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なつみの、ひとりごと日和  作者: ひまわり


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雨靴の騎士たち

朝。

カーテン越しに聞こえる、ぽつぽつ…という音。

夏美は布団の中で目をこすりながら、ため息をついた。


「今日は雨かぁ…」


小さな声でつぶやいて、そっとカーテンを開ける。

空はどんよりと曇っていて、道には雨粒がしとしと降り注いでいる。


「大雨じゃないけど、しっかり濡れるやつだな…」


朝ごはんを食べて着替えて、最後に靴箱の前で立ち止まる。

並んだ靴たちの中から、グレーの雨靴を選んで手に取った。


「今日は君たちの出番だね」



そして、物語は始まる。


雨靴の騎士たちの妄想世界——


「姫が我らを選んだぞ!出陣だ!」

「我らに課せられし使命、それは——夏美姫の足を、濡らさぬこと!」


2人1組の精鋭騎士。

左足のグレイシュ、右足のブーツォ。

普段は玄関で眠っているが、雨の日には使命を帯びて目覚める。


「今日の天候は霧雨まじりのしとしと型。ぬかるみと水たまりに注意せよ」

「了解!気温は低め、姫の足先の冷えにも留意を!」


ぎゅっ、と足が入ると、彼らの覚悟は決まる。


「いってきまーす」


傘を差し、夏美が歩き出す。

しずくの踊る歩道、アスファルトに映るぼやけた世界。


「おお、前方にぬかるみ!姫のつま先が滑らぬよう、足裏グリップ強化!」

「通学中の自転車に注意!タイヤがはねる泥しぶき、進行方向右より接近中!」


まるで戦場のように情報が飛び交う中、

グレイシュとブーツォは静かに、でも確実に、夏美の足元を守っていく。


「ふふっ、雨靴履いててよかった〜」


その一言が、彼らにとっては何よりの勲章。


「お聞きか、グレイシュ」

「うむ…姫のお褒めの言葉…!」


感激に打ち震えながら、彼らは再び前へ踏み出す。



途中、トラックが近づいてくる。

大きなタイヤが、路肩の水たまりを蹴り上げる!


「来るぞ!最大規模の水しぶき!」

「迎撃態勢!私は左から包み込む!君は右から角度を調整!」

「合体シールドモード、発動!!」


ぶわっ!


だが夏美の靴下は濡れなかった。

しっかりと、騎士たちが水を防いでいたから。


「よし、完全防御だ」

「騎士たる者、使命は常に静かに遂行するもの…ふっ」



バイト先のコンビニに到着し、雨靴を脱いでロッカーにしまう。

中は少し暗くて、ほのかに湿り気があるけれど、そこは彼らの「控え室」。


「ふぅ…今日も任務完了だな」

「だが油断するな。帰り道の警備が残っている」

「姫の一言を思い出せ。『履いてきてよかった〜』…あの言葉を胸に、我らはまた立ち上がるのだ」


外はまだ、しとしとと雨が降っている。

だけどロッカーの中の小さな騎士たちは、今日も晴れやかな気持ちで、次なる出陣のときを静かに待っている。

雨の日、なんとなく選んだレインブーツ。

でもその中では、きっと誰かが小さな使命感を胸に戦っているのかもしれません。

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