8.話っていうのは
玲奈がライトを消しても、セレナイトはキラキラ輝いている。
キレイだなって思いながらながめていたら、「あのさ」って小さな声がした。
「オレの話。聞いてくれるか」
ヒスイの話。それはこの前の日曜日に言おうとしていたことかもしれない。
もしも「お手伝いはもういらない」って内容だったらどうしよう、って玲奈はずっと思ってた。
でも、今日の帰り道に晶から「ヒスイと仲良くして」って言ってもらったばかりだ。だから玲奈は勇気を出して言う。
「うん。聞かせて」
「ありがとう」
ヒスイは少し玲奈の方に近づいた。さっきよりも表情が良く見える。とってもマジメな表情。
「オレは二年前に境の森の番人になったんだ。それからずっと境ノ森町でくらしてる」
「うん」
「前にも言ったけど、界移動してきた魔法使いをもとの世界へ送りかえすのが番人の役目だ。だからオレは役目をはたしてきた。だってオレは境の森の番人だからな」
エルダも言ってたように、番人っていうのは本当にすごいことなのかもしれない。残念ながら玲奈にはそのすごさがよく分からないけど。
「オレががんばる理由なんて、番人だからっていうほかには何もない。そもそも他のことはどうでもよかったんだ。学校だって身代わりの石を置いておけばバレないし、授業内容の記録もできるから後で見返せる。ヘタに誰かと関わるとメンドウだから、積極的に話したりもしなかった。……それでいいって、ずっと思ってたんだ」
「思ってた? ってことは、今は?」
「……今は、ちょっと変わった。……この土地や、住んでる人たちのことを知りたいし、みんなが安心して暮らせるように番人としてのウデをもっと上げたい」
「うん、そっちのほうがゼッタイにいいよ!」
玲奈が言ったら、ヒスイはキャップのツバをぐっと高くあげた。上に乗ってたキューイがバランスをくずして、「キュー!」って鳴きながらヒスイの頭をペシッてたたいた。
だけどヒスイは不満そうなキューイにも気がつかないみたい。セレナイトよりずっと輝いてる目で玲奈を見るから、玲奈の胸がまたドキドキ大きな音をたてる。
「オレの気持ちが変わったのは、お前と会ったからなんだ」
「私と?」
「そう。この町に来たお前と話をしたから。そのうちオレの考えも少しずつかわっていった」
「どうして?」
「そうだな。たぶん……いや、きっと。オレは……」
大きく息をすって、はいて、ヒスイはとびきりの笑顔で言う。
「オレは、お前が、『きらい』なんだ」




