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第16話 第二王女の微笑みと新たな艦船

 新造要塞と相対する。やはりでかいな。火星の四分の一くらい、いやもっと?

 その一閃は突然やってきた。


 ――なっ……!


 三番艦、左舷(さげん)損傷だと。思わぬ一閃だ。レーザーも鋭い。油断したのか、俺が?

 ふたたび、レーザーが飛んでくる。二番艦、右舷損傷だ。きょうは厄日なのか。

 俺は、回避行動を各艦に命令しつつ、レーザーの照準を定める。レグルス要塞と同じくバリアはあるはずだ。


 最初から全力だ。


 レーザーが新造要塞に届くと、バリアを貫通した。確かにレーザーは届いたようだ。誘導弾も炸裂(さくれつ)した。

 よし。要塞の耐久はみるみるうちに減っていくかに見えた。おかしい。防御力はあまりない様子だが、耐久値が異常だ。あの要塞、おかしいぞ。


 要塞から熱源あり。ピカッと光った。回避行動をかけるが、三番艦轟沈。

 轟沈だって? 俺は驚きのあまり絶句しそうになる。


 三番艦をいとも容易くやられた? どうして?

 俺は考えを巡らせていると、ある答えに辿り着いた。もしかしてイージスネオスがすでに俺のレベルに適合していないのか。


 ――イージスネオスは宇宙最強の宇宙船だぞ? 


 俺は慄(おのの)いた。まさか……。


 俺個人の回避性能はすでにLv.690。宇宙船の反応値を超えていたのか。

 そんなことはどうでもいい。残る一番艦と二番艦、四番艦、五番艦で体勢を立て直さないといけない。

 俺は、歯噛みする。


 *

 

 そのころ主星では、火星での知らせを受けて、多くの艦隊がスクランブル発進していた。

 状況は、交戦中の艦隊1とのこと。交戦中の艦隊がライデン艦隊であることは知られていなかった。

 3万5千隻にも及ぶ大艦隊が宇宙へ飛び立っていく。

 圧倒的な戦力で帝国要塞を破壊するつもりである。


 *


 回避行動を取りつつも、イージスネオスは苦しい戦いを強いられている。攻撃はたしかに届いている感触があるが、異様な要塞だってことはよくわかる。これが新造要塞か。

 ふたご座要塞、レグルス要塞、中央要塞セドナと比べものにならない存在感そして耐久値だ。


 自分がいかに傲(おご)ってたか。新造要塞、壊せるのか……。


 くじけそうになる自分を抑え、俺は艦隊に命令を出す。艦隊はふだん5隻編成だが、そのうちの1隻が落とされたのは、晴天の霹靂(へきれき)だった。

 またしても要塞がピカッと光った。来た。回避の予測はついていたとは言え、これも鋭い一閃。俺の乗る宇宙船が横揺れする。俺は赤い制帽を押さえてこらえる。くそっ。だめなのか。


 絶体絶命の言葉が脳裏を掠(かす)める。

 ――意志だけでは駄目なのか。

 ――力だけでは駄目なのか。


 正面から迫る要塞のレーザー。その一閃に消し飛ばされたかと思えた――。


 10本のレーザーが要塞の一閃を阻止した。


 何が起こっているんだ?


 増援? 

 ありえない。

 俺はぼっちプレイヤーだ。仲間なんていないはずだ。あたりを見回すと、つぎつぎに艦隊がワープアウトしてくる。


 数にして1万を超える大軍勢だ。


「――あなたのこれまでの献身、しかと受け取りました。助けに参りました、ライデン」


 通信回線がオープンになり、映像が届く。相手の姿に俺は言葉を失った。桜色を思わせる銀髪の王女ロゼリアだった。献身といえることなんてしてないのに。俺はただただロゼリアを応援したい気持ちだったんだ。

 深海色の瞳に俺は見つめられた。


 見回すと、軍勢はさらに膨(ふく)れ上がる。どれだけ増えるんだ?

 

「エーゼストリア王国軍。10万4000隻。ただいま参上いたしました」

 

 ありえない物量。戦争は物量だって言うけどさ。とんでもない物量だ。

 俺は味方なはずのエーゼストリア王国軍を少しだけ恐れる。ロゼリア王女がふたたび口を開いた。


「ライデン。あなたに相応しい剣を用意しました。受け取ってください」


 見れば、通常艦の50倍はあろうかという巨艦がそこに飛んでいた。


「古代戦艦イーオーリス。エーゼストリアに眠る特別作戦用主力艦です」


 雷(いかづち)のような五本の角が生えた有機的なフォルム。表宇宙の宇宙船と違い、異様な姿。俺は驚きのあまり、またしても何も言えなくなった。

 イーオーリスの指揮権を認証すると、イーオーリスは俺の剣となった。


「ライデン、要塞を壊してしまいましょう」


 ロゼリア王女が言う。俺は叫んだ。


「はい! 放てぇ!!」


 夥(おびただ)しいレーザーが、矢のように飛んでいき、光の雨が降る。

 あまりの威力に要塞が徐々に崩壊していく。要塞が陥落すると、ロゼリア王女が微笑んだ。


「ライデン、私たちはあなたと共にあります。あなたが心折れそうなとき、私が支えになります」


 俺は胸を打たれた。

 エーゼストリア王国軍はその場からワープアウトした。つぎつぎと艦隊が消え、俺だけが取り残された。




 そこへ同盟艦隊が到着した。3万5千隻は呆然としていた。なぜなら、俺だけがただひとりそこにいたからだ。


 ――へ?


「新造要塞ソロモンティウスを陥落させたのは、あなたなのか? ライデン」


 いや、俺っていうか、その……


 まさか、裏宇宙の知られざる国が俺を助けていたなんて口が裂けても言えないだろう。


「えっ、あ、その……」


 俺がワタワタしていると、同盟艦隊は、沈黙した。


 *


〈チャット:ライデン、やべぇ〉

〈チャット:ひとりで新造要塞ソロモンティウスを陥落させたのか……〉

〈チャット:それに見たことのない艦船だ。新型?〉

〈チャット:ライデン、見直したなぁ〉

〈チャット:あのおっさん、なんかやると思ってた!〉

〈チャット:祝杯をあげるぞー! みんなー!〉


 *


 チャットで口々に褒め称えられているとはつゆ知らず、俺は必死に言い訳を考えていた。

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