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エピローグ
それから、何年か経った。
夏美は今、都内の小さな編集プロダクションで働いている。
日々の忙しさのなかで、あの頃のような妄想をする時間も減ってしまった。
それでも、ふとしたときに、あの夜のことを思い出す。
たとえば――
帰り道、夜空を見上げたとき。
コンビニのカツカツというパンプスの音を聞いたとき。
誰かが「ピロピロピー」と言ったとき。
香ばしい唐揚げのにおいが風に混ざったとき。
あの夜、妄想の仲間たちが手を振ってくれた光景が、ふと胸の奥からよみがえる。
「……あの子たち、今ごろどうしてるかな」
そんなことをつぶやいて、自分でもくすっと笑う。
バイトを辞めたあの夜、泣いたのはほんの少しだったけど――
確かに、何かが自分の中から離れていった気がした。
でも、妄想は終わったわけじゃない。
今も、どこかでちゃんと生きている。
きっと彼らは、星の国で暮らしている。
毎晩空から、夏美のことを見てくれている。
そして、いつかまた必要なときには、そっと姿を見せてくれる。
星がまた、ひとつ流れた。
「……私、元気でやってるよ」
夏美は心の中で、静かに、確かに、そうつぶやいた。




