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玲奈と、境ノ森町の魔法使い ―ワクワクはドラゴンと不思議を添えて―  作者: 杵島 灯
雨がふるよ

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19/42

6.玲奈は信じない

 晴斗(はると)やお父さんから『森のパンやさん』の悪い話を聞いた次の日、金曜日。

 玲奈(れな)は学校で一花(いちか)とあおいに『森のパンやさん』の話をしてみた。

 そうしたら二人も「森のぱんやさんは(のろ)いのパンやだよ」って言う。きっと「ひどいね!」って怒ってくれると思ったから、玲奈はがっかりした。


東野公園(ひがしのこうえん)ではそんな話をしなかったよね?」

「あのときは呪いのパンやじゃなかったんだよ。でも今はちがうからなあ」

「えっと……雨が必ず、ふるから……しょうがいないの……」

「でも。あれから何日かしかたってないのに、いきなり『呪い』って言われるなんてヘンだと思わない?」


 一花とあおいは二人で顔を見あわせる。


「ヘンかな?」

「あの……でも、みんな、そう言ってるし……」


 一花もあおいも全然ヘンだって思ってないみたい。


 東野公園で二人が「友だちになった記念に」ってクッキーを買ってくれたのはうれしかったし、三人でいっしょに食べたクッキーはおいしかった。

 その思い出もなかったことにされたみたいで、玲奈は悲しいし何よりとってもくやしい。


 だけど一花とあおいに話してみてよかった。

 玲奈が東野公園に行った日、あの日曜日までは森のパンやさんにヘンはウワサはなかったことが分かったからだ。


 森のパンやさんは呪いのパンやじゃないって、玲奈は信じてる。

 だったら、あの日曜日がきっとカギ。

 そして日曜日といえば、玲奈が黒い()りヅルを見た日でもある。

 ヒスイがずっと学校に来ないこともふくめて、全部のできごとはあの折りヅルが関係しているような気がした。


 ホウキを呼び出す呪文(じゅもん)をつかいたいけど、今はダメだ。

 だってこの呪文は、玲奈がヒスイのお手伝いをするために教えてもらったもの。

 がんばってるヒスイのジャマをするために教えてもらったわけじゃない。


(私が悪い魔法使(まほうつか)いの手がかりをつかんだら、そのときにまた呪文をとなえよう!)


 そわそわしながら授業を終えて、家に帰った玲奈はすぐにまた外へ出る。外はとってもいい天気だけど、右手にはちゃんとカサを持っている。

 行き先は、森のパンやさんのところだから。


 森のパンやさんは、車でいろんな場所へ行って商品を売る移動販売(いどうはんばい)のお店だ。

 移動販売は「何曜日の何時ごろどこへ行くか」っていうのが決まっている。

 今日は金曜日だから、金曜日のルートを調べてみたかったけど、玲奈はまだスマートフォンを持っていない。

 パソコンはテレワークのお母さんが使っているし、この時間はお仕事中だから()りるわけにもいかないんだ。


 それで玲奈は考えて、晴斗の友だちの家があるほうへ向かってみる。

 晴斗はきのう、そこの空き地に森のパンやさんがいたって言った。続けて同じ場所にいる可能性は低い気がしたけど、もしかしたら、って思った。


 だけど残念(ざんねん)ながら、空き地に森のパンやさんの車はなかった。

 こまった玲奈が次にどこへ行ったらいいか考えていたとき、近くを歩く女の人たちの声がぐうぜん聞こえる。


「呪いのパンやがいないと、雨がふらなくていいわね」

「そうね、でも今日は向こうのマンションの方へ行く日だから、あっちの人たちはかわいそうねぇ」


 少し先には大きなマンションがある。きっと、あそこのことだ。

 玲奈がそっちへ駆けて行くと、マンション前の駐車場(ちゅうしゃじょう)のすみっこに、森のパンやさんの車が見えた。

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