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グリーン・インパクト 〜銀河で輝く生命体〜  作者: 未来が見えない
第一章 交錯する世界

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第五十二話 レベル1の村

 南西へと歩き続けた俺たちは、ようやく水源地から流れ出る川を発見した。浅瀬に揺れる影――シクティスの群れを見つけた瞬間、空気が変わる。全員が同時に動いた。叩き、掬い、投げる。泥水を跳ね上げながら、ただ無我夢中で狩り続ける。気づけば岸には、明らかに過剰な量の獲物が転がっていた。


「……やりすぎたな」


 誰かが呟く。だが、その声には後悔よりも安堵が混じっていた。これだけあれば、しばらくは持つ。そう思わなければ、不安に押し潰されそうだった。


 川を越え、森へと足を踏み入れる。湿った土の匂いが鼻をつき、足元には絡みつくような草と根が広がる。枝葉の隙間から差し込む光はまだらで、どこか不安を煽る。木々がざわめくたびに、誰もが無意識に身構えていた。それでも、足を止める者はいない。ただ前へと進み続ける。


 どれほど歩いただろうか。不意に、視界が開けた。森が途切れ、ぽっかりと空いたような空間が現れる。風が通り抜け、草が静かに揺れている。その場所は、あまりにも都合がよすぎた。まるで最初から、ここに「拠点」を作るために用意されていたかのように。


 俺は足を止めた。胸の奥で何かが静かに鳴る。ここだ――理由はない。ただ、そう確信した。


 振り返ると、仲間たちは限界だった。地面に手をつき、肩で息をする者。倒れ込むように仰向けになり、空を見上げる者。誰もが無理をしてここまで来た。その顔には疲労が色濃く刻まれている。それでも、誰一人として文句は言わなかった。


「ここなんじゃな……」


 ヤンガがぽつりと呟く。その一言が、空気を決定づける。俺は静かに頷き、仲間たち一人ひとりに視線を向けた。ソウは荷台の上ではしゃいでいる。だが、その動きはどこかぎこちなく、笑顔の奥に影があるのを、俺は見逃さなかった。


「みんな……」


 声を出すと、自分でも驚くほど重かった。


「ここまで、本当に大変だったな」


 胸の奥に押し込めていた感情が、少しずつ溢れ出す。


「ついてきてくれて、本当にありがとう」


 静かな言葉だったが、確かに届いた。


「とうとう、着いたのね……」


 ヤンダが力なく座り込み、そう呟く。ジャンヌもその場に崩れるように腰を下ろし、「やっとかよ……」と苦笑した。その表情には、限界と安堵が入り混じっている。


 俺は一歩前へ出る。


「ここから、新しく始まる」


 風が止まったような錯覚が走る。


「村を作り直す。この何もない土地を、俺たちの手で再生する。時間はかかる。簡単じゃない。それでも――やるしかない」


 全員の視線が集まる。


「俺たちは……ほとんど全てを失った」


 言葉にした瞬間、胸の奥が焼けるように痛む。


「村も、仲間も、家族も……全部、奪われた」


 拳を握る。爪が食い込む感触が、かろうじて意識を繋ぎ止める。


「俺たちは何も悪くなかった。ただ、生きていただけだ。狩りをして、分け合って、笑って……それだけだった」


 静まり返った空気の中で、声だけが響く。


「だから――許せない」


 低く、重い言葉だった。


「また来るかもしれない。その時は……今度こそ、仕留める」


 ゆっくりと仲間たちを見渡す。


「そのために体制を整える。狩猟班、食料調達班、索敵班、巡回班、門番……役割を分ける。もう二度と、不意を突かれないために」


 誰も口を開かない。ただ、強く頷いている。


「今日は休め。明日から家を建てる」


 その一言で、張り詰めていた空気がわずかに緩んだ。


 人々はゆっくりと動き始める。葉を集め、枝を折り、寝床を作る。ぎこちない動きの中にも、自然と助け合う姿があった。その光景は、失われた村の記憶を微かに呼び起こす。


 俺はソウの元へ歩み寄る。


「楽しかったか?」


「……うん、たのしかった」


 わずかな間。その違和感に気づく。


「無茶するなよ」


 頭を撫でると、小さく頷いた。その仕草が妙に頼りなく見えた。


 その夜、俺たちは地面で眠った。葉の柔らかさと土の冷たさが混ざる、不安定な寝床。目を閉じても、すぐには眠れなかった。焼け落ちた村の光景が何度も蘇る。


 それでも、疲労が思考を押し潰す。やがて意識は闇へと沈んでいった。


 目を覚ますと、空はすでに青かった。湿った空気が肌にまとわりつく。森の音が一斉に響き、世界が変わらず続いていることを突きつけてくる。


 仲間たちも起き上がる。疲労は残っている。それでも、その目には昨日とは違う光が宿っていた。


「……やるか」


 俺は立ち上がる。


 木の前に立ち、形態変化で刀を生成する。黒と光の粒子が集まり、刃を形作る。その瞬間、体の奥から力が抜ける感覚が走る。


「……重いな」


 それでも振り下ろす。一閃。幹が裂け、重い音を立てて倒れた。腕に伝わる衝撃が、現実を強く刻み込む。


 支柱を作り、地面に打ち込む。枝を組み、葉を重ねる。単純な作業のはずなのに、体が思うように動かない。それでも、手を止めることはなかった。


 やがて、小さな小屋が形になる。粗末で、不格好で、頼りない。それでも確かに「形」になっている。


 周囲を見渡すと、皆も同じように小屋を作っていた。誰一人として手を止めていない。


「……ここからだな」


 自然と声が漏れる。


 何もない。だからこそ、積み上げられる。全てを失った。だからこそ、取り戻せる。


 この場所は、まだただの空き地だ。


 だが――


 ここには、人がいる。


 生きている者たちがいる。


 ならば、いずれ必ず。


 ここは、俺たちの“村”になる。


<村の発展度>

 村:レベル1

 質素な小屋

 いつでも攻められる




いつもお読みいただきありがとうございます。皆さまからのブックマークや高評価が、執筆の大きな励みになります。これからも楽しんでいただけるよう精一杯書いていきますので、引き続き応援よろしくお願いします!

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