勇者様は大魔王様
その奇跡が起こったのは偶然なのか必然なのか、それは神にも悪魔にも解らない。
何故なら、その神も、魔王自身さえもが奇跡の要因の一つだったからだ。
「ちょっと、何だよこれ、いたたたた、引っ張るなよ」
双方から引っ張られる感覚、このままだと体が引き裂かれる。
右を見れば偉そうなオッサンと司祭服と祭壇。
左を見れば可愛い姿の女の子、後ろにあった髑髏や山羊の角は目に入らなかった。
オッサンのほうにこの状況で選ぶだなんて男としてはありえない。
だあぁぁぁぁぁ!
全身に力を入れると片方の魔方陣が爆発した。
途端に片側の景色が薄れて消えていった。なにやら騒いでいたがオッサンなんて知った事ではないよな。
「はじめまして(ぺこ)我が大魔王よ!」
こうして俺は勇者では無く大魔王として召還された。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
一方爆発した魔方陣の存在したアメラ連邦王国の広間。
「魔王めが、神に祈りを捧げた、勇者の召還の儀に魔物を送り込み邪魔をするとは」
酷い言い掛りである、しかし目の前の事態に対して、大司祭としてはそう告げねばならない理由があった。
「大司祭様、それどころでは、王が…亡くなられました」
「ぬぅ、このままでは教会の沽券にかかわりますね。
全ての王族と貴族に魔王による攻撃で王が死亡した事、そして第一王子であるフランク公を教会は王と認め、戴冠の儀と葬儀を取り仕切ると、そう伝えるのです。
そして高らかに魔物殲滅の聖戦発動を民に知らしめるのです」
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
俺が大魔王ってなんの冗談なのか教えて欲しいのだが、目の前の女の子は膝をついて俺の言葉をまっているようだ。なんだか感激してたしちょっと話にのってみよう。
「フッ、そなたが我を召還せし者か?」
「ハ! 召還の儀を取り仕切りましたのは私で誤差います」
「で、そなたは何者だ」
「ルシールで御座います、大魔王様」
「我を大魔王と呼ぶ存在か……
ならばお前は魔王というところか」
「はい、人間共と一番近いスイペンの地を治めえております」
「ふむ、で、何用か」
「我らはこのままでは他の魔王軍、そして人間の王国からの進行で滅んでしまいます。
叶いますなら、大魔王様のお力をもって他の魔王軍を含めた魔族を統一し、人間との戦争に勝利をもたらして頂けませぬでしょうか…
我が国民たちの命が助かりますなら、贄として我が心臓をここで抉り出して差し出しましょう、魂が必要とあれば我ら残りたる王族全ての魂を差し出します。
何卒、何卒お願いいたします。」
なんだと、そこまで酷い状況って、というか何故こんなことになってるか早く原因をみつけないと。
それにそんなもの差し出されても出来ない。
いや正しくは、出来る訳が無いだろうが。
しかし、上手く話しをあわせなくてはいけない
「ふむ、しかしなルシール我は大魔王といえど、そこまで力がある訳ではないぞ」
「お戯れを…その異彩なるお召し物、そして黒髪黒眼さらには額に埋まった黒玉、まさに初代大魔王サナン様と同じ。
正直申しまして魔力を少し弱めて頂きませんと城内では失神者がでておりましょう。」
え、額に宝石って何だよこれ、くそ外れないぞおいおい、埋まってるのか。
こうして俺、大神比呂斗は大魔王になった




