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闢発の妖精王1 壊滅編  作者: C先輩
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ヨロシクナ

まだまだ巨悪の気配も何もありません。

平和なものですね

木版と鋼板を組み合わせた巨大な帆船が、光り輝くマジックセイルに風を受け、空を征く。

空艇――アルゴス級2番艦ピーフォウルは、30余名の傭兵を乗せて、ファルク村へ急行していた。



「おおおお!」


絶景とはこれこの見晴らしか。

甲板に上がって景色を眺めると、ゆっくりと景色が動き、風が吹き抜けていく様に感動する。


組合でひと悶着の末、フルックと名乗るイケメンお兄さんによって合格と見做され、あれよあれよと手続きが進んで、気付けば空艇で町を発っていた。

なんでも自分が最後の合格者だったらしい。


「おうアンちゃん、空艇は初めてか?」


棍棒のような鉄の棒を背負った熊みたいな男が話しかけて来た。


「ああ、興味はあったんだが機会が無くて」


「そりゃあそうだろうな、空艇に乗る仕事なんざ大商団の護衛やら危険度の高い遠征討伐が大概だ。4級のあんたにゃ普通縁が無いだろう」


熊男がニカっと笑う。


「ダン、3級で見ての通り戦士だ。さっきの見てたぜ、すげぇ魔法を使うんだな」


「シュウだ」


「お前は運が良いぜシュー、空艇に初めて乗った記念すべき日に、あの伝説の傭兵ウィッツと同じチームで仕事ができるんだからな」


「誰だそれは」


「ぶっお前冗談が上手いな!」


「いや、本当に知らない」


「――まじで?」


ダンは目を丸くしながらも我が事のようにウィッツという傭兵の自慢を始めた。

1級の傭兵、依頼達成率100%、生きる伝説、常に仮面を被り、誰もその素顔を見たことが無く正体は竜人だの魔人だのと噂されている。


「聞くところによりゃ大型の黒獣だって生身で相手取った事があるらしいぜ。まさに百人力だな」


「そうなのか、それは凄いな」


「だろう?」


大型の黒獣とは巨大ロボと戦っていた奴らだろうか、だとしたら本当に大したものだ。


「無口な人だからよお、素っ気無いんだが、それでも挨拶しとこうと思って俺も行ったんだが、向こうは大渋滞よ」


「ああ…」


人気者は大変だ。


「実力を正しく評価してもらえているなら何よりだ」


化け物扱いされて"討伐"されてしまいそうだった過去を思い出して、ちょっとそいつが羨ましくなった。


「あん、なんだそりゃ?」


「いや、なんでもない、それよりも――」


スルーしていたんだが、そろそろこの熊男の風貌に突っ込まなくては。


「ダン、君の頭に乗っている鳥はなんだ?」


それはつるんと光沢のあるスキンヘッドにガッチリと爪を食い込ませて止まっている一羽の鳥だ。外見的特徴からいえば、インコに似ている。


「おお、こいつは俺の旅の相棒、ピーちゃんだぜ!」


「ヨロシクナ!」


なんと喋った。本当にインコなのか。


「何という種類の鳥なんだ?」


「ブラストピジョンだぜ!」


「凄い名前だな」


というかインコじゃないのかよ。


「ピーちゃんはとても賢くてな、危険を察知して、いつも俺の窮地を救ってくれるんだ」


「へぇ、凄いじゃないか」


「だろう?まぁ俺の頭でフン落とされるから髪の毛丸刈りにするハメになったけどな!ガッハッハ」


「ヨロシクナ!」


見計らっていたかの如くピーちゃんがダンの頭へ爆撃をする。それをダンは流れるような手付きで腰から布を取り出して拭き取った。


「な?」


ユニークな傭兵だった。


しばらく甲板でダンとの談笑を続けていると、船内から外套に身を包んだ人物が出てくるのが見えた。目を引くのは顔全体を覆う真っ白な面を身に着けている事だ。


「あれ、噂のウィッツとやらか?」


「うお、そうだそうだ。なんで独りなんだ?」


「さぁ…」


よく見れば足取りが覚束ない。押し寄せてきた傭兵達の相手をしていたからだろうか。そのままのろのろと左舷へ歩いていくと、ヘリに体重を預けて座り込んだ。

あれは重症だ。


「大分疲れているみたいだ。そっとしておこう」


「えぇ?一言ぐらい挨拶しても――」


「仕事が終わってからにしたほうが、気の遣える奴だと思われるぞ」


「そ、そうか」


そのままダンを引き連れて甲板を後にする。

すれ違う際にピーちゃんがアバヨ!と鳴いたせいで驚かせてしまった。後で謝ろう。



「はぁ~~~」


何度目かの溜息。

軽い気持ちで引き受けた依頼だったが、今は猛烈に後悔している。厳密には、ウィッツという名前で引き受けた事をだ。

ある程度は予想していたが、この仮面を目指して見覚えの無い傭兵達が次から次へと話しかけて来る。

師匠はあまりパーティーを組んで依頼引き受けなかったから、出会う事が少ないせいもあるんだろう。やれ握手してくれだの、パーティーを組んでくれだの、お付き合いしてくれだのと物凄い事になってしまった。


最初は相手をしていたが流石に限界だ。休ませて欲しいと断って甲板まで退散してきた。

船体のヘリにもたれるように座り込む。甲板にも人は居たようだが、幸いこちらに話しかける事なく通り過ぎていく。


「アバヨ!」


驚いて顔を上げると、ガタイの良い頭を丸めた男と線の細い男が連れ立って目の前を通り過ぎていた。声の主は彼らでは無く、その頭上に止まったブラストピジョンだ。デカい方の男の頭上から、繰り返しアバヨ!と声が聞こえてくる。2人はこちらを気にせずそのまま船内に入っていった。

ブラストピジョンが喋るなんて珍しいなと思いながら、今の二人が自分をスルーした事に驚いた。もう頭の中で、誰かと会うと話しかけられると脳が身構えていたからだ。

やっと一息つける。瞼を閉じ、少しばかりの休憩を取る事にした。


どれくらい、経っただろうか。


「要るか?」


声を掛けられて、少し眠っていた事に気が付いた。顔を上げると、先程通り過ぎていった細身の男が、水を注いだ木のジョッキをこちらへ差し出していた。

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