大魔王様への誓いの方法
「すまない、魔力の抑え方がわからないのだ」
「そうでしたか……
では、ま、誠に僭越ではございますが私が…
宜しければ、魔力を抑えるお手伝いをさせて頂きますが」
どうでしょうかと、見上げてくる。
ここはテンプレで押し通す。
どうやら俺は強いらしいし、何とかなるだろ。
「うむ、よきに計らえ」
「ハッ、で、では…私も初めてですので」
ちょっと心を擽られるセリフなんですが!
男は黙って受け入れるしかないだろう。
だって、この美少女からの科白だぞっ。
ワクワクじゃないか!
でもな、肝心なのはポーカーフェイスだぞ、頑張れ俺!
「チュゥゥゥゥゥゥぅ」
「うぅ?」
って俺の首に吸い付いてるよ、どういうこと。ちょっとチクってしたんですけど?
「ハァハァ…アア、もう駄目です」
ムチュって今度は唇に来たぁぁぁ、夢か?夢なら醒めるな!
例え妄想だったとしても醒めないでくれと、比呂斗は願った。美少女からのキスを喜ばない男は居ない、そんな奴は男じゃない。心の叫びがそう訴えていた。
「フニュゥ」
ブハッ
え?
鼻血を噴出した?
「あ、余りの大魔王様の魔力でちょっと理性が飛びました。
この上は我が魂を差し出します故にどんな処刑でも構いません
我が同胞をお願いいたします。」
「フッ、何を言っているんだルシールよ!
我はよきに計らえと言ったのだぞ、前言を覆す程我は矮小ではない。
それよりも、今ので魔力は抑えられたのだろうな」
「ハッ我らの一族はヴァンパイアの血を引く家系にて、
一時的に大魔王様からお力を私に頂いた状態でございます。
なんとかこの量の…魔力なら制御できます」
「そうか、大儀であった。
しかし、本当に大丈夫であろうな。
ものすごく顔が赤い、汗もでておる」
「大丈夫でございます、こ、これは副作用の様な物。
ご心配には及びません」
「ふむ、では話を聞きたいのだが、どこか適当な部屋は無いか」
「この謁見の間ではいけませんか」
「うむ、どうにもこの魔方陣が落ち着かぬ、
広間より部屋を用意せよ
それと喉が渇いた故、飲み物も頼む」
「ハハ、少々お待ちを」
フウ…いきなり噛みつかれてキスまでされてしまった。
本当にこれは俺の正体がばれると不味いんじゃなかろうか…
なんとか生き残る方法を見つけねばなるまい。
額に黒玉まで埋まっているにも関わらず、飽くまで自分は一般人だと思いたい比呂斗の悪あがきであった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「ハァハァ…なんて強力な魔力…芳醇なアムリタをも超える芳香、
理性を狂わすあの血の味、そして柔らかい唇…
吸血衝動がまさかここまで高まるとは、普通の魔力ではない。
しかも今の私の魔力はなんだ…
これでは南の銀狼の娘より遥かに強いではないか…
あの方が我らと共にいて下さる限り負けはない」
だ…だがしかし、
この体の疼きは不味い。
抱きつきそうにもなった。
私ったら…
「キャッ(ドン)」
普段の感覚で柱を叩いたら亀裂がはいってしまった。
照れ隠しで柱を破壊するなど……
「ウッ…しまった、またフクに怒られる…
だが…今のはワザとではないからな…
運がわるかった、過失というものだ、
情状酌量してくれるだろうか」
「はぁ……」
ルシールはため息を吐いて、火照った体を冷ますために水を浴びに向かった。
会議室、作戦司令室…
そうだ談話室はどうだろうか?
どこかにお部屋を用意しなければ。
鼻血をだして退出したが彼女も魔王。直に思考を切り替えて、己のするべき事を思い出していた。歩きながら手配の内容を考えて即座に行動に移った。
倒れている侍女を起こしたルシールは諸々の手配を頼み、急いで風呂に飛び込んだ。最優先事項は火照った体と頭を冷やす事だったのだが、彼女の体質としては致し方無かったのである。




