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グリーン・インパクト  作者: 未来が見えない
第一章 交錯する世界

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第四十一話 銀の凶弾

 ――パァン!――パァン!!


 村中に響く乾いた音。悲鳴も聞こえる。早く二人を助けに行かないと。冷や汗が額を伝っていくのが分かる。


「秒で片付けてやる!」


 俺は大剣を防御していた体勢から構えを変え、リザードマンへと距離を詰める。リザードマンの前に淡く光り出す無数の何か。そしてそれらが固まり、結晶壁が出現する。


 そんなもので俺の攻撃を防げると思ったか!


 俺は上段から縦に大きく腕を振り下ろす。


 ――バキバキッ


 刃先が結晶壁にめり込み、バキバキと音を立ててそれをぶち破る。これにはリザードマンも驚いているようだった。無口な野郎だぜ。もっと大声で喚いてみたらどうだ?


 さぞかし楽しかったんだろうな、村の民を殺してくれてよお! お前ごと叩き斬る!!


 振り下ろした大剣を構え直し、横一線に薙ぐ。リザードマンは杖の結晶を使えず、杖の柄で受け止めようとした。


 馬鹿が。そんな棒切れに俺の大剣が通らないとでも思ったのかよ?


 ――バツン


 気づいたときには、リザードマンの上半身と下半身は離れていた。宙に舞っていると錯覚したのは、自分が斬られたと理解した瞬間、地に伏せたときだった。


「急がねえと――」


 倒れた下半身を一瞥し、家の方向へ向き直る。俺はフライバエの形態変化で背中に二枚の羽を生やし、超速で家へと羽ばたいた。


 大丈夫であってくれ、大丈夫であってくれ。


 家の目の前まで辿り着く。まだあちこちで悲鳴が聞こえる。くそっ、全てを救いたいが、俺にだって守りたい者がいる。


 ――ギィ


 扉が開く。その先にはリンがソウの手を引いて出てきた。どうやら窓際から外の様子を窺っていたようだ。


 良かった、無事みたいだ。


 だが、ここもいずれ危険になる。村長の家でみんなを退避させよう。あそこは広いし、村の民が避難するにはもってこいだ。


「良かった、二人とも無事で」

「ええ、ゲンも無事そうで良かったわ。それより、この騒ぎは何?」


 リンは心配そうな表情をしている。後ろで手を引かれたソウも不安げだ。


「ああ、色々と村長と話してな。もしかしたらこの騒ぎにも関係しているかもしれない。それで、トカゲみたいな人間たちが俺らを襲ってる。何を言ってるか分からないが、ここにいたら危険だ。村長のところまで向かうぞ。二人はそこで避難しててくれ。俺は村の民を助ける。」


「でも、ゲンは大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫だ。さっき村の青年が襲われてたから助けてやった。だから対処も何となく分かる。俺がこの村を守るんだ。」


 先程のリザードマンを思い出す。あれは簡単には勝てない。村の民では苦戦するはずだ。狩猟特化で生きてきた俺たちに奇襲を仕掛けてきている時点で、詰まされているようなものだ。くそっ、気づけなかった俺のミスか。


「村を守るため……ね。それなら良いけど……って、ならないわ。ようやくまた三人で幸せを噛み締めてたのに……。ゲンが強いのは知ってる。けど……ゲンが一人で背負わなくても……私も出るわ。」


 リンの表情が曇り、俺を見つめて力強く言う。ソウは指を口に咥え、二人を見ている。


「ダメだ、リン。お前はソウの面倒を見るんだ。」

「ゲン……あなたね、私だって狩りに出てたのよ? ソウだって大きくなってるんだから、村長のところで見てもらえばいいじゃない。」

「それもそうだが、俺は……リン、お前に危ない目に遭ってほしくなくてだな……。まあ今はよそう。ここは危ない。村長の家まで向かおう。」

「それもそうね。ソウのことも考えないとね。」

「よし、行こう。」


 俺たちは村長の家へ向かった。その間にも戦火は広がっている。戦う音が村中に響き、不穏な空気が続いている。


 俺が先頭、その後ろにリンとソウ。


 急がねえと――。


「ねえ、やっぱり私も戦うわ。」

「その話は着いてからにしよう。」


 俺はリンの方を向いていた顔を前に戻し、歩みを進める。しかしリンはなおも訴えかける。


「私ね、あなたに守られて嬉しい。でもね、ゲン、あなたのことが心配なの。それにソウにとってあなたの代わりはいない。私にとってもそう。いつも狩猟に出てるんだから、たまには私も。私とあなた、両方とも欠けちゃダメなの。それに、この子もあなたに構ってほしいはずよ。この子が大きくなったら、三人で狩猟もできる。この子は私と一緒にいて、かっこいいあなたの背中は見られないでしょ?」


 俺は歩みを止め、リンの言葉を一つ一つ胸にしまい込んだ。


 その時だった。


 ――パァン!!


「だから、二人で守ってあげ――――」


 村長の家を出てから何度も聞いた乾いた音。リンの言葉が途中で途切れる。


 悪寒が走る。全身に鳥肌が立つ。ほんの一瞬。


 俺は振り向いた。


「……っ!?」


 リンの額から血が噴き出している。脳が弾け、脳漿が飛び散る。リンのそばにいたソウの全身に血がかかる。ソウは呆然としている。


 リンは手を差し伸べるように、そのまま倒れた。


「ガっ……」

「リン!!」


 俺は駆け寄り、リンの身体を抱き上げる。血が服に滲み、温かい。理解が追いつかない。


 何でいきなりこんなことに?


 落ち着け。落ち着け俺。


「おい、リン!! リン、起きろ!! どうしたんだよ!!」


 何が起きているのか分からない。


「……あ、い……し、てる……」


 リンが残りの力を振り絞る。


「待て、待て、大丈夫だ……大丈夫だよ……なあ? うそだろ……なんで……。俺も……愛してる……リン……。ゴメン……頭が真っ白で……何が起きてるのか……」


 腕の中で、リンの熱が失われていく。瞳孔が開き、その瞳に俺が映っていた。


「わああああん」


 ソウが大粒の涙を流して泣き叫ぶ。


 俺が守らないと。


 リンのそばに銀色の何かが落ちていた。血がこびりついている。リンを地面にそっと寝かせ、それを拾う。


 何だこれは……? これがリンをやったのか?


 ――そのとき、茂みから誰かが現れる。


「おいおい、女子供だけかと思ったのに、男もいるじゃねえかよ。せっかくのご褒美タイムが残念だぜ。」


 見たこともない異様な姿の男。村を襲ったリザードマンとも違う存在。


 水色の坊主頭、巨躯。見たことのない服。右手には黒く細長い、手に馴染みそうな武器。


 異様な佇まいに、静寂が落ちた。


いつもお読みいただきありがとうございます。皆さまからのブックマークや高評価が、執筆の大きな励みになります。これからも楽しんでいただけるよう精一杯書いていきますので、引き続き応援よろしくお願いします!

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