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グリーン・インパクト  作者: 未来が見えない
第一章 交錯する世界

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第四十四話 風林火山は子々孫々

 少女は俺に向かって手をかざす。すると俺の背後にゲートが出現した。


『あなたは、この長い長い時の中で初めて私たちとつながった人間。生命核(バイオコア)はあなたを見ています。さあ、ゆくのです。』


 少女の主語が変わったのが疑問に思ったが、まあいい。体はゲートへとゆっくりと自由落下し、黒い空間から意識が現実に落ちるように、はっきりとしていく。


 ガニメデは、独り言をぶつぶつと言っていた。


「カハハハ、まったくタイムスリップなんかやめときゃよかったぜ……しかし、このデバイスにインストールしたナノファブリケータの奴はすげえな。瞬間的に昔ながらの銃火器を製造できるなんてな。まあ、エネルギー補填しとかないといけねえのが難点だが。生成まで、また充電するのに時間が掛かりそうだな、ダルすぎだぜ。」


 肩をすくめながら笑う。ふと、ガニメデは氷塊を見た。


「せっかくゲーム感覚で撃ち殺せてたのに残念だ。……あ?なんだ?氷漬けにしたヘンテコ野郎が一瞬光ったような?気のせいか……」


 氷漬けになった俺は、氷塊の中で脈動する。顎は砕けて本来なら即死するはずだろうが、かろうじて息をする。氷塊の中でゲンをまばゆい光が包み、発光する。強烈な光とともに氷は昇華し、水蒸気となって霧散していく。


 目を開く――


 ――バコォォン!!


 再生し、再構築された俺の体は真紅の甲冑を纏い、残った氷塊をぶち破った。


「なん、だ……殺したはずだぞ……その姿はなんだ!」


 ガニメデは、死んだはずのゲンが生き返ったのを凝視する。俺は首をポキポキと鳴らし、笑いながらガニメデに言う。


「お前を殺すために地獄からやってきた。最高の武将と共にな。起死回生、こんなところで死にきれねえから、お前の首を取り、その背後にある王国を手中に収め、天下を取るんだよ。」


「クハハハハッ、カカカ、面白いな、お前。俺のアッパーがよほど効いたんだな、頭がイカれてやがる。ったく、英雄ごっこの真似か?教科書に載ってる古い歴史の人物を真似したところで、お前は俺には勝てねえよ!」


 ガニメデは俺めがけて、冷気を収束した氷塊を放つ。「死ね!」と、叫び放たれた氷塊は、加速度的に周囲を凍てつかせながらこちらに飛来する。


 俺は創造する。


 歴史上の人物――甲斐の戦国大名、武田信玄が腰に下げた愛刀、来国長をイメージする。肩から腕へと伝わっていくように形態変化し、手中へと太刀が生まれた。


 右手で握りしめた無骨な陣太刀。打刀としての真髄。淡い赤色の鞘に、抜くとギラリとした刃身。


 即座に抜刀から振り上げ、袈裟斬りをお見舞いする。氷塊は、あっさりと割れて砕け散る。扱ったこともないのに、馴染み深かった。


「あ?なんだ、ちっとばっかしやれるようになったみたいだなあ?じゃあ、本気でやっても大丈夫だよな?」


 ガニメデは口元を歪める。そして、地上に氷をぶち撒け大波を造り出し、飛び移る。まるでサーフィンをやるかのように宙で氷を出現させて移動する。ガニメデは移動しながら、氷の粒を飛ばしてくる。実に不愉快。だが、すべてを叩き切り意味をなさない。


「この程度か?」

「ああ?煽ってんのか?雑魚が!」


 ガニメデは高度の高いところで特大の氷塊を生成する。


「なあ、お前未来人なんだろ?記憶で垣間見た世界は想像を絶したが、こんな言葉は知っているか?動かざること山の如し――」


「知るかよ!!!」


 ガニメデは特大の氷塊をぶん投げる。俺は物おじなんてしない。真紅の甲冑に赤黒い大楯のような物が生える。防御時にどっしりとした構え。まるで山のように、何があっても動じない確固たる信念という奴だ。ただ受け止めるのみ。


 投げられた氷塊を受け止める。大楯にガガガと氷塊が削れるように当たるが、俺は腰を反らせながら動じずに受け切った。そして、受け切った氷塊を投げ捨てる。


「――コイツ、クソが」


 ガニメデが高度の高い場所に作ったアーチのような氷の構造物の上で悪態をついているのが見える。


「じゃあ、こんな言葉はどうだ?其の疾きこと風の如く」


「ああ?だから、知らねえって言ってんだろ、馬鹿が――」


 ガニメデは俺を見下しながら言っているのが見て取れた。


 まあ、見とけとよ。大楯の防具を解き、フライバエの羽を赤い甲冑のような材質で背中に生やす。そして、ガニメデへと迫る。奴が次の言葉を吐こうとした瞬間、俺は奴の眼前へと迫った。


「あえ?」


 ガニメデは、一瞬で距離を詰められたことと、はるかに高い場所へ一瞬で来たことから、地上と俺を見比べ、間の抜けた顔をしている。


「この言葉はどうだ?侵掠すること火の如く。」


「だから――」


 俺の腰に下げた来国長は鞘の中で業火のごとく燃えたぎる。刀の柄を右手で握り、左手の親指で鍔を押し上げる。刀身が隙間から見え、熱した鋼のように赤く染まっていた。


 ガニメデを見据えて構え、居合抜刀。横一線で斬撃を見舞う。赤熱した刀の軌跡は、上から見ればまるで夕暮れの太陽のように綺麗な半円を描いていた。


「ガハッ」


 ガニメデは咄嗟に両腕で氷を生成しながら、腕をクロスするように防御した。しかし、防御を貫通し、両腕が切断され、胸に焼けた斬線が走った。


「お、お、俺の腕がああああああああ!!!!!クソがクソがあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


 断末魔の叫び、目が見開かれる。ガニメデは頭に血管が浮き上がり、茹で蛸のようにブチ切れている。


 俺はゆっくりと笑う、気分がいい。

 だけど、こんなもんで終わらせるつもりはない。


いつもお読みいただきありがとうございます。皆さまからのブックマークや高評価が、執筆の大きな励みになります。これからも楽しんでいただけるよう精一杯書いていきますので、引き続き応援よろしくお願いします!

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