第一章:誓い
零号士――通称“ゼロ”。それは危険作業を専門業務とする飛行士のこと。オレの父はその一員だった。
「零号士はなぁ、決して死にたい奴がなるわけではないし、立派な仕事なんだぞ。隕石の処理だけではなく、今では住めなくなった地球を定期的に回って回復の点検やその手助けもしたりするんだ」
「地球って昔、人が住んでたんでしょ?」
「そうだぞ」
「いつ住めるようになるの」
「そうだなぁ、父さんみたいな零号士が増えてもっと地球が回復したら行けるかもな」
「それっていつ〜?」
父はオレが十歳の時、隕石の処理業務中に消えた。音信が途絶え生存が確認できなくなり、生命維持装置の制限時間がすぎ――死亡が成立し……
『地球旅行へ行く』
それが父の夢だった。それを実現させようと零号士になったのだと。
オレはその翌年火星コロニー防衛パイロット養成施設に入った。そこは十歳以上の健康体であれば誰でも入ることができ、入ったものは皆脳に知識を埋め込む施術が施される。その費用はコロニー政府で一部援助されたが、残金はパイロットになった時の給料から差し引かれる事になっていた。
しかし、その費用は莫大で年齢制限が無いとは言え軽い気持ちでなれるものではなく、そこに入った当時オレは最年少として一時騒がれた。
『パイロットは化学兵器だ』
などと言われてもいたがオレにとってそんなことはどうでもよく、パイロットになっていつかあの星へ行きたかった。その星がいつか生まれ変わることを信じ、宇宙の塵となって消えた父の夢を叶えるためにオレはパイロットになる。そう誓った。
※この時はまだ主人公の響は零号士になるとは決意しておらずビジョンは不完全な形であり、さらにこれが彼のスタートライン(零地点)に立ったという意味を込めて今作のタイトルを「零の誓い」にしたということにしました。




