7・ライバル
……ギルバートが主人公ぽくない気がしてきました←
次の試合は自分達の試合なので控え室に向かっていたところ、試合を終えたエリック……だけが歩いてきた。
「あのお嬢さんは?」とシャーニッドが尋ねたら、
「うーん、お風呂入るとかいって何処かに行っちまった」
とエリックは答えた。その後、俺の方を向いて
「おいギルバート!
俺の華麗な試合を見てくれたか!」
と誇らしげにエリックは胸を張った。
「あ、ああ、正直ここまで強いとは思わなかった」
俺が正直な感想を言うと、エリックは照れ臭そうに頬をかいた。
「もう覚えてないかもしないけどな、実は俺とお前、昔、一度だけ試合をしたことあるんだぜ? 木刀でだけどな。
その時に俺はお前にぼろ負けして……悔しくて悔しくて、それで追いつこうとして頑張ったんだ。
今でもあんたは俺の目標なんだぜ?
絶対に負けるなよ」
「……勿論だ」
エリックは言いたいことを言い終えたのかスッキリした顔で、そうか、と呟いてその場を去った。
控え室を出て、闘技場の入り口の前に立つ。
「……シャーニッド」
「……なんだい?」
俺は前を向きシャーニッドを見ないで言う。
「……わかってるな?」
「勿論だよ、親友」
シャーニッドがそう言った瞬間、自分達の名前が呼ばれる。
「「絶対に勝つぞ‼︎」」
観客席で観たフィールドと、実際に自分達が立ったフィールドでは、やはり自分達が立った方がかなり広く感じる。
障害物は一切なく、見えるのは観客と審判、そして、向こうのゲートから歩いてくる相手となるであろう男達二人。
俺達は並んで歩き、審判がいる中央まで行く。
「おいおい、こんなひょろひょろした奴が相手さんか? どうやら今回の試合は楽そうだなぁ」
「そうだねぇ」
と、向こうの男達二人はニヤニヤと笑う。それに対してこちらは沈黙を貫く。
審判が『弎!』と叫んだら、お互いの獲物を交差させる。俺はシンプルな長剣で、シャーニッドは刀と呼ばれる不思議な形をした剣。相手は大剣と双剣だった。
審判が『弐!』と叫んだ。お互いにニ歩だけ下がる。
『弌!』と審判が叫んだ瞬間に構え……そして、『始め‼︎』を合図に試合は開始された。
まず、相手の男達二人は攻撃をしようとした……が結果的に、一歩も動かなかった。否、動くことができなかった。
なぜなら彼等が行動しようとしていた時には、大剣使いの男の武器はシャーニッドの刀によって切断され、双剣使いの男の首には俺の長剣が添えてあったからだ。
これはこの試合のルールである勝利条件のうちの二つ
【獲物を使用不可能な状態にすること】
【相手の首元に獲物を当てること】
に該当する。
よって
『勝者! ギルバート・シャーニッド チーム‼︎』
沈黙を破るように審判がそう叫んだ瞬間、観客席から驚きの声や歓喜の叫び、拍手が飛び交う。
観客が驚いている原因は二つ。
一つは試合が一瞬で決着がついたこと。
二つ目は『勝ち方が前のチーム……エリック達のチームと全く一緒だったこと』である。
さらに言うならば、有る程度の熟練者ならエリック達より俺達の方がほんのわずか速かったことがわかるだろう。
俺達は呆然としている男達二人に礼をして、控え室に戻った。
そこには、次に試合をするチームはまだ来てなく、代わりに
「よう!」
エリックが居た。
そして、俺に向かって「やっぱりギルバートには俺じゃまだまだ追いつけてないな。でも、試合には勝つぜ!」と言って……笑った。
自分が自然と笑みになるのがわかる。
「かかってこいよ、返り討ちにしてやる」
そして、お互いに声に出して笑い合った。