9.キラキラ、カラカラ
「わあああああ!」
玲奈はいくつかの棚をのぞきこむ。
どれも石だ。透明なのもあるし、色がついているのもある。
それが全部、キラキラの競争をしてるみたいに輝いていた。
「すごいすごい! まるで夢みたい! これ、宝石よね?」
「宝石? いや、どっちかというと貴石より半貴石の方が多くて」
「ええっ、奇跡?」
「……パワーストーン、って言えば分かるか?」
「聞いたことあるよ!」
魔法使いのパワーストーン屋さんっていうのは、とっても効果がありそうで、とっても似合っている気がした。
棚によっては石だけで置かれているものもあるし、ネックレスやブレスレットになっているもの、ストラップになっているものもある。
全部きれいで高そうだけど、値札のゼロがびっくりするほど多いのは少しだけ。中にはワンコインの物だってあったから、玲奈のお小づかいでも買えそう。
あれこれ見ていたら、奥からヒスイがおしゃれなトレーを持って戻ってきた。カラン、という澄んだ氷の音が聞こえて、玲奈はノドがかわいていたのを思い出した。そういえばさっきクッションの魔法使いに追いかけられて長く走ったんだった。
「こっち来いよ」
「うん」
お店の端っこにはアンティークっぽい机とイスがあった。玲奈がそこに座ると、ヒスイがティーポットに入った飲み物をコップにそそいでくれる。
まるで外国みたいなお店の、外国みたいなコップで出してもらえるものだから、もしかしたらカタカナの名前のおしゃれな飲みものかもしれないと思った玲奈だったけど。
「いただきまーす!」
ごくごくと音を立てて飲んでみたら、中身は玲奈の家でも作っているのとおなじ麦茶だった。
だけどとってもおいしくて、あっという間にコップは空になってしまった。
「ぷはーっ! すごーい! つめたーい!」
玲奈が言うと、ヒスイはまたあのかわいい感じで笑って、コップに麦茶をそそいでくれた。
「ありがとう! さっきたくさん走ったから体にしみるー! ううう、おいしーい!」
「お前、なんでもかんでも感動するのな」
「だって本当の気持ちだもん。ね、キューイ?」
「キュ!」
机の上に座ってたキューイが玲奈の声に合わせてガッツポーズする。
「意味、分かってんのか?」
ヒスイがキューイの頭をちょんってつついた。とっても仲良しに見える一人と一匹は見ていてほっこりする。
「そうだ。ヒスイくん。あと、キューイも。さっきは助けてくれてありがとう」
「キュー!」
「別にいいよ。あれが役目だから」
「役目? って、どんな? なんでヒスイくんにそんな役目があるの? それに、さっきのあれはなに?」
玲奈がいくつも質問すると、ヒスイはキューイの頭をなでながら少し迷ってた。
「まあ、話すっていったしな」
そうしてヒスイがきちんと背すじを伸ばして座りなおしたから、まじめなお話だ、と思って玲奈も同じようにする。
なでられるのを止められて、キューイが不満そうに「キュゥゥゥ~」って鳴いた。