第六話 野営
ーーソウ一行は村へと歩みはじめていた。
「親父ぃ、今こそフライバエの形態変化を使いこなす時が来たようだな! このオレのフライバエを!」
「ソウ、お前、切り替えが早すぎねえか。人が死んでるっていうのに……。」
「悪いな、ラルク。こいつはこういう奴なんだ。気にしないでくれ。じゃないと、こいつの空元気がバレてしまうからな。まあ、あんまりしみったれるのは俺も好きじゃない。ラルク、お前もあまり思い詰めるなよ。」
「ゲンさん、あんたなんか変わったな。その、いい意味でだけど。」
「お? そうか。まあ、そりゃこいつの面倒見てたら、大概どうでもよくなるわな。」
ゲンはソウの頭を、わしゃわしゃとガサツに撫でた。
「おいっ、クソ親父、やめろよ!」
「あっ? 誰がクソ親父だ! このガキャ!」
(あー、また始まったよ、この親子。まあ、それだけ仲がいいってことなんだな。)
ラルクは二人を俯瞰して見ている。
二人の様子を見ていると、ヤンと馬鹿をやっていた頃のことを思い出した。
「にしても、あんたら相も変わらず遅刻するよなあ。まあ、今回はそれが正解だったとは思うが。」
ーー親父、見てろよ。フライバエだ!
「わーった、分かった。あとで見るからな。まあ、遅刻したのはそういうことだ。こいつがお寝坊さんだからよ。これからだが、俺らは飛んで向かおうと思うが、お前は飛行能力持ちか?」
「ああ。まあ、高度は出ないが一時的には飛ぶことはできる。ただ、エネルギーが足りないな。脳でイメージしようにも疲れが先に出て、頭が痛い。これ以上やると、こっちの身体が持ちそうにない。」
「なるほどな。分かった。おい、ソウ! フライバエはやめだ! 歩いて村まで帰るぞ!」
「え〜、嘘だろ。掴みかけてたのにー。まあ、仕方ねえか。じゃあ村まで距離あるし、今日は野営する感じ?」
「そうだな。俺らが使ってた所まで行くつもりだ。んで、夕方には歩いて着くはずだから、道中は気を付けつつって感じだ。」
「ゲンさん、別に俺のこと置いていってもいいんだぜ?」
「そういうわけにはいかない。仲間を見捨てるのは御法度だからな。ほら、こんな所でだべってても仕方ねえ。行くぞ、二人とも。」
「分かった。迷惑をかける。」
「はーい、いきやっせー。」
腑抜けた態度でソウは返事をするが、ゲンは気にも留めず、元いた野営地の方向へと足を伸ばした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして三人は、他愛もない話をしながら野営地へと到着したーー。
「さすがに腹が減ったな。」
「そういやラルクさ、バガールは狩れたの?」
ソウはジト目でラルクを見る。
「あ? 今、お前俺のこと馬鹿にしてんな。当たり前だろ。サクッとな。獲物は持ち帰ることはできなかったが、あんだけいたら食料問題も一月以上は持ってただろうな。」
「ふーん。老け顔なのに意外だね。」
「ソウ、テメエ、こんにゃろ!」
ラルクはソウの頭を小突こうとしたが、ソウはひょいと避けて逃げていった。
ラルクも負けじと追いかけ、二人はぐるぐると追いかけっこをしている。
そんな中、ゲンは近場の川で魚を数匹捕まえ、木の串に刺し、焚き火のある場所に魚の身が焼けやすいよう配置していく。
すると、「ジューツ」と音を立て、皮が焼けてカリカリになり、いい匂いが漂ってきた。
追いかけっこをしていた二人は、ぴたりと動きを止め、ゲンの元へ向かっていく。
「めちゃくちゃいい匂いするー。」
「ゲンさん、魚取ってきてくれたんだな!」
二人は焼き魚の刺さった串を取ろうとする。
「まあまあ、落ち着け。二人とも。逃げたりはしねえんだからよ。」
「そうだけどよ、こんなに美味そうだと腹が減りすぎてやばいんだ。」
隣にいるソウは、「そうだそうだ」と頷く。
(こいつら。こういう時だけ波長が合うな。)
「わーった、わかった。じゃあ、まずこの魚についてだが、こいつは……。」
「「いっただっきまーす。」」
ーーぱくっ。もぐもぐ。
「あ、お前ら。人の話を聞かずに……。この魚はな、ホネウオと言って、とにかく骨が多い魚なんだ。だから、そんなにがっついて食べたら、口に刺さるぞ。」
「「口、痛ってーーー!!」」
「あー、言わんこっちゃない。欲張りすぎだ。こいつはな、まず普通の焼き方はしねえ。わざと焦がすくらい焼いて、皮の下の微細な骨を取り除くんだ。まだ、その焼き加減だと足りてないからな。」
「「早く言ってよ!!!」」
「いや、お前らが勝手に食べるからだろ。」
ゲンは呆れた様子で二人を見つめた。
二人は喉に骨が刺さっただのと大騒ぎし、実にせわしない。
そうして三人の狩人は食事を済ませた後、葉を敷いて床に就くのだった。
――ソウ・・・ソウ! ・・・・起きろ!!!
(う、ん……まだ眠いよ。)
目を覚ますと、爽やかな朝の中、こちらを見下ろす二人の狩人が仁王立ちしていたーー。
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