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豆州から飛び立つ  作者: 練習中
1500年〜
50/58

評価・ブックマーク・リアクションありがとうございます。



◾︎武蔵国江戸城


「狩野狩野介。今より江戸副城代の任を一時凍結し、代わりに上総国を攻める鈴木兵庫助・伊東九郎三郎への援軍の任を申し付ける」


「承知仕りました」


 あれこれ指図を出して狩野介を送り出す。


 上総国は内房では上総武田家、外房では上総土岐家や上総酒井家が割拠し、戦国時代さながらの様相を呈している。安房国も同じようなものだったが……


 それ故に上総国も取れることだろう。

 

 上総国と安房国は、関東の戦国時代の始まりとも呼ばれる享徳の乱開始時、上杉家の影響力が強かった。


 上杉禅秀の乱(1416年)以前は他家を挟みながら上総守護を犬懸上杉家が、安房守護を山内上杉家が務めていた。

 

 乱の鎮圧後、時の鎌倉公方足利持氏による残党狩りを上総国の親犬懸上杉家派は受けたことで犬懸上杉家は消え失せたわけだが、なんやかんやで扇谷上杉家陣代上杉定頼(嫡流の従兄弟)が安房・上総守護になるなど、犬懸上杉家が消えても房総半島では上杉家の影響力が強くなっていた。


 そんな上杉家の房総半島ひいては関東における影響力を除こうとして起こったのが先代古河公方足利成氏による享徳の乱。

 

 成氏本人は北関東での戦中に幕府の指示で出兵した今川範忠(氏親の祖父)に鎌倉を占拠されたため、古河に御所を移さざるを得なくなったが、上総国に武田信長、安房国に里見義実を送り込むことで房総半島から上杉家の勢力を一掃した。


 享徳の乱以降続いた利根川を境にした両上杉と古河公方の対立。

 それは、足利成氏・武田信長・里見義実、三者の思惑が一致したからこそ成し得たことだろう。

 宗家の武蔵千葉家を追い出し、御家を乗っ取った下総千葉家も似たようなものか。


 成氏はまさに上総武田家と安房里見家の生みの親とも言える。

 

 そんなこともあり、現在房総半島に根を張る武士の上役は古河公方だ。


 だが、その成氏も3年前に亡くなった。

 古河公方と両家の繋がりは先代より確実に緩んでいる。

 

 ここで両上杉家のことを思い出してみよう。

 享徳の乱以来長年に渡り連携して古河公方と戦ってきた両家だが、古河公方との和睦で共通の敵が消えた途端、上杉家同士で戦い始めた。


 古河公方という共通の敵が存在した時には両上杉間の政治で解決していた諸問題を、共通の敵が不在となり政治に頼らずとも武力で容易に解決できるようになったことが要因として挙げられる。


 そして、ほんの十数年前までは古河公方傘下として両上杉方と戦ってきた彼等には、今や共通の敵がいない。

 

 古河公方と房総半島の関係が緩んだ今、争わずとも時が経てば彼等の縁も薄くなる。

 次第に(いが)み合い、そして奪い合い。


 仕事が一息ついたら東京湾で舟遊びでもしようか。



〇 〇 〇



◾︎武蔵国江戸城


 その報せが届いたのは肌寒くなってきた頃であった。


「如何した小太郎」


 無言で部屋に入ってきた小太郎に声をかけると、これまた無言で文を差し出してきた。


 如何様な大事が出来したのかと恐る恐る中身を見ると、あまりの内容の重大さに文を落としそうになった。


 空気をゆっくり吸って吐いて。どうにか心を落ち着かせる。

 落ち着いたところで文を床に置き、西に向き直る。そして黙祷。


「帝がお隠れになられたか……」


 思わず誰にも聞こえないような小声で呟く。


 60近い御年齢だったこともあり、この時代では大往生であろう。

 ただ、明応の政変で自らが任命した征夷大将軍がすげ替えられた時には憤慨して譲位を望むなど、足利や幕府には並々ならぬ思いを抱いていたはずだ。


 十数年程度の忠勤しかない俺では帝の力になれたかどうか……


 再度文を手に取ると、最初に目を通した時には気付かなかったが、書状には続きがあった。


 読み進めていくと、舅近衛政家の兄で元聖護院門跡の道興が帝の崩御に関連して近衛家の遣いとして小田原に向かうようだと書かれてある。


 これは小田原に帰らねばならないな。


「爺様にこれを。俺は()()の様子を窺いつつ、江戸周辺の縄張りを進めてから戻る。道興殿の方が早いようであれば御相手を頼むと伝えてくれ」


「承知しました」


 小太郎が部屋を下がるのと入れ替わるように部屋に入ってきた小姓に、富永四郎左衛門を呼び出すよう指示する。


 早急に江戸城の縄張りと下総への対抗策を詰めねばなるまい。


 上総国は先月ついに陥落した。

 水軍あり、焙烙玉あり、大筒ありの三重苦ならぬ三重幸で、とてもスピーディーな攻略だった。


 故に下総国への態度や防備を考えておかねばならない。

 まあ、安房国に守護代として伊東九郎三郎を置き、上総国外房に対下総外房担当として狩野狩野介、上総国内房にこちらも対下総内房担当として鈴木兵庫助を置き、上総国の内政は祖父の犬懸上杉家家臣を送った。


 捕らえた者たちはいつも通り教育行きだ。


 上総武田家は血は遠いと言えど、甲斐武田家と同様、犬懸上杉家の縁者であり、上杉禅秀の正室の甥が上総武田家の初代武田信長で、現在は祖父治部少輔の母方の再従兄弟の子が当主を務めている。

 

 俺にとって貴重な縁者だからな。大事にしないと。


 縁者と言えば、祖父の父方の従兄弟の家系を鎌倉に持ってこれないかな。

 


相変わらず登場人物のキャラ付けが全くできません。努力の方向性が分からないんです…


少し忙しいため、投稿ペースが週1回になるかもしれません。

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