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玲奈と、境ノ森町の魔法使い ―ワクワクはドラゴンと不思議を添えて―  作者: 杵島 灯
境ノ森町にやってきた!

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10/42

10.境の森の番人、ヒスイ

「ひとつずつ説明していく。さっきも言ったけど、オレは魔法使(まほうつか)いなんだ」


 ヒスイはホウキに乗って空を飛ぶし、ふしぎな呪文(じゅもん)を使う。それはすごく魔法使(まほうつか)いっぽいって玲奈(れな)は思う。


「カッコいいね!」

「別に、カッコいいってわけじゃない。オレの一族(いちぞく)には魔力(まりょく)があるから。それだけだ」

「でも魔法が使えるんでしょ? カッコいいよ! さっきの変なクッションみたいなのも魔法使いって言ってたけど、ヒスイくんの方がずっとカッコいい」


 玲奈が言うと、ヒスイはちょっとだけ笑った。


「クッションか。あいつは界移動(カイイドウ)で力を失ったからあの見た目になっただけで、本当の姿はちがうんだ」

「あ、それ、クッションも言ってたよ。今はとても小さくなってしまったけど、マイナスパワーを集めたら元に戻るって」

「だろうな。世界の移動にはすごく魔力を使うから、あれじゃ大したことはできなかったはずだ」

「うん。お母さんと子どもの足にはりついて、転ばせてたくらい」

「こっちの世界に来てすぐだと、そういう小さなイヤガラセくらいしかできない。でも力がたまれば、もっと大きなことができるようになるんだ」

「大きなことって、どんな?」

「たとえば、火で家を燃やしたり、風でいろんなものを吹き飛ばしたり。人にまぼろしを見せたり、心をあやつったり」

「えっ、こわい」


 玲奈の()がぞくっとする。


「そっか、そうやってこの世界の支配者(しはいしゃ)になるつもりなんだね」

魔力(まりょく)のあるヤツらは、魔力のない人間をバカにしてるからな。この世界の人間は基本的に魔力なんて持ってないし、カンタンに支配できると思ってやって来るんだ」

「それを防ぐのがヒスイくんなんだね!」

「オレも魔法使いだし。何より、境の森の番人だからな」

「すごいすごい、すごーい!」


 心の底から感激(かんげき)して拍手をおくったけど、玲奈はちょっと気になる。


「ねえ。ヒスイくんはちがうよね?」

「なにが?」

「魔法使いだけど、魔力のない人間をバカにしてないよね?」

「もしもバカにしてたら、境の森の番人じゃなくて世界の支配者やってるよ」

「そっか」


 それにヒスイは一匹狼(いっぴきおおかみ)だから、世界を支配するなんてメンドウだ、って思ってるのかもしれない。


「どうして(わら)ってるんだ?」

「なんでもないよ。ねえ、境の森の番人ってなに?」

質問(しつもん)多いな」

「だって分かんないことだらけだもん。森っていうのは、ヒスイくんの家の後ろにある大きな森のことだよね?」

「そう。あの森は別の世界との“(さかい)”なんだ」

「別の世界との境、かあ。とってもワクワクする言葉だね、キューイ?」

「キュキュ、キュキューイ!」

「やっぱりそう思うよね!」

「キュ!」


 玲奈とキューイがまた指と手で握手(あくしゅ)もどきをしていると、ヒスイがあきれたみたいに言う。


「なんで(つう)じてるんだ、お前ら」

「だって私とキューイはもう仲よしだもん。ねー!」

「キュー!」

「あははは! かーわいい!」

「……なあ、麦茶(むぎちゃ)まだいるか?」

「うん、もらう!」


 麦茶をコップにそそぐと、ヒスイは立ち上がって、


「用を思い出した」


 そう言い残して、奥へ行ってしまった。

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