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豆州から飛び立つ  作者: 練習中
1500年〜
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49/58

対策

評価・リアクション・感想・ブックマーク等ありがとうございます。



◾︎武蔵国江戸城


「左から、里見民部大輔義通・同じく左衛門佐実堯にございます」


 近習の説明を受け、御簾越しに外を見る。

 一応、貴き身分なのでこういう時(敵対者)は御簾越しに限る。


 目線を向ければ縄で縛られ庭に罪人の如く座らされている2人がいた。

 パッと見で義通が20歳前後、実堯が15歳くらいか。


 あちらから俺の顔は見えていないだろうが、2人とも俺を必死に睨んでいる。

 

「何だその態度はッ!」


 反抗的な様子を隠さない両人を側に立つ馬廻が押さえ付ける。

 彼らは突然領地に侵攻された側の人間だ。それを考えれば睨むのも仕方あるまい。


「……」


 俺は御簾の奥で胡座をかき、脇息に上半身を預けるだらしない姿勢で黙ってその様子を見ていた。


 日ノ本を統一するためには、この光景をあと何十回何百回と繰り返さなければならないのだろう。


「この者共は如何されますか?」


「さて、今後のためにも如何対応したものかと思うておる」


 御簾の外側左手に控える富永四郎左衛門にどのように扱うかと問われたので、捕らわれている両人の手前、勿体ぶって答える。

 

 しばらく様子を見る必要はあるが、安房国を手にしたことで里見家を処分する必要が無くなった。


 三浦半島を制し三浦家を降した時。あの時は相模国内に三浦家当主を置いておくのが不快だったため、三浦家当主三浦道寸とその父高救を箱根の西へと移動させ監禁(教育)した。

 その他、地縁が深く占領地の統治に邪魔となる者、または俺に従うのを良しとしない者を家ごと流したりもしている。


 今回の場合、里見家は安房国の勢力。

 土着したのは今から50年程前と室町幕府の歴史からしたらつい最近のことだが、安房国一国を治めていたとなれば影響力は侮れない。


 したがって、三浦親子と同様に三島へ送ってしまうのも一つの手だと思う。


 しかしな。将来、小田原城から江戸城へ本拠地を移すことを考えると、西の拠点である三島の地を流刑地扱いしていては拙い。そして何より芸がない。


 では、こうしよう。視線をターゲットである義通に向ける。


「里見民部大輔義通。足利の分家如きが“義”の字を用いること罷り成らん。よって、“氏”の字を与える故、以降は民部大輔氏通と名乗れ」


「……はっ」


 とりあえず、足利の分家を降したとき恒例の“氏”の偏諱を与える。

 氏通も不承不承といった態度を隠しもせずに答える。


「身柄は……そうだな。松田左衛門、前へ」


 奉行衆の一員、松田左衛門こと松田左衛門尉頼秀を呼ぶ。

 彼は後北条氏の家臣松田家の祖。豊臣秀吉の小田原征伐の際に豊臣方に内応し、それが次男の密告により露見、切腹または斬られたのが確か左衛門の孫だったかな。

 

 左衛門が御前に侍り頭を垂れたのを見て続ける。


「民部大輔の身柄を預ける。その分の禄を出すゆえ出仕させよ」


 松田家は相模国松田郷の出身だが、左衛門の父の代には京において幕府に奉公衆として仕えていた。

 それも我が父政知の下向に伴い、関東(堀越)執事の渋川義鏡・上杉教朝らと共に左衛門も下向することになった。


 彼も元は堀越御所に仕える幕臣であったわけだ。

 それが関東執事渋川義鏡の失脚に巻き込まれ共に没落。後に敵対を咎めた父により所領を没収された。


 それ故に、後年家臣を欲した俺により召し抱えられるまでは孤立していたようだ。


「承知いたしました」


「頼んだ」


 これで1つ解決、と。

 左衛門が下がるのを横目に視線を残った実堯に向ける。


 この男は如何したものか。

 1番の懸念は義堯の誕生。しかし、氏通を出仕させるにあたり実堯を殺すのはナシだ。


「捕らえた者の一覧を見せよ」


 近習より手渡された一覧を読み込む。

 義堯の母の出自は分からない。だが、その父実堯はまだ正室を迎えていない。


「左衛門佐実堯は他の里見一族や国人と同様に調練からとする。左衛門佐は河越城の高橋左近将監に預けよ」


 “頼んだぞ”と言って俺は退出。

 左近将監に実堯を見張るように指示を出しておくか。

 


〇 〇 〇



◾︎武蔵国江戸城


「では此度も奴らは動かなかったと?」


「はっ。兵を集めるどころか、戦の支度さえしておりませなんだ」


 と告げるのは風魔小太郎。

 

 ここで言う奴らとは、古河公方・山内上杉・扇谷上杉のこと。

 その三家は俺が安房攻めの兵を出しても表向き何の反応も示さなかった。やる気がないの一言で言い表せるものではないのだろうが、こういった無反応な対応をされると俺も不安になるのでやめてもらいたいのだが。

 

 抗う気がないのか、死んだフリなのか。非常にもどかしい。


「潜んでいる者からはなんと?」


「安房へ攻め込んだ報せが舞い込んだ時には大層混乱したとようにございます。されど先程申し上げました通り、三家にそれ以上の動きなかったと」


 うーん。最近の彼らの様子を見ていると降伏を促しても素直に降伏するとは思えないが、かといって積極的に敵対してくるとも思えない。


 策を弄しすぎることが俺の欠点だが、何らかの手を打たないと落ち着いていられなさそうだ。


 

前回完全にスルーしましたが、今作は里見八犬伝こと里見成義はいないものとして書いてます。


里見義実(1420前後生〜1488年没)と義通(1481年生)であり、義実60過ぎの子として義通が生まれたことになるため間に1代いた可能性が高いです。

しかし、義実の庶子とされる中里実次が1534年に義通の子義豊に従い討死していることから、完全に無理とは言いきれないためです。

それに成義あと5年くらいですから居ても居なくても変わらないので…

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