第八話
すみません。
こんな更新の遅い上に話の内容も進みの遅い話を読んでくださってありがとうございます。
ちょっと見ない間にブックマークが増えてる!
すみません、ありがとうございます。
きっといつまでも。
なんて、幻想なんだ。
◇◇◇
白く滑らかな陶器のような天蓋の天井に、咲き誇る薔薇の繊細な絵が描かれている。
「知らない天井だ」
さすがに三回目ともなれば、この台詞は不適当だろう。
今更ながら、こんな台詞を呟く余裕が出てきたということか。自分では落ち着いていたつもりだったが、案外混乱していたのかも知れない。
やっぱり自分の事が一番分かりにくい。
仲良し三人組のメイドさん達に世話を焼かれて王子様と仲良く魔法の授業に向かうと、神官がいい笑顔で迎えてくれた。
「二人とも大分慣れてきたでしょう。今日からは、もう少し深く繋がる練習をしましょう」
神官の言葉に、王子様は真剣に、俺はそこそこ真面目な表情を浮かべて頷く。
内心と表情筋が連動していないって素晴らしい。
神官は俺の不真面目には気付かずに満足気に微笑んで説明に入った。
「感覚の共有ですね。呪文は同じですが、より深く相手と繋がるイメージを持って下さい」
促されて、向かい合ったまま手を繋いだ。
もう、手を繋がなくても≪共有≫の魔法は使えるはずなのだが、癖になってしまっているのか?
王子様可愛いから俺はうれしいけどね。
王子様が剣の訓練を始めてしまったので、すべすべの白い手が傷んで皮が厚くなってきているのが残念でならない。
回復魔法のおかげかそこまで激しい訓練はしていないのか、皮がズル剥けて~とかいうグロいことにはなっていないからまだマシな方だろう。
本人はその手を剣士の手と比べてまだまだだと笑うから、気に入っているのだとおもうが…。
金髪碧眼のザ美少女なのにもったいない。
美少女顔の王子様が小さく赤い唇で魔法の言葉を紡ぐ。
俺は初めから一貫して無詠唱だ。
呪文の意味はわかるが、発音は俺には難しい。
ホーミーとか、発音記号のaeが重なったヤツとか、そんなどうやればいいか分からん発音が多々あるのなんて、正確に言えるわけない。
普段の会話さえ、俺はちゃんと喋っているつもりなのに王子様の記憶を覗いてみたら幼児言葉だった。
外見がサクラさんだから許されると思いたいが、本気で泣きたい。
スピード何とかで少しヒアリングが出来る様になったからって、いきなりネイティヴに喋れると思うなよ!
それができるんなら、韓ドラにハマってるおばちゃん達は皆ハングルペラペラだ。
知識があるのと活用出来るのは別問題なんだよ。
「≪共有≫」
一瞬だけぼやけて、瞬く間に視界が開けた。
比喩ではなく、二つの視界が手に入ったのだ。
ひとつは、普段俺が見ている通常の俺の周囲360°を取り巻く視界。
ちなみに色が付いて見えるのは視覚による一部のみで、魔力を見ている範囲内はサーモグラフィーか暗視カメラ映像のような感じだ。
色の様に感じる部分はあっても魔力の質と密度によるものなので、目で見た色とはまた別のモノだ。
サクラさんの体になって新たに増えた視界に始めは戸惑いもしたが、3日も経てば慣れる。
そしてたった今、もう一つ、視界が増えた。
色のついた、ヒトの視界。
その真ん中には、ピンクの髪をシニヨンにまとめた何処と無くアジアンチックな美少女がいる。
言うまでもなく、俺のアバターサクラさんだ。
通常の視覚に重なるように見えて、乱視みたいでなんだか具合が悪い。
ちょっとヨシノさん手伝って。
こう、ウィンドウを重ねている方を選択する感じのイメージで………。
俺の要望に応えて精神と〇キの部屋みたいな空間に、PCのウィンドウが表示される。
もちろん、俺のインナースペースに作った脳内イメージだ。
うん。
見易いけど、ちょっとちがうかな?
せっかく広がった視界を有効活用できてない。
どうしようかな。
あ。そうか、モニタールームみたいにすればいいのか。
監視室よりは、指令室っぽく。
ペンギン飼ってて赤いジャケットの似合うミニスカのお姉さんがいたり、嫁をクローニングしてそうな眼鏡のおっさんが頬杖付いてそうな感じで。
瞬く間に白一色だった空間に機械的な指令室もどきが出来上がる。
正面の巨大スクリーンには、俺の視界と王子様の視界が映し出されていた。
俺の視界の方が広いから、幅を利かせていて王子様の方がちょっと追いやられた様に見えるのは、きっと気の所為だ。
…いい感じに出来たな!
必要あるのか疑問符が付きそうな謎の計器があって、ちょっとイスカンダルまで飛んで行きそうな雰囲気もまじってるけど、カッコイイから問題ない。
脳内インナースペースだからイメージだけですぐに作り変えられるのがいいよなぁ。
とか、感慨にふけってたら、王子様の様子がおかしい。
目が虚ろで、体なんて硬直してる。
どうしたんだ?
≪解:情報の大量な流入による意識の混乱が発生した模様≫
マジか?!
あー。
やっぱりヒトの処理能力じゃあキツイよな。
俺だって、ヨシノさん作って処理して貰わないと普通に動けないし、モノを考える段じゃないからな。
ヨシノさん、王子様の意識だけでもこの指令室に連れて来れる?
≪解:了解。精神バイパス構築。20%…30%…55%…95%…構築完了。接続します≫
微かに王子様の肩が揺れた気がしたが、一瞬だったから、見間違いかも知れない。
≪…50%…60%…80%…90%…≫
良くあるBRMMOのアニメで見た事あるような、カラフルな光のモザイクがチラチラして徐々に王子様の形になっていく。
≪…100%完了しました≫
ヨシノさんからの報告の通り、王子様が指令室もどきに姿を現した。
初号機に乗れそうな青い全身タイツを着て。
…嫌な予感がして自分を見下ろすと、同じ様なデザインの白が見えた。
どうしてこうなった?!
白かよ!
いや、白も大好物だけど!!
サクラさんの髪の長さだったら赤だろ!
まぁ、俺の意識しない所で決めたのなら仕方ない。
髪がシニヨンにまとめてあるからまだマシか。
脳内イメージだがショートにはしない。
髪に力が宿るってのは厨二の基本知識だからな!
危険は犯さない。
髪の色を少し白っぽくしたところで王子様が目を開けた。
ぼんやりと周囲を見回して、俺の存在に気がつくと数回瞬きをして笑う。
「サクラ」
安心したような笑みが、へにゃりと崩れる。
「失敗したみたいだね」
何が、と聞き返しそうになって、気がつく。
王子様の視界に俺しか映ってないから、≪共有≫の魔法が失敗したと思ったのだろう。
首を振って、王子様に正面の巨大スクリーンを見るように促す。
王子様の青い目が、丸く見開かれた。
「視界が重なると見難いので、この様にしてみました」
王子様が目をキラキラ輝かせて笑った。
「すごい!二重に見えて、頭がクラクラしてたんだ。ありがとう」
その笑顔に俺がクラクラします。
マジ天使…いや王子様、これで胸があったら世界が取れるぜ。
『どうですか?視界が重なって見えてきましたか?』
指令室に神官の声が響いてきた。
おそらく、俺と王子様の耳で聞いたのが響いてスピーカーから流れたように聞こえる仕様なのだろう。
レトロなラジオっぽくていい感じだ。
「先生!」
王子様が声を上げるが、精神体だけここへ招いてあるので身体に反映されない。
反応しない身体に戸惑って王子様が俺を振り返る。
迷子の仔犬みたいで可愛い。
じゃなくて。
お願い、ヨシえも〜ん!
パラララッパラー!
という間抜けな効果音は鳴らなかったが、機械の稼働音がして、ヒト型のロボットの操縦席が床からせり出してきた。
ドラム缶じゃなくてちょっとごつい導線が繋がってるマッサージチェアみたいな椅子みたいなやつなのが、実にシュールだ。
王子様の目が輝く。
あー、やっぱり男の子だなぁ。
白のポイントカラーがある方へ先駆けて乗り込む。
王子様も、同じ様に青い方のシートに腰掛けた。
シートの背もたれに身体を預けると、神経接続も何もなくやろうと思うことができるとわかる。
意識体そのものだからね。脳内のパルスを読み込んで云々、なんて必要ない。
ていうか、こんな椅子に座らなくてもよかったような?
まあ、形から入る俺の好みだ。きっと。
『殿下?』
訝る神官の声が響いて、王子様が戸惑ってこちらを見る。
俺が安心させるように笑ってやれば、何を察したのか分からないが頷いた。
「『大丈夫です。神官様』」
無事、王子様の声がスピーカーからも聞こえた。
「『わ、僕ってこんな声なの?』」
スピーカーから聞こえた声に、王子様が驚いて戸惑うように俺を見た。
困った王子テラかわゆす。
ヤバい口元が弛む。
あ、王子様と目が合った。
締まりのないにやけ顔を不自然じゃないくらいに微笑みへと素早く移行させる。
王子様は俺の締まりの無い顔を見なかったのか、または見なかった事にしたのか、苦笑を返してくれた。
神官も笑いを堪えるように一度咳払いして、いけ好かない愛想笑いを浮かべた。
もしかして、神官に見られた?!
こいつには見られたくなかった。何と無く。
俺の外面崩れてませんように。
「『他を通して聞く自分の声は違って聞こえますからね』」
極めて平静を装って言うと、王子様がほっとしたような顔で照れくさそうに笑った。
可愛い。
王子様の声はまだ声変わりしていないから普通に美少女声だ。
成長しなければいいのに。
もちろん、サクラさんの声だって(中身が俺だという事に目を瞑れば)美少女声で愛くるしい事この上ない。
この声と容姿で「パパ」とか呼ばれたら、何でも買ってやる自信が俺にはある。ただし中身がおっさんの場合を除く。
『ちゃんと視界の《共有》ができているようですね。一度戻りましょうか。もうじき昼ですし、あまり長く視界を共有すると目を悪くしますから』
王子様と俺は神官の言葉に頷いて《共有》を解く。
多分神官は物が二重になったあの状態を想像して目が悪くなるのではと懸念しているようだが、俺の脳内イメージでしかない画面の見過ぎで目が悪くなるとかあるのだろうか?
まあ、あんまり体にいいとは思えないから解除するのに異論はないけどね。
王子様がゴツイ安楽椅子から降りて《共有》を解除するのにしたがって、例のカラフルモザイクがちらつきだした。
あ、しまった。
王子様に繋げてるバイパスまた使うかも知れないから切らないでね、ヨシノさん。
≪了解≫
ヨシノさんからの返答直後に王子様の体が指令室から消えた。
だが、王子様との間に微妙に一本つながった細い糸があるような、というのは正しくないな。
無線LANで家庭内ネットワークをつないだような感じだろうか。
この回線を使えば、好きな時に王子様のネットワークに接続できると思う。逆もしかり。
許可なしに使うことはないだろうけど。
≪命令権の優先順位の設定をお願いします≫
王子様が戻ったから俺も通常状態に戻ろうとしていたら、ヨシノさんから声がかかった。
そう言われてみれば、この司令室に入るということは、俺がヨシノさんと呼んでPCよろしく使っている桜の精に直接命令を下せるのか。
もしかして、俺がOS務めなくても大丈夫になるのか?
いや。と即座に自分でその考えを否定する。
王子様に、というかヒトに二つの体を使いこなすだけの思考を求めるのは無理もいい所だし、ヨシノさんはまだ具体的な命令がないと動けないだろう。
本当なら王子様の契約した精霊なんだから命令権の優先順位は王子様が一番になるんだろうけど…。
ヨシノさん、とりあえず俺と王子様命令権は対等で。
緊急時は俺の命令を優先して。
≪了解≫
まだ王子様小さいから緊急性の高い案件の判断は、きついだろうからね。
おかしい。
予定していたところまで全然書けない。長くなっていきます。




