040 ゴミ拾いのクエストで大泣き
魔王を倒して少女に変化していた元男勇者のドタバタときどきラブコメディー
デイルード市にある市民の広場には、ハルカ、ライナ、ルファ、ルイザの4人が集まっていた。それぞれの手には、トング(ゴミはさみ)とバケツが握られている。
「全員が集まったシルバークローバーズの活動としては、ずいぶんと久しぶりの活動になっちゃったね。ところでハルカはもう大丈夫なのかい?」
「そうですの! シルバークローバーズを結成いたしましたのに、それからしばらくもしないうちに、ハルカたちが長い外泊をなさっているとか聞かされたときには、本当にビックリとしましたの!」
ルファとルイザの2人から出会ってすぐにそう言われた。なにせ四日の予定で帰るつもりだった家賃代と食事代その他諸々の回収費、もといイプノーム王国への親善は、思いもよらぬ事態を受けたせいで1ヶ月以上も空けてしまったからだ。
「ごめんごめん、なにしろこちらのほうも大変だったんだって。あちらでトラブルに出遭ったおかげで、思いもよらずにこんなに長い外泊になっちゃってさ」
俺は心配してくれていた二人にそう謝った。ともあれ、あの昏睡状態から抜け出して1ヶ月間は絶対安静にしていなければならなかった。
あの魔王の討伐の日から3ヶ月の間を病院のリハビリに努め、さらに2ヶ月間でようやく普通人並の体力を取り戻してきたかと思っていたのに、イプノーム王国では脳内ショートの事件があったことで、1ヶ月をほとんど寝たきりで過ごさなくてはならなくなった。
またしばらくの間の運動を堅く禁止されて、過度の運動もできないなどといったこともあって、体力は元の木阿弥というものだった。
この1ヶ月間はトラブルメーカーのジュリアンとルスタが、俺のいなくなった間になにかをやらかしてはいないかと、本当に気が気でならなかった。
しかしこれはジュリアンたちから託されていた親書をイプシースの森に渡してくるといった用事もあったおかげで、大人しくしていて杞憂に終わった。
ちなみに下手につつかれるのも困ると思ったので、3泊4日の予定を1ヶ月の長期休暇に延長して変更にしたのは、イプシースの森から連絡をした結果だ。
イプロンベスさんからは、あれからお見舞いがあった。
どうやら“神々から愛されし者”としての資格が認められたということだ。十二神のうちのシャイーナ様からのお告げを受けたとのことだった。
この場合に、神様がとくに気に入ったものに対してはこちらのお構いをせずに、それを上回る大量のデータをごっそりと送りつけてくることがあるのだそうだ。
俺の場合がまさしくこれで、そのことによって脳内のヒートアップを起こしたのだといった。
深層深海のところで意識を手放していた俺はあやうく廃人になりかけたが、イプロンベスさんの強烈になる追憶を擬似体験したことにより、ようやくに意識を取り戻してみせた。
もしあれでダメだったら、次はジリウスとエリザベスの新婚初夜編が用意されていたとのことだった。もうよしてくれ。
再会感動編が今でも尾を引いている俺にとって、そんな場面まで見てしまったら、、、いやよそう。今はこうして無事に戻ってこれただけで良しとしたいのだから。
「そういうことでしたら、しかたがありませんの。大変でしたのね」
「うん、聞いてるとハルカはイプロンヌちゃんの実家で大変な目にあっていたんだね」
「はあ、、、早くあのおかしな夢の出来事は忘れないと。このままだとこちらの神経がおかしくなりそうだ」
俺はそう言って、自分に言い聞かせた。
「変な夢って?」
ドキ!
「なんだビックリした! 急に近くへ現れるなよ!」
ルファはどうやら、知らないうちに俺の間近にまで近寄っていたらしい。
ああ、ルファの何気のない笑顔が、今はまぶしくみえてしまう!
このことでどうやら男子全般にドキドキしてしまうようになってしまったようだ。動悸を落ち着かせていた俺に、ルファは何かを気づいたようだった。
「ハルカ? しばらく会わなかった間に、なにか様子が変わった?」
「変わったって言われても、な、なんのことなのか、さっぱりとわからないぞ?」
俺はドキドキを隠してみせたが、ルファは俺のことをしばらく観察した後に、やがて納得したかのようにして、
「、、、、、、なるほど。蕾がようやくに開きかけた感じかな。、、、あ、いや何でもないよ」
あの8歳の女の子も、最初は無自覚だったからね、とルファはそう言って何かを呟いてみせた。
「意味がわからないし。そういった自分だけが分かったふうにいうのは、相手にとても失礼になるぞ」
「僕も話しているうちにそれとなく気づいたからしかたがないよ。それにもし言ったとしたら、僕はデリカシーのない男と思われそうだしね。だからいま言ったことは忘れてほしいんだ。本当にごめんなさい」
俺は拗ねるようにそう言ってみせたが、ルファはこれに低姿勢で謝っていた。こうなると俺も、それ以上は突っ込みようがなくなってしまった。
「雑談はここまでにするよ。今日のクエストはこの大噴水でのゴミの清掃。正午から13時まで、ここで落ちているゴミを拾い集めます」
「「「「りょーかい!」」」」
ここの大噴水には、ベンチがたくさん備えられており、お昼時には屋外で昼食を取る人たちが集まる。ゴミは午前と午後に業者が本格的に掃除してくれるので、本気を出してすることではなかったりする。
ではなぜこんなクエストがあるのかといえば、要はモラル向上のキャンペーンなのである。小さな子供がゴミを拾っていて、その前にゴミを投げ捨てる大人はいないのだ。
なのでこのクエストには年齢の制限があった。大人がもちろんしてもいいとは思うけど、子供用にこうした専用のクエストがあることは、それはそれで良いことだと思った。
「ではいまから四方に散らばって清掃開始です。ルファは北口のほうを、ルイザは東口、ライナは南口、私は西口のほうで頑張りましょう!」
「「「「ラジャ!」」」」
ちょうど正午の時間を知らせる鐘があちらこちらで鳴り始めた。近くの屋台などでお手軽な食べ物を購入した人たちが、あちこちのベンチに座り始めていた。
俺たちは1時間、この時間をゴミ拾いに専念したのだった。
☆
「あ、もうそろそろ時間かな」
大広場にある時計台には、あと10分で13時になることを針が指し示していた。実質的にはもう終わりの時間になる。
大人たちも昼食があらかたが終わったようで、この大噴水の近くにあるベンチには人も疎らになっていた。
「んん~」
一時間近くを中腰になって作業していたのだ。いくら子供とはいえども腰への負担が大きかったのか、背筋を伸ばして楽になりたかった。
ガサガサガサッ
俺の近くで草が出す音が聞こえてきた。
咄嗟的に気配察知をしてみると、近くにあった植樹された花壇の影の中に隠れた人影が3つ。
二つは小さいが、ひとつは太っているのか大きすぎて、茂みから体が半分ほど見えていた。
「しっ! 物音をだすな! 我々は今は任務中なのだ!」
「わかりました、将軍殿!」
「よ、よく、わかったんだな」
どうやら10歳くらいの男の子たちが任務ごっこの遊びをしていたらしい。公共の人の多い場所なので、物陰にかくれていた人がいたといっても、そう心配することはなかったのだ。
俺は警戒を解いて、任務ごっこの遊びをしている三人を無視し、時間が迫っていた集合場所に行こうと踵を返して歩みだした。
「敵は動き出した! では行くぞ!」
「僕たちの三連撃アタック受けてみろ!」
「で、でも、ちょっと可愛そうなんだな」
バタバタバタ
俺の後ろからは三人が駆け出してきた、子どもたちの走っている足音が近づいていたが、とくに気にする様子もなく、警戒もしなかった。
「それぇ!」
バサッ
ひとりは俺の後ろのほうからやってきて通り抜けていった。
少年はこちらを向いて、満足そうな顔を見せている。
おや? お尻のほうがなにやら寒くなったな?
「次は任せとけ!」
次には腰の何かが引き落とされて、股間がスースーとした感じになった。
流石に気になって自分の後ろを振り返ると、スカートはすでに高く巻き上げられていて、履いていたパンツが下に落とされていたことに気がついた。
「なっ、、、!」
あまりにも突拍子のない出来事に俺は硬直しかけると、太った子がやってきてこれから何かをしようとしているのを間近に見た。
「よし! ここまでは上出来!」
「あとはモミジを尻につけるだけだ!」
最後の男の子は片手をパーの形にして、今まさにこちらのお尻を打ったのだ。
パチーーーィィィッン!
「キャンッ!」
その音は大きな音を出したので、周囲の人たちが思わず振り向いたくらいだった。そこに見えたものはスカートが捲れてパンツを落としてお尻にモミジをつけた、間抜け顔をした女の子が立っている姿だった。
「「「大成功っ~~~!」」」
それから三人はハイタッチをして、こちらを見ずに一目散で走り出して姿を消していた。
周囲を見ると、まだこちらを凝視している大人たちが多数いた。
「うっ、、、ふぇぇぇえっ、、、」
あれなんだか、、、とても感情が高ぶって制御ができな、、、
もしかして涙がでてるの?
「うっ、、、ウワァァァーーーーーン!!!」
それからはもう大泣きをしていて、自分の感情をコントロールすることができなかった。
その大きな声を聞いて人だかりがおこり、これにますます泣き続けた少女が、集まってきた子供たちに手を引かれて退場したのは、更に後になってからのことだった。
朝昼夜と毎日14日間に渡っての掲載はいかがでしたでしょうか。ここまで読んでいただきましてありがとうこざいました。お話はまだまだ続いていく予定なのですが、このお話はここで一旦終わりとさせていただきます。
これは3年前に突然書きたくなった作品です。当時は「アルファポリス」様の第11回ファンタジー大賞に向けて書いたものでした。それからは徐々に話数を増やしながら「カクヨム」様のカクヨムコン等に投稿を続けていました。
当時は勢いだけで書いていましたので、直線的にあらすじを膨らませた話だけでわかればいいやと(ですのでお話自体は現在も当時と変わっていないオリジナルのままです)、それに満足をしていましたので、今を振り返ってみても粗さが目立つ作品でした。
作品をそのままにしておくのもと思ったので、その間にコツコツと新たに肉付けをし直して、やがて現在までのクオリティーとなりました。まだまだ未熟さや拙さが残っている出来映えですが、人様にお出しても辛うじて読んでいただけるものになったと思いまして、この度は「小説家になろう」様に投稿をいたしました。
物語ではハルカたちが巻き起こしていく、楽しくもほほえましい日常のドタバタが、日々の皆さんの笑顔を引き出せるキッカケとなることができたらとそう願っています。作者はこの夏に思わぬ入院生活を送りましたので、これがキッカケでまた書いてみようといった次第です。
それではまた、紙面上でお会いできる日を楽しみにしています。




