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非常に暗い話になるかもです。

103年 ある戦場の丘


「我は孤独の戦士。 友の死、家族の死を乗り越え、世界を守るために戦い、生き抜いた」


 青き鎧を身に纏い、すらりと長く伸びた剣を持ち、人一倍体格のある青年が、空に向かい言い放った。

 その声は、空高く届き雲を振動させた。


「しかし神よ、貴方はなぜ私に休息を渡さない。 私はここまで戦い、生きてきた。 

 何人もの人間を殺し、生き物を食らい多数の罪を犯して来た事は認めよう。

 なぜ私はまだ生き続け、戦い続けなければならない」

 

 神は返事に答えなかった。そもそも、神は存在すらしていなかった。

 しかし、彼の心の中に巣食う魔物は、一字一句もらさずその言葉を聴いていた。そして、受けようとしていた。

 彼は、彼自身の中に巣食う魔物を無意識に神として崇めていた。

 其れ即ち、自分自身に自問自答しているのと同じだと言う事に気が付かずに。


「私はこの世界で生きる事に疲れた。私はこの場で命を絶とう」


 天に向かって突きつけていた剣を持ち変えると、彼は自分で自分の喉を突き刺した。

 鮮血が勢いよく吹き出し、彼の目に赤き空が映った。その空の色は彼の見た最後の風景だった。



 ――青き鎧は血を浴び、赤き鎧へと染色されていた。



 彼は自分の心の中にいる魔物ではなく、自分自身の「本心」に逆らわずに命を絶ったのかもしれない。

 しかしそれは、彼のみぞ知る、一人の人間の終焉だった。


 ………………………………………


 215年・レンドエレイ


 とある街に一人の青年が居た。名は「ヘイス」という。人一倍正義感が強く、人一倍真面目であり、人一倍馬鹿だった。

 彼は昼間は猪を狩りに狩猟に出かけ、夜は親と過ごす。この街で言えばごく普通な人間であった。

 

 とある、天気のいい日だった。絶好の狩猟日和だな、と彼は獲物を探していた。

 弓と矢と、罠を作るための縄。たったそれだけを持って彼はいつも通りに外へと出かけた。

 水なら小川がある。食料はその場で調達すればいい。彼はそういう考えをしていた。

 

 今日はいつもの狩り場とは違う、少し遠くの森へやってきた。ここへ来るのは初めてではない。何度も来ている。

 そう思うと、彼は弓と矢を取り出し、獲物を探しに出かけた。

 その森は、木陰が気持ちよく木漏れ日は暖かく、休息を得る所としても人気があった。

 この森の動物達は皆穏やかな性格を持ち、全ての生物に愛されている、そして信頼を得ている。

 そう言うに相応しい、まるで女神が降り立ち、そう問いただした様な空間だった。


 ところがこの日は違っていた。 真昼間だというのに木洩れ日は無く、ひどくじめじめとした空気になっていた。 雨が降ったから、と言うわけでもない、何かがおかしいとヘイスは考えた。

 ここ数日の間、雨は降らなかったはず。彼はそれを思い出し、森の更に奥へと向かった。

 その森はたとえ雨が降った後でも不思議なほどすぐにいつも通りになる。 風の通しがいいだからとか、太陽の光ですぐ乾くだとか、そういうものではない。

 

 この森は何かに守られている。そういう話が伝承されている。 森の奥にはその「何か」を祀る祠のような物が立てられている。

 ヘイスはその祠を見た事があった。 木で作られた、えらく簡素なものであったが、触れてはいけない物だということはわかっていた。


 森の奥に行くにつれて、ヘイスはひとつ疑問に思った。

 

「生き物達が、一匹もいない……」


 と、いうにしても細かく見回ったわけではない。 いつもならこれぐらい歩いていれば一匹やニ匹みつけてもおかしくはないはずだった。

 何か悪い事が起こっているのかもしれない。 ヘイスはそう考えるとあの祠のある場所まで向かうことに決めた。 祠に何かがあったとして、森の異変が起きているとしたら、と考えると何か胸騒ぎがし始めた。


 少し歩くと、ひとつの小さなくぼみのような場所に着いた。その真ん中には、祠が立っている。ヘイスは祠を見たが、その場所にあるはずの祠の姿がなかった。

 正確に言えば、祠は壊されていた。祠だったものの破片は飛び散り、まるで爆発があったかのように焦げ付いている木片もあった。


「これは一体……」

 ヘイスは、祠の会った場所に目をやると、かすかに光が放たれているように見える。

 その光は、徐々に弱まり、消えていこうとしていた。


 それを見たヘイスは何を思ったか光を逃すまい、とその光を両手で包み込んだ。


 光は、ヘイスの手のひらに捕まったかと思うと、光り、輝き始めた。


 

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