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闢発の妖精王1 壊滅編  作者: C先輩
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渦中

明日も投稿予定です。

遅れてしまい申し訳ありません。

 空艇アエーロークの最高速度は数ある空艇の中でも群を抜く。それは各国が威力偵察等に使用する高速戦艦にも勝る程で、疾風の足という傭兵団をまさに象徴するアイデンティティだ。どこよりも早く駆け付け、どこよりも速く、どこよりも安全にモノを運ぶ。空賊すら追いつけない速度というのは、彼らの信頼の証でもあった。団長のエアも、他の団員達もそれを自負し、また誇りとしていた。


 だが、何事にも例外はある。

 たとえば伝承にある、太古より生き永らえし正竜。まさしく生きる天災であるソレに目をつけられてはアエーロークとて生き延びる術は無いだろう。最も、そんな竜に遭遇する事が人生で一度あるのかという方が怪しいのではあるが。


(まさか、本当に出くわすなんてね――!)


 エアは船長席で一人舌打ちする。鳥人族(ハルピュイア)であるエアは人族よりは長生きだが、だからといって竜に遭う確率が上がるなどという事は無い。そもそも強大な竜は魔素の濃い過酷な環境を好むので、ヒトとは生活圏がまるで違うのだ。それがどういう訳かこんな森の上空までやってきて、こちらを狙って来ている。


「ダリル!炉心が少々焼き付いてでも速度を落とすな!


「うえーん、帰ったらオーバーホール確定だよぉ」


「そんな心配は生き残ってからにしな!甲板!バリスタを撃った馬鹿はどうなった!」


『ウガルで雇ったバシって傭兵だったよ。アシュリーさんが手伝ってくれてすぐに捕縛したんだけど、毒を飲んで自決しちゃって...』


 伝声管からオキペテの報告が上がる。おかしい、その男は組合経由でそれなりに信用のおける男だったはずだ。妖精機移送に伴い、突発的に依頼した人員だから前以て根回しされていたとは考えにくい。

 となると――


『各員!二人一組で船内を回れ!他に侵入者が居ないか確かめること!』


 エアは確証を得るべく指示を出す。そして自分は直ちに席を立つと、ダリルに後を任せて甲板へ立った。


(あれか――!?)


 エアが捕捉したと同時に鳴り響く轟音――シュウという男が飛んで行った先では、巨大な砂塵――いや砂塵と呼んでいいのかすら分からない大地が抉れ土の塊が空へと舞い上がる光景があった。空にはシュウが駆る翠の妖精機フレイが当たり前のように浮かんでおり、眼下を見下ろしている。

 鳥人族(ハルピュイア)特有の優れた視力によって、エアはそこから起こる異常な景色を眼に焼き付けられていく。


「なんだ――これ」


 地上から、巨大な氷竜が顔を上げると、シュウの機体目掛けて咆哮をあげ飛び上がる。見てわかる程に怒り狂った竜の突進は、その巨躯でありながらアエーロークを一瞬で抜き去る程の速さだ。それをシュウはあろう事か、機体が持つ身の丈程もの巨大な剣を用いて、軽やかに受け流していく。そして氷竜の反応が追い付かない程の飛行速度で空を飛び回り、四方八方から氷竜に剣を叩きつけていく。


 正竜を完全に翻弄している――


「ははっ――」


 開いた口が塞がらなかった。

 一体自分は何を見せられているのだろう。

 見たこともない異様な妖精機、ウガルから持ち出された秘密裏に作られた妖精機などと推測していたが、アレは()()()()()のモノには見えない。正竜と互角以上に戦えるなど、冠位級と呼ばれる機体が何機も揃って初めて成り立つ話だ。つまりあれはたった一機で、大国の国家戦力に並ぶ能力を持っているという事になる。


(いや、でもそうか――)


 だが同時に、この不可解な依頼の輪郭もより見えて来た。

 そもそも、こんな機体を王国が保有しているならば、黒獣の跳梁跋扈を許していなかっただろうし、教国に国を明け渡すような事態にはなっていないだろう。アレは恐らく、王国が陥落後、ウガル領主に接触してきた外部勢力だ。ウガルは土の元素機ドーヴェンの活躍によってこの災害から比較的軽微な損耗で生き残った街であり、また領主のクレイはルイン教を敬遠している。今後教国優位の交渉に引き込まれない為には、またとないカードだ。

 だが、強大な戦力を急にウガルが保有すれば、内紛の火種として処理される危険も伴う。故に手放す――ヱビスの強力なバックアップを引っ張り出す為に、手にしたばかりの、手に余る程のカードを。

 あの領主は、自分が想像していたよりも強かなのかもしれない。


「ウガルの街だけは、教会に取り込まれず逞しく生き残りそうで私は何よりなんだけど、ね」


 エアが長年傭兵稼業をしてきた経験は、危機管理という意味でも役に立ってきた。君子危うしに何とやらという奴である。しかし今回は、もしかすると少しばかり――いやかなり欲をかいてしまったのかもしれない。


 エアが思慮に耽っている間にも、戦闘している場所からどんどん空艇は距離を取っていく。最早視力に優れたエアでさえ、目を凝らしてみないと捕捉できない程に距離が離れた辺りで、シュウの機体が動いた。

 攻撃を往なし、隙を突いて剣戟を見舞っていたフレイが突然一直線に上昇する。当然飛竜はそれに追い縋るが、振り切る程の圧倒的な速度で加速したと思った瞬間、僅かにエアが捉えたのは、遥か上空からフレイが巨大な剣を氷竜目掛けて思いっきり放り投げた瞬間だった。


 直後、遠く離れた空艇まで響いてくる轟音が響くと、森の一画が地図上から消え去る事になった。

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