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闢発の妖精王1 壊滅編  作者: C先輩
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闘う者、抗う者

シリアスな山場ではフザけたくなる衝動と必死に戦っています。

 初撃は見えなかった。

 ただ一瞬、肩に乗った相棒の爪が食い込む力が、ギュッと強くなった。

 直感、野性的とも言える勘でダンは体を仰け反らせて後方へと飛んでいた。

 結果はどうだ。先程まで隣に居た男の首は飛び、その隣に居た男は足が飛んでいた。体の大切な一部が血飛沫をあげて放物線を描き、あらぬ方向へ飛んでいく。


 何人死んだのか、ダンに状況を把握する余裕は無い。今助かったのは殆ど奇跡だ。次を避けられる自信が無い以上、一刻も早く距離を取れと全身の細胞が警鐘を鳴らしている。ダンは持てる全ての膂力を振り絞るようにして後方へと駆けた。


「うおおおお!生き残るぜピーちゃん!!」


「コリャダメダ!コリャダメダ!」


 ダンは振り返る事無く走った。

 獲物を逃さじと黒い触手が背面から迫りくる。その速度は、到底ダンが捌き切れるものではない。だが触手は、ガキィ!と激しい衝突音と共に追撃を阻まれる。ダンとの間に割り込んだそれは巨大で分厚い氷の盾だった。

 ダンは救いの手。その主のもとへと一目散に駆けていく。


「助かったぜウィッツの旦那!」


「アンガトヨ!アイシテル!」


 生きる伝説ウィッツ。武に秀で、卓越した魔法の才を持つ万能を体現したような男。その無貌の仮面は表情を窺い知る事ができない。

 だが、ダンには見えた。そのウィッツでさえも身構え、仮面越しにも分かる程の緊張を孕んでいる事に。


「ダン、後方からさっき倒したのと同じ黒獣が来ている。他の魔法使いと抑えられるか?」


 その声で、ダンはウィッツの隣に空艇で会話した男、シュウが居る事に気付いた。


「一本道で全部殺したはずだろ!?」


「穴でも掘ってきたんだろう」


「前は殆どやられた!数によっちゃ抑え込めれないぞ!」


「戦線が瓦解しない程度に下がりながら応戦しろ」


「でもそれじゃあ――」


 今まさに迫りくる触手の怪物はどうするのか――疑問を込めて、ダンの視線はウィッツへ向く。ウィッツは高速で攻撃魔法を発動させ、畳み掛けていた。


「こっちで何とかする、行け!」


「くそ、とんだ厄日だぜ。無事な前衛は俺に続け!挟撃してくる奴らを抑えるんだ!」


 毒づきながらダンは駆け出した。



 ウィッツは氷で生み出した巨大な氷盾を次々と生み出し、蠢く触手へと叩きつけていく。それに抗うように、触手は盾を穿ち、砕き、こちらへ再び殺到しようとするも、ウィッツが新たに作り出す盾がそれを阻む。

 とはいえ、いくらかは漏らした触手が飛来してくる。それを阻んだのはシュウだ、圧縮した素粒子の壁によって阻み、触手はこちらへ近づく事ができない。


「息のある奴は全員下がったみたいだぞ」


「ええ!」


 負傷した傭兵達が自分達より後ろへ下がったのを確認して、ウィッツは攻勢に転じる。時間稼ぎは終わりだとでも言うかのように、ウィッツは小さな火球を無数に生み出して、叩きつけていた氷盾へと撃ち込む。すると火球は渦を巻き、燃え盛る炎の柱を生み出した。


「さぁ、お終いです!」


 ウィッツが杖を振る。周囲に強風が吹き荒れると、炎に包まれた触手の怪物へと吹き抜けていく。いや、厳密には怪物を取り囲むように風は吹き荒れた。

 炎は勢いを増し、盾の形を保っていた氷を一瞬にして溶かすと、凄まじい勢いで蒸気が溢れていく。それは小さな嵐の壁によって閉じ込められ、中に居る怪物を容赦なく灼いた。


『―――!――――――!』


 声にならない怪物の絶叫、それは怪物の断末魔にも、怨嗟の声にも聞こえた。


 やがて炎の渦が消えると、身体を覆っていた黒泥を焼き払われた怪物がゆっくりとその姿を現した。


「ヒュージウォーム――」


 ウィッツがその姿を見て思わず呟いた。

 全身が焼け爛れたその怪物は、長い長い巨体をズルズルと引き摺り、芋虫のような身体の先端には無数の大きな牙と触手が生えている。


「全員撤退!ここの親玉は黒獣のヒュージウォームだ!俺達じゃ手に負えない、地上に戻るぞ!」


 ウィッツの叫びに、周りの傭兵達は驚くが、切り替えは速かった。急いでダン達が戦っている戦線を突破しようと、手当を受けていた者まで走り出す。

 ただ1人を除いて。


「ウィッツ、こいつはほとんど戦う力も残っていないようだが何故逃げる?」


「駄目なんです。こいつは核と胃、そして頭部を完全に破壊しなければ再生してしまう。妖精機が扱える質量兵器か、増幅魔法(オーバードマジック)でないと威力が足りないんです!」


 ヒュージウォーム――別名を魔鉱喰らい。

 妖精機の構成部材として利用される魔鉱を狙って採掘場が荒らされる事がある為、鉱夫達からは特に恐れられているが、地中を掘り進む為基本的に遭遇率は低く、普段は温厚で危険度は低いとされていた。

 ――だが今は黒獣となって、理性が吹き飛び衝動に任せて暴れている。


「なら、お前はダン達を援護して、急いで地上へ上がれ」


 シュウの理解は迅速だった。それなら丁度地上に居る妖精機に始末させれば良いではないかと。


「いや、僕はここで時間稼ぎを――」


「お前が行った方が後方を早く突破できる!行け!」


「無茶だ!自分だけ犠牲になろう等と!」


「死ぬつもりは無い。俺を舐めるな」


 ウィッツが何か言おうとすれど、会話はそこで強制的に断ち切られる。

 シュウはウィッツの身体を浮かせると、走っていく傭兵達の方向へ向かって思いっきり吹き飛ばした。

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