3話
彼の家は市街地にあり、帰宅のためのルートとここまで歩いてきた道のりは違うはずである。
だとしたら桑間はなんの用事があって、こんな軍事基地の周辺まできたのだろう?
やがて桑間は南の川沿いにある軍事基地のやぶれたフェンスの下にある下水施設へと入っていった。
一般人の学生である桑間には通行許可証もなければ顔パスもない。これは完璧な不法侵入だった。
桑間がこの裏道を知ったのは、彼が川沿いでザリガニ狩りをしていた時に偶然見つけたものだった。
桑間は持ち前のずうずうしい好奇心で、なんも遠慮もなく、平気でやぶれたフェンスをぬけ、軍の地下道へと不法侵入していった。
とんでもねえ野郎だ!
とにかく不法侵入で地下道をぬけ、そこで、彼は思いがけないモノとであったのだ……
やがて、地下道をぬけると、一つの保管庫に入っていった。
そこでは何やら軍が大事に使う機材や、おもおもしい機械、金属をくっつける溶接や、部品をしめるボトルやネジが小さいのから大きいのまでそろって置いてあった。
何かの機械を管理する整備室のようでもあった。
その中で特に厳重な警備で、特殊な設備で保管してある機械があった。
じつはそれが、桑間が最近はまっている”オモチャ”である。
「へへへ、今日もコイツで遊ぶかあ♪」
桑間がその機械に近づき、右手でカワイイ子猫をなでるようにふれた。
オモチャは一見すると宇宙服のようであった。しかし、普通の宇宙服とちがうのは、金属でできた表面にハガネの光沢をうつしだし、鋭利な刃物で造形したようなシャープなデザインに、自由自在に動く人工関節をほどこしてあり、背部には高速でぶっ飛ぶ高性能バーニア・エンジンがつまれてあった。
その機械とは、大手民間企業と軍が極秘に開発している"テラッド・スーツ"であることを、その時の桑間ジョウジはまだ知らなかった。
桑間が”テラッド・スーツ”をロック保護してる設備を解除するために……
設備の右横にある特殊キーボードのコマンドを慣れた手付きで入力していく。
このキーコマンドは取扱説明書に書いてある製造日と基地の番地名を適当に組み合わせて入力したものである。偶然にも桑間は5回組み合わせてこのパスワードを解読してしまったのだ。
タチが悪い奴だ。
こうして、特殊キーボードからロック解除を入力していくと、空気圧が、
”プッシュウウウ”
とうなり、厳重な警備で保護されていたテラッド・スーツが桑間の目の前におしだされた。
そして、今度は左横にあるコントローラで『スーツ装備』のボタンを押す。
すると……”カチャ、カチャ”とテラッド・スーツが開き、このスーツを人間が装備することができる状態になった。
あとは、身にまかせて、スーツに体を合わせていけばいいだけだ。
桑間はこれまた慣れた手付きで……
右腕”カチャ”
左腕”カチャ”
胴体”カチャ”
両足”カチャ”
最後に頭部”カチャ”
と体にはめ込むようにテラッド・スーツを装着していった。
テラッド・スーツは金属でできていて、中にはバーニアエンジンや、他の精密機械が入っている……だからとても重いはずだ。
単純に考えて総重量100キロは超えているかもしれない。
なのにどうだ?
テラッド・スーツを着た桑間はヒザをまげ、ウデをふり回し、スクワットで5回ほどジャンプした。それなのにちっとも重さを感じない。
おそらくテラッド・スーツの関節に最新の人工関節が使われているのだろう。機械の関節が自動で人間の動きにあわせて、スーツの重さをカバーしてくれているのだ。




