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闢発の妖精王1 壊滅編  作者: C先輩
25/66

あなたが王様です?

1話2000字程度のサクッとしたリズム感で進めたいのですが、なかなか字数が減りません。

テンポの良いストーリーが書ける方は尊敬します。

 月明かりを頼りに、薄暗い草原を駆け抜けていく。

 ガスパルを気遣うせいで、先程は"馬に追いつかれる程度"しか速度が出せなかったが、今は実に快速だ。

 改めて、この世界での身体がこのアバターであった事に感謝しなければ。


 程なくして合流予定の座標が見えてくると、前方の生い茂る森の上空で、巨大な芋虫状のシルエットが落下してくるのが見えた。その更に上空では、見慣れた機体の影――アイリスの駆るフレイだった。どうやら既に戦闘が始まっているらしい。

 落下したのは先の報告にあった黒獣だろう。ドォンと激しい衝突音と共に地響きがここまで伝わって来た。


 〈アイリス、他の敵影は〉


 〈同種が2、10時の方角より距離2000です〉


 〈今の内に合流だ〉


 〈はい、着陸します。粒子フィールド同期、ハッチオープン――おかえりなさいませ〉


 降りてきたフレイのハッチへ飛び込むと、即座にコックピットと同期を開始した。五感が拡張され、思考は加速し、無数の情報が数多の微細なトランジスタを経由し、高周波のシナプスに変換されたそれらは、津波のように脳を駆け巡っていく。

 同期が終わると、センサーを頼りに戦利品とお客人の位置を確認した。4時の方向で敵と丁度反対側だ、加えて被害が及ばぬよう、超重剣を地面に埋めて盾にしている。


 〈エンジニアと、その姪っ子さんを連れて来てる。さっさと仕留めて迎えに行くぞ〉


 〈了解、Isorate(火器管制を) Firearms(分離します),You Have(操縦) Control(どうぞ)


 〈I Have(受け取った)――とはいえ砲撃は勿体無いから、自重制御だけ頼む〉


 〈お任せを〉


 そこからはあっという間だ。機体を一気に加速させて黒獣を射程内に捉えたら、アイリスと同じように粒子の圧力で盛大に打ち上げて、次々にその巨体を高空から加速をつけて地表に叩きつけた。


 爆撃もかくやという地鳴りの後、芋虫型の黒獣は衝撃によって原形を留めない程に砕け散り、その体表を覆いつくしていた黒泥はボタボタと地面に溶け、やがて蒸発していった。


 〈結構重いな、単発機(オレ無し)の状態でよく持ち上がったもんだ〉


 〈"剣"を置いてきましたから。ただ推進剤は遠慮無く吹く事になりましたが〉


 〈いや、いい判断だ〉


 確かに圧縮済の大気残量が殆ど無いが、こんなものは時間が経てば再充填される。

 安全を確認した後、アシュリー達を回収に向かった。放っておいたら流石に逃げるかもと思っていたが、アシュリーは先程の場所から動いていなかった。

 EL.F.で急行してそのまま粒子で馬ごと宙に浮かべて運んだ為、似たような運ばれ方をしていたガスパルはともかく、アシュリーは腰を抜かす事になってしまった。


「なんて事してくれるのよ!」


 開口一番、正気を取り戻したアシュリーに怒られてしまった。

 意味が分からないだの常識が無いだの理不尽だのと責められ続ける難所から救ってくれたのは、先程保護した異形の者達だった。


「あ、あの!」


 声をかけたのは、暗く青い皮膚を持つ小柄な女性だった。後ろで括った髪の毛は艶のある白銀のようで、その身体との対照的な独特の色彩を除いては、人間と何ら変わりないように見える少女だ。


「助けて頂き本当にありがとうございます王様、私はヤリンと言います。この子は友達のムベベ」


 黄緑の体表を持つ芋虫ムベベは、紹介されるとグバグバと鳴きながらその場でウネウネしていた。ヤリン曰く、ありがとうと言っているらしい。アシュリーは完全に引いていた、流石に1メートル級の芋虫が目の前でダイナミックに蠢いていたらキツイのだろうか。


「待て、王様って何だ?俺は君の事を知らないが」


「あれ?――も、申し訳ありません!もしかしてご内密だったのでしょうか…!?」


「何か大きな誤解をしているようだが、俺はシュウと言う傭兵で、どこぞの王になった記憶は無いぞ」


 そう言うとヤリンはブンブンと首を横に振ってそれを否定してくる。


「そんなはずはっ、私達の口伝には慈悲深くも強き我らの王、その内海より出でる力の奔流は竜と起こりを同じくする"無色の魔"とあります。魔素の色味を感じ取れるエルフが言うのですから、間違いありません!」


「エルフ!?」


 なんとヤリンはエルフだという。


 〈良かったですね、本物のエルフからお墨付きをもらいましたよ〉


 アイリスが無線で話しかけて来た。果たして本当にエルフなんだろうか、何だか思っていたエルフと随分違うが。


「あっごめんなさい!王様の居た時代はリンカーなんて居ないから分かりませんよね…すみませんこんな肌色でエルフなんて名乗ってしまって――」


「そんな事は気にしなくていい」


 遮るような形で口が出てしまった。

 文脈から、彼女が受けてきた差別や迫害、或いは自分の生い立ちに対する後ろめたさのようなニュアンスを感じて咄嗟の事だった。


「君がエルフとしての自覚があるなら、君は紛れもなくエルフだ」


「王様――」


 ヤリンはうるうると涙を浮かべて何やら感極まっている。それを見たムベベが、寄り添うように近づいて頬に伝う涙を拭いていた。

 感動的なシーンだ、涙を拭っているのがムベベの口から無数に伸びた触手でなければ――グロテスクな絵面にアシュリーなんかは余計に腰が引けていた。


「そ、それよりもあなた!そこにあるのはサラマンダーじゃない!やっぱりあなたが今回の事件に関わっていたのね!」


「あぁ、まやっぱりそうなるよね」


 気を取り直すようにしてアシュリーは自分の本題に移った。そりゃあ相手は聖騎士なのだ、自分の所の隊長さんが使っていて奪われた機体が目の前にあるのだから、よく今まで騒がないでいたものだとさえ思う。

 さてどうしたものかと、頭を捻った時だった。


「なんじゃこりゃああああああ!!」


 突然、ガスパルが吠えた。

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