ウサギさん、ゴブリンオーク対策会議に出席3
『ふむ。S級? 冒険者ストナか。我はドルアグス、こちらはアウレリスという』
「うっそ、魔物が喋った!?」
驚くストナ。ギルド員だろうか? 女の人が椅子を持って走ってくる。
どうぞ、とストナに譲ると、そそくさと去っていった。
クロウが隣座れや。と促すことで仕方なさそうに椅子に座る。
クロウとギルド長の間に入ったのでまるで中心人物のようになっている。
当然のようにウサギさんはストナさんの膝に向かうと定位置とばかりにふんぞり返る。
「……? なんだこのウサギは?」
「オイこらそこのエロうさ」
しかし、俺の首根っこをクロウが掴んで机に戻されたのだった。
何をするクロウッ!?
「テメェ女性の膝の上に無遠慮に乗るんじゃねぇよ」
「おいおいクロウ、ウサギ相手にそんな事を告げても無意味だろう?」
「こいつには充分通用すんだよ。それで、だな。とりあえず俺ら人族がゴブリンを優先的に狩る。オークたちは魔物達に任せることに決まった」
「ふむ。ああ、それで代表者のドルアグスとアウレリスがココに居るのだな」
察してくれたらしいストナは鷹揚に頷くとドルアグスに視線を向ける。
「一応、聞いてはいるが、殺していいのはオークとゴブリン。それでいいな?」
『うむ』
「もう一つ確認するが、森の魔物とやらにゴブリンやオークは居るのか?」
『問題無い。今居るオークやゴブリンは皆外から来たものばかりだ。駆逐してくれて構わん』
『少し前まではレッドキャップが居たけれど、壊滅したから問題ないわ』
レッドキャップの話がアウレリスから出たことでクロウがんん? と怪訝な顔をする。
「レッドキャップってのぁアレだろ。アウレリスの森の東側に存在する集団。壊滅したのか?」
『ええ。どっかのウサギのせいでね』
ギロリ。アウレリスが睨む。その視線で事態を察したクロウが俺を見る。
いやん、そんなに見つめちゃ嫌っ。
くねりんっと身体を捻ってみる。
「何やってんだテメェはよぉ……はぁ」
「ふむ。レッドキャップが居なくなったというのであれば東の森を探索しても問題はなくなるのか」
ライゼンじいちゃん、今その話すべきじゃないと思うよ。
『ふむ。丁度良いぞアウレリス』
『丁度良い? 何がよ?』
『そなたの森に他の森から侵略者が来ておるのだろう。人間たちに駆除して貰えば良いではないか』
なんか魔物二人でそれは良い考えね。みたいな感じで話が進みだしたんだけど、人間に一言も連絡なくていいのかね?
『クロウよ』
「おう、なんか話し合いを聞くに俺ら冒険者に侵略者? を相手させようって聞こえたんだが」
『その通りだ。もともと森は守護者の他にそこに住む魔物達が防衛部隊として配置されている。その魔物たちの総戦力がその森の戦力となっているのだ。有力な魔物が居れば防衛力もかなり高くなるが、アウレリスの森はその防衛戦力であるレッドキャップが滅んでしまっている。ゆえに他の森からこの森を奪おうと魔物の先遣部隊が攻めて来ているのだ』
そういえばアウレリスがブチ切れながらそんなこと言ってたね。
「そいつを駆除しろってことか?」
『問題あるまい? ただ森を探索してその森に本来居ない外来種を駆除するだけの仕事だ。それにこれはお前達にとってもメリットである』
「ほぅ、メリット?」
『森の主が変われば森の様相も様変わりする。つまり、森に攻めて来た者たちがアウレリスを倒しこの森の主権を奪い取れば、この森はその守護者の管轄となる。今までのような温い魔物達だけでは無くなる可能性も高く。街道といえども複数の魔物が襲ってくることになるだろうな。今は我とアウレリスが管理しているから街道での魔物は雑魚ばかりだがな』
「え? 出現する魔物ってそちらで調整してたのか!?」
初めて知る事実に驚くクロウ。
何を今更と呆れるストナ。
ストナさんは知っていたようだ。
「確かに、守護者によって好戦的だったり友好的だったりする森があるわね。ほらクロウ。南の方にあるレミーニアの森あるでしょ」
「ああ。あそこは凄かったな。神秘的な上に友好的な魔物しか生息していなかった」
「妖精女王レミーニアが天然入ってるから危機感が薄いのよ。護衛のスプリガンが強力だから森の治安は維持できているし、安定した森ってああいうのを言うのよ」
妖精女王。なんていい響きなんだろう。ぜひともお近づきになりたいモノである。
「ふむ。ある程度理解した。定期依頼としてギルドで森の調査を出しておこう」
『そうしてくれると手間が省ける。今から強力な個体を育てるにも面倒だからな』
あのゴリラとサルの群れは強くないんだろうか? あいつら代わりにすりゃいいんじゃね?
「ちなみに、アウレリスの森にいる現存種ってどんなのが居るの?」
「折角だし今のうちにリスト作っとこうぜ、現存種と外来種が分かりやすくなるし」
『よかろう。少し長くなるが?』
「そこは書記任せだ。ギルド長、直ぐ手配を」
なんか、長くなりそうだなぁ。
ちゃっかり再びストナの膝に乗ったウサギさんは、もふられながらしばし時間を待つのであった。




