてた。だけど俺たちは、その《機械》に近しい人たちを奪われてんだ」
「違います! その方たちは私の説得で、進んで着いてきてくれて……今も協力してくれてて」
「嘘ついてんじゃねぇ! お前が騙したんだろうが!」
「……バララさん、どういうことですか?」
立ちはだかった男たちは、武装集団のリーダー格たちらしく。やはり別動隊の男が言っていたように、バララたちに大事な人を奪われたための復讐だ、という姿勢を崩すことはなかった。
ただバララは奪ったわけではなく、説得して着いてきてもらっただけだと。しかも、リスティは奪われた人たちというのを、バララたちに殺されたかのように思っていたが、今も協力してもらっているという。
どういうことか分からずリスティは説明を求めると、バララは観念したように語りだしていく。
「人間たちは《機械》に襲われないよう地下で保護しています。私たちは見返りに、その人間たちの習慣をお借りしました」
「習慣……?」
「はい。人間らしい習慣、人間らしい生活、この町はそうして作られました。人間たちが感じている景色や感情は、なんて素晴らしいものかと……」
「はっ。何が保護だ。変なカプセルに無理やり寝かしつけてあったくせによ」
「まさか……出したのですか? カプセルから!?」
「ああ、助け出してやったよ!」
そうしてバララが語ったことは、リスティには詳しくは理解できなかったことだった。ただ分かったことは、この町にいたあの明るかった町民たちは、人間たちを模倣した《機械》だということ。音楽で人間性を得たカツがいたように、彼ら彼女らは人間を模倣することで人間性を得ていたのだ。
ただし模倣といえども、いや、模倣だからこそ。その人間性は本物であり、平和を願い日々を楽しく暮らす思いは本当だったのだろう。
しかしそのバララの思いも、武装集団のリーダーが語った言葉によって崩される。信じられない、とばかりに聞き返したバララからは、先程までの優しい様子を感じることは出来なかった。
そして保護していたという人間たちがカプセルから出されたと聞いた瞬間、決壊したようにバララは高らかに哄笑を始めた。
「ハハハハハハ! アハハハハハ!」
「バ、バララさん……?」
「ハハ、ハハハ……あなたたちが悪いんですよ? あのカプセルを通して、彼らの健康管理と私たちへ習慣を送っていたのに、出した?」
「……おい! 今すぐ《機械》どもを殺せ!」
「もう遅いですよ」
「バララさん、どうにか出来ないん――」
バララが語る言葉が意味することはただ一つ。カプセルから人間たちを出したが最後、人間性を得ていた町民たちは殺戮機械へと戻ってしまう、ということ。
そのことにリスティとともに気づいたリーダーが、抵抗しない町民たち相手の狩りを楽しんでいた部下に恫喝したものの、バララの言葉通りにもはや間に合うわけもなく。
「――あ」
町は一瞬にして人間たちの悲鳴が炸裂し、リスティは背後にいたバララに肩口から強く噛みつかれていた。
後半へ続く