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〜翡翠の彼、瑠璃の彼女〜  作者: 狼×狐
第三章・蠢く影、新たな展開
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4・鬼ごっこ①


 学生が休みだからと言って教師が休みだとは限らない、とはいえ、教師達を頻繁に見かけなかったということは、やはり、里帰りしている人が多いのだろう。などと考えていたが、それはこの人には当てはまらなかったようだ。



 「やーやー、ギルバート君に……それに、確かシャノンさんだったかな、君達を待っていたよ!」


 食事を終えて学園に戻ってきた俺たちを一番先に出迎えたのは、いつぞやの件でお世話になったフェルニー先生だった。

 子供に見える容貌、似合わない大きな眼鏡、以前は持っていなかった謎の1.5メートル程の細い棒を手に持っている。

 それをブンブンと振り回しながら、こちらに近づいてきた。

 隣でシャノンが律儀に挨拶し、俺も釣られてお辞儀した。


「えーと、それで、私達になんの御用でしょうか?」


 シャノンの質問に対して、フェルニー先生は急に真顔になる。


「それは……」

「……それは?」


 シャノンは固唾を飲んだ。

 それに反して俺はジト目でフェルニー先生をみる。

 前にあった時にわかっていたが、この人は一回一回のリアクションが大きいのだ、芝居がかかってると言っても良い。

 案の定、フェルニー先生の口から出た言葉は完結かつ単純明快だった。曰く


「鬼ごっこをしてみないかい?」

















「っく、早く!」

「わ、わぁっ! ってて」


 シャノンは俺が伸ばした手に捕まり、なんとか木の枝に登った。

 危うげにシャノンは枝に腰を下ろし、ため息をつく。


「安請け合いするんじゃなかったね……」

「……先生には借りがあった。仕方ない」


 一応フォローは入れるが、確かにそれは俺も思っていた。

 

 






「鬼ごっこ……それって街の子供達がよくする遊びですか?」

「その通り! とはいえ、ルールはちょっと違うけどね。さて、そのルールを説明する前に紹介しよう、彼女が鬼役の『エルトレス』だよ」


 フェルニー先生が棒で刺した先……ようは、真上を見るとそこには


「はぁ⁉︎」


 人がいた、いや、浮かんでいた。黒を基準とした色のスカート、赤いリボン、ブレザー……まさしくこの学校の魔法科の女子の服装である。魔法科の生徒なら空中に浮いていてもおかしくはない、なんてことはない。


「……ついに空中間制御できる魔法が完成したのですか?」

「いやいや〜、さすがのこの大天才フェルニー先生もそれは無理だったんだよねー、うん、人間の脳の限界にはかなわなかった。そう、人間のね」


 フェルニー先生は、にししっ、と声を出して笑った。それを見てシャノンが不思議そうにする。


「え? 魔法で空は飛べないのですか?」

「俺も詳しくはないけど…………過去、色々な魔法使いが試したが、完璧に空を自由に飛べた者はいないらしい」

 俺に続く形でフェルニー先生も、そうなんだよねー、と相槌を打ちながら補足する。


「いやー、やっぱりねー、空を自由に駆け回りたい! ってのは私達の……人類の夢なんですよ! ようするに魔法使いの目標!」

「は、はぁ」

「しかーし! 空中で自由に移動しようと思っても、空中で常に魔法を使い、身体を制御し、細かな計算を同時にすることは不可能!」


 なのだー! と叫ぶフェルニー先生をみてシャノンは若干引いた、いや、もはや若干というレベルではなかったかもしれない。


「じゃ、じゃあ、あの上にいる方は?」

「そう! それそれ、私はー、まず、人間の脳では空は自由に飛べないという事実に注目したのだ、ようするに、人間でなければ飛べるかもしれない、とね」

「人間……じゃない?」

「そう、なので彼女……エルトレスは」


 俺は自然に空中で静止しているエルトレスをみた、シャノンやフェルニー先生も視線を向ける。


「人工的に作られた人間の初めての成功例……ようするに、人類が初めて作り上げた人造人間……ホムンクルスなのです」






 俺達がしなければいけないのは、ホムンクルスの性能がどれくらいのものなのか、実践で使えるのかの確認……ようするに、性能テストだ。


 もしこのホムンクルスが使えるとなれば、今の戦争の仕方が大きく変わる、人対人だったのが、兵器対兵器になるのだ。


 それがいいかどうか、俺はわからない。ただ、どっちにしろ俺はこのテストを真面目にこなさなければならないだろう。


 この鬼ごっこのルールは簡単、シャノンや俺含め10人の生徒の顔をホムンクルスに記録させる。そして、その生徒達がホムンクルスからの攻撃を受けたら失格、こちらからのホムンクルスへの直接攻撃はダメ、制限時間は3時間、その3時間の間に10人全員が失格となれば俺達の負けで、一人でも残っていれば勝ち。


 単純だが、なかなか奥が深そうだ。


「……それで、木に登ったのはいいけど、どうするの?」

 

 シャノンが木の枝に捕まりながらこっちを見る。


「とりあえず、仲間の位置の確認と、ホムンクルスの位置の確認、そして、ホムンクルスがどんなことができるのかを見る」

「……なるほどー」


 観察を始めて5分経った頃だろうか

「……なっ!」


 50mくらい離れたところにある木が突然爆発を起こした。幸いにしてこちらには被害はなかったが、一体何が起きている?


「い、今のなに?」

 シャノンは驚いた様子で目を丸くしていた。


「わからない、けど、多分……ホムンクルス、エルトレスがやったんだと思う……」

「す、すごいね」

 凄いというか、もはやそういう次元の話ではない。



「とりあえず、危険だ。なるべく距離をとろう」



 そう提案して、木を降りようと地面に視線を下ろす。無機質な目と交わる。

「回避だっ‼︎」



 刹那、足場としていた木の枝に魔法か何かわからなかったが白い一筋の線が貫通し、木の本体は燃え出した。


 勿論、足場を失った俺とシャノンは、重力に逆らえるわけもなく、真っ逆さまに落ちる、落ちる。


 鈍い痛みを覚悟して硬く目を瞑ったが、少ししてきた衝撃は地面のように硬質ではなく……



「……ん?」


「あれ?」



 俺と一緒に落ちたシャノンも、自分達の下に何かクッションのようなものがあることに気づいた。


 俺達は立ち上がり、それをみる。そして、それ……その人が立ち上がった。


「……っててて、一体なんだってんだよ……って、あれ? ギルバートじゃねえか!」


「エリック! なんでお前がこんなところに!」


 そう、俺達のしたに敷かれていたのは、闘技大会の時に再開した旧友エリックだった。



「ああ、それはだな」そうエリックが切り出そうとした瞬間、吹き飛んだ。大きな放物線を描いて。



「あっ⁉︎」


 シャノンが思わず声を上げる。そうだ、忘れていた、俺達が気から落ちた原因は


『敵一体排除完了、これより標的を変更し、排除を開始します』


 このホムンクルスだったということを。



「ど、どうする?」シャノンが狼狽した様子で俺の後ろに隠れる、俺は剣を抜こうとしたが、こちらからの直接攻撃はいけないということを思い出し、舌打ちをする。


『……補足、レーザー砲発射準備に入ります、装填率40%45%50……』


 ホムンクルスがまるで死のカウントダウンを始める、がそれは途中で遮られた。


 突然突風が吹き、砂舞う。視界から俺達を見失ったホムンクルスはカウントダウンを止めたのだ。


「こっちへ!」


 後方から聞き覚えのある声がした。俺はこれを好機と思い、咄嗟とっさにシャノンを抱えて走り出した。





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