10.キューイとふたり
飛行機にも乗ったことない玲奈は空を飛ぶなんてはじめてだ。こわくて悲鳴をあげそうになったけど、声を出す前に地面に落ちた。
飛んでる時の速さのままだったらきっと大ケガをしていたと思うけど、運がよかったのは最後にすごく優しく地面におりられたこと。まるでふかふかのお布団に乗せてもらったみたいだった。
「体は無事だし、気持ち悪くなる前に地面に着いたし、よかったなあ。……でも、ここはどこだろう」
玲奈が飛ばされたのは森だったはずなのに、すわっている場所はとても広い草原だ。とっても濃い緑の香りがする。
しかも暗い空には丸い月が二つもあった。青い月と、緑の月。こんな風景は見たことがない。
「境の森は別の世界と通じてるってヒスイくんが言ってたっけ。どうしよう、ここってきっと、別の世界だ……」
「キュー!」
「えっ? あ、キューイ?」
玲奈の背中にしがみついてたキューイが、パタパタ飛んできて、目の前におりる。
家の庭でキューイは玲奈の近くにいたから、いっしょに来てくれたのかも。
「よかった。知らない世界でひとりぼっちだったらすごく不安だったけど、キューイがいっしょなら安心だよ」
「キュ!」
キューイは「まかせろ!」って言うみたいに胸をどんってたたいた。
「まわりはずっと野原だね」
「キュー」
「どこまで続いてるのかな」
「キュキュ、キュキュー」
「ん?」
キューイが玲奈のチノパンのすそをいっしょうけんめい引っ張っている。
「どうしたの?」
かがんでみたら、キューイはもじもじしたあとに、
「キューイ……キュキュキュ」
って鳴きながらぺこりとおじぎをした。
「ん? 謝ってるの?」
「キュー……」
「あ。もしかして、さっきのこと?」
ヒスイに「きらい」って言われたあと、玲奈が「私もきらい、って言ったほうがうれしい?」って言ったら、キューイが玲奈を急にポカポカたたき始めたんだ。
「……キュキュ、キュー……」
「うん、もういいよ。そんなに痛くなかったし」
「キュー」
「それに考えてみたら、ヒスイくんが私をきらいだからって、私まできらいになる必要はないもんね」
「キュー! キュキュキュ、キュー!」
どうしてだかキューイは、いっしょうけんめい首を横にふってる。
「……ちがう、って言ってるの?」
「キュ!」
「なにがちがうの?」
「キュキューキュ、キュキューイ!」
「うーん。わかんないな―。とにかく、帰る方法をさがさなきゃだし、歩きながら話そうか」
「キュ!」
星座盤やセレナイトのペンダントは持っていたし、前にヒスイがくれた翡翠入りのきんちゃくと、ライトだってポケットにある。
ここがどんな世界なのか分からないし、どうして飛ばされたのかも分からない。どうやって帰ったらいいのかも分からないけど、いつもの道具はあるし、キューイもいる。たくさんのことが玲奈に勇気をくれた。
まずは持っていたペンダントを首にかけて、玲奈は立ち上がった。




