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第十九章:告解

不慮の事故で息子を亡くした呉羽氏。彼の熱意はその息子と部下から、響に注がれる……!?

※呉羽氏の熱〜〜い長台詞にもお付き合いください(-_-;)

6・26 日アクが200を超えるなんて感激しました〜!!(>_<)号泣

 呉羽(くれは)管理部長はまるで自供するかのように語り始めた。

 オレは自然とその話に引き込まれて行く。

遠山雄二(とおやま ゆうじ)というパイロットは私が求めていた理想の人物像そのものだった。高らかに理想論を掲げ、自己主張だけは立派な雄弁家とは違い、彼はその内に秘めた意志を明かすことはせずに黙って行動に移していく。私は自分とさほど年齢としも代わらない彼をいつしか畏敬の目で見るようになっていた。星であろうと個人であろうとその規模に関わらず、尊いもののために力を尽くす――その姿勢はもはやパイロットとして見るに止どまらず、未来を切り開く指導者になりうる存在にも思えた」

 父は人類の生みの親である地球という星に深い愛郷心を抱いていた。火星という星を守るパイロットとして働く傍ら、地球の修復作業にも積極的に参加し。そのために学識も得て、それらを行っている。

 生命を生んだ星とその星という住処がなければ生きられない人間や他生物達を尊んで、それらが共存していけるように願うとともにそれを『実行(かたち)』にしていった。

 計画性と確かな行動力が窺える。呉羽管理部長はそのことを言っているのだろう。

「私はその存在を崇め、自らもそれを模範とした存在を作ろうと息子にその希望を託した。そして息子は子供ながらも敏感にそれを察し、期待に答えようとしてくれた。人口蓄積知能施術の資格年齢に届かぬうちから勉強を始め、資格が得られる頃には頭の中で基本的な操縦マニュアルを把握していた。

 第二の“遠山雄二”が誕生する――そう期待は高まった。そして息子が十歳を迎える六月の末、人口蓄積知能施術を受けさせた。それで未来は約束されたようなものだった。だが私は黙っていられなかった。逸早くこの目で機体に搭乗した息子の姿を見てみたい、その思いは膨れ上がり、ある日息子を格納庫(ハンガー)へ連れて行った。そして搭乗だけという条件で私が監督のもと、息子は特別に機体に乗せてもらった」

 呉羽管理部長は一旦そこで話を切り、コーヒーを口にしてから話を続けた。声のトーンが下がり、表情も影を帯びる。

「それが間違いだった……そのうちいつまでも降りてこようとしないことを不審に思った矢先、起動音が唸り息子が乗った機体は浮き上がり、格納庫から飛び出して行った」

「……」

 呉羽管理部長は視線をテーブルの上にあるカップに落とすと、それからゆっくりとした動作で目線と顔を上げた。そして何処となく視線を漂わせたあと、一点で静止した。そこから過去を眺めているようだった。

「どうすることもできなかった。あの素直で逆らうことなどなかった子が私の言うことを聞かない……息子を叱り付ける私の怒鳴り声は、ヘッドセットのマイクから一方的に息子が乗っている機体の通信機に放たれるだけで応答はなく、その暴走を止められなかった。さらにはその機体を担当した整備士から燃料が残り少なかったことを知らされ……それが凶となった。管制官の一人と協力して息子の機体の居所を突き止め発見した後、私からの何度もの警告にやっと息子が応じた時、息子の声は……」

 呉羽管理部長は言葉を詰まらせ掌でひさしを作り、その表情を隠した。

「……」

 その時のことを思い出し、感情が込み上げて来たのだろう。この後彼の息子がどうなったのかは察しがつく。

 呉羽管理部長は少し間を置いてから深い嘆息で気を静めてから話を続けた。

「息子は泣いていた。『助けて』――そう叫び。雲に覆われていたのだろう。辺りは真っ白で何も見えないと、何処にいるのかわからないんだと、燃料を使いきって……その先を言い終える前に墜落した」

「――……」

 涙が頬を伝ったのは自分だった。何に共感したのか分からない。哀れな最期を遂げた呉羽管理部長の息子になのか、最愛の家族を失ったことを嘆く呉羽管理部長になのか。分からなかったが、我がことのように悲しかった。何かを重ねていた。涙が込み上げる。放心したみたいに手放しで涙を流すオレの頭に手が添えられた。その呉羽管理部長の手がオレの頭を抱き寄せる。


 温かかった。

 懐かしかった。

 ほっとした。


「息子は私の利己的願望の犠牲となった。こうして抱き締めてやることもできない。それなのに私は……」

 呉羽管理部長の強く噛み締めるような言葉には後悔の色が滲んでいた。苦しいほどそれが伝わり、オレの胸を締め付ける。

「私はまた過ちを“繰り返そうとしている”……」

「?」

 オレは疑問を浮かべるとともに抱擁の手を緩めた。無意識に呉羽管理部長の背中に回していた手を離す。

「許してくれ……」

 呉羽管理部長の呻きにも諦めにも似た声が――

「君を“試してしまったことを”」

 掠れた。

「試した?……どういうことですか?」

 オレは怪訝そうに眉を潜めて呉羽管理部長を見詰めた。

「君の実力を試そうと、あの現場に君達を配置したのは私なんだ」



「……」

 オレの頭の中がまっ白になった。

 驚くという感情は姿を消す。

 まるで第三者の視点になっていた 。


 冷静に結論を出す。





 総てが計画されていた――と。



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