大魔王様結婚式を挙げる
召還される前ならありえない出来事。
3人同時に結婚式を挙げるだなんて暴挙をしていたら恐らく姉に殺されていただろうな。それにしても3人かと思うと顔が崩れてしまうんだけど。神様をブチのめしてもこの幸せは逃さない!
爆発しろ! とか云われても痛くもかゆくも無い。実際はちょっと怖いです、祝福の声がルル達に送られていると同時に美人を一気に3人も嫁にするとなれば独身男性からは批難する声が上がっているのだとか聞かされると暗殺でもされないかちょっと不安です。どこかの大統領みたいになりませんように……
でもな、嫉妬する前にどれ程この状況に対して俺が努力しているかは理解して欲しい。
まあ、そんな事を考えている場合じゃないな、今は一歩踏み出さないといけない。花嫁達が待っているからな。
魔界には教会が無かった。当たり前の話なのだが大魔王は神ではないし、歴代何名もいる。魔神となって崇められる事も無く、全員が其の手の事を嫌ったのだ。よって宗教として成立はしていないのは先に述べていた通りの事で、今回は臣民にむかって宣誓する事になっている。
流石に臣民に誓うとは云えど儀式を野外で行う訳にもいかないので王宮の広間を利用する事になった。
そしてここに緊張している俺がいると云う訳だ。
ヴィヴィの家族であるアメラ王族の出席の知らせをもって大至急用意された式典でもある。大胆にも国王となったフランク一世が母親と一緒に訪れるというのだ。
昨日顔を合わせたが中々に素晴らしい男だった。いやそんな事はいいや男の感想を述べても仕方ない、ドアが開かれてしまったからには花嫁達の下へと向かわねばならないんだ。
バージンロードなどの習慣が他の宗教にも無い事を確認して大魔王の提案として結婚式もプロデュースしてしまった。あの時なんでこんな事を提案したのだろうか……きっとルルやフクそれにヴィヴィが俺の世界の知識を聞きながら喜んでいたから調子にのったのが原因だろうな。そう、今にも脂汗が吹き出そうなこの状況は正に自業自得っだったのだよ。
簡単に教会で神に誓って結婚報告をしたら後は披露宴をすれば大事になるこの世界で結婚式なんてすれば大変な事態になれと気付けよ、そうあの時の俺に言いたい。
ヴァージンロードの左右には近衛兵が最前列にいて其の後ろは招待客の貴族や商人、あ、親方もいるな。大魔王児院の子供達も呼んだから台の上にのって懸命に手を振ってくれている。軽く笑顔を送っておけばいいだろう。
大魔王とは云えど結婚式では只の添え物になっていればいい筈と思い込んでいた俺、死ね!
確かに主役は3人なんだけど、大魔王ともなれば別だったらしい。予想が甘いんだよな。
正面にはルル、フク、ヴィヴィが純白のウェディングドレスを着て待っていた。純白の衣装も俺の話を元に用意したので問題は無いのだけど、ちょっと3人のオーラが眩し過ぎて直視できないんですけど。
ルルのビスチェにマーメイドライン、太ももの辺りから少し意匠が凝っていてグラマラスな体型をより際立たせている。まさに着こなしていると云っていいだろう。魔王辞めて新しい神様やっていいんじゃね?
フクはワンショルダーのマーメイドライン、ちょっと大胆なスリットと細やかな刺繍が特徴で普段の執事服より変身後の姿のイメージが近い。悩殺で殺すつもりですかっ!
ヴィヴィはオフショルダーにAライン、タッキングの入ったふわっとしたイメージで可愛らしい姿になっている。男装も似合うがこの手の服装も似合うんだから今度是非プレゼントしようそうしよう!
なんだろうこの空間は、一瞬歩くのを戸惑ってしまったんですが、色々と絵にはしたけどまさかの再現率。職人さんの意地と根性だよ。うん、これならさっきまでの緊張と引き換えでいいな、偉いぞ俺よ。
号泣してる人がいるけど、あれは確かヴィヴィの母親か、王様は俺が召還されたときに吹き飛んだんだよな。しかし結婚すると知って驚いていたけど、気にする理由が額の傷だったとは、うん、そんなに気にして無かったんだけど実は消えてて吃驚してたな。実際消えた時には俺も吃驚したしヴィヴィも驚愕してたからな、まさか一晩過ごしてたら傷が消えましたなんて云えないので誤魔化しましたけどね。結婚を喜んでくれてたし、良かったと云う事にして置いて欲しい。
「大魔王の名に掛けて国民に誓う、我は愛する3人の女性を妻とし幸福にする事を!」
「「「私達は生涯を大魔王様とこの命ある限り共に歩み、暮らし、幸せを分かち合い、悲しみを防ぎ、愛し続ける事を誓います」」」
歓声が沸き起こり様々な祝いの言葉が贈られている。
突然召還された異世界で成り行き任せに勇者ではなく大魔王となる事を選んだ結果3人の花嫁を手に入れることになった比呂斗。ユイキス教との戦いにも勝利し国を豊かにしてくれる大魔王に国民たちは惜しみない祝福を与えてくれた。こんな生活も悪く無い、大魔王になって良かったと比呂斗は3人を抱きかかえながら笑顔で手を振り続けていた。
お読み頂いて有り難う御座いました。




