B級冒険者の仕事③
ノースはゴブリンを倒す為に魔法を使った。
今まで使うことをためらっていた召喚魔法を使って、クリスタルバッファローを召喚した。
そこまでは良かったのだ。
召喚したクリスタルバッファローが弾けた。
原因はノースが召喚に込めた魔力が巨大すぎて、クリスタルバッファローの身体が持たなかったのだ。
爆発したクリスタルバッファローを見て、ノースは呆然とし、アキナは目をキラキラと輝かせていた。
セイは目の前で起きた非常識にため息をつき、グルダットは我関せずで作業的にゴブリンを葬っていた。
グルダットが先日、クリスタルバッファローに襲われて、瀕死の重傷を負った時、ノースがヒールをかけ続けてグルダット傷を治してくれた。
その事をセイはギルド職員と酒場で話したのだが、誰も信じてくれなかった。なぜなら、ヒールという魔法が従来の常識であれば、痛みを消す程度のものだからだ。
今回の召喚獣が破裂するなんて非常識を誰かに言ってもきっと信じてはくれないだろう。
そう思うと、セイは再びため息をついた。
「さあ、そろそろ出発するぞ」
グルダットの掛け声で、一行は再びぞろぞろと歩き出した。
そして三十分後、ホーンラビットの出現場所へとついた。
ついた場所は膝下ぐらいまで草が生えた草原だった。
「セイさん、もうここにホーンラビットが出てくるの?」
「そうだよ、いきなり出てくるからね。気をつけるんだよ」
そうセイが注意した時だった。
「うわっ」
ノースにいきなりホーンラビットが襲って来た。
ノースは体をひねって直接当たるのを避けたが、角が腹に当たり一張羅のローブに穴が空いてしまった。
「俺の服〜」
「大丈夫よ、ノースさん。私がちょいちょいっと狩をして、お金を稼いで新しいのを買ってあげるんだから」
アキナは腕をぐるんぐるんと振る。
「アキナさん、襲ってくるホーンラビットを倒してください」
アキナがにやりと口角を上げた。
「チート、執行!」
アキナは草の上に座り、グズグズと泣いていた。
口を尖らせて拗ねている。
ノースはアキナの頭を撫でてあやしている。
その横で、グルダットが作業的にホーンラビットを狩っている。
彼女はホーンラビットを狩った。
襲ってくるホーンラビットをその拳で叩き潰した。
その数25。
アキナが借りた籠手は、ホーンラビットの血で真っ赤に染まった。
アキナはこの時、上機嫌だった。
「沢山狩っちゃった。これでノースさんに新しいローブを買って上げれるね」
「アキナ、ありがとう。なんと言うか、彼女からのプレゼントって、ちょっといいよな」
ノースもちょっと照れる。
一人、セイは厳しい顔をした。
「アキナさん、これじゃあダメですね」
「へ?」
「ホーンラビットは角が討伐証明部位なんです。でも、アキナさんが倒したホーンラビットは角まで砕けてしまって、一つも証明部位が残ってないんです。もう少し、力を抜いて倒してくれませんか?」
「うん、わかった」
それからアキナは極力力を抜いてホーンラビットをパンチした。
でも、ホーンラビットは爆発した。
撫でるように触って見た。
それでも爆発した。
指先で優しく突つくだけにした。
それでも爆発した。
100匹ほど狩り終えた頃、ギルドカードの称号に『ハンドレッドホーンクラッシャー』なる称号がついていた。
そしてアキナはホーンラビットは狩りを諦めた。
グルダットが3匹だけ狩って討伐部位の角を取り、アキナに渡した。
「私は悪くないもん。ホーンラビットが弱すぎただけだもん」
アキナはブツブツ言いながら帰り道を歩いて行った。
ノースは暗い顔をして後をついていく。
セイは歩きながら、きっと今日のことは誰かに言っても誰も信じてくれないよなあと思いながら、沈みゆく夕日を眺めてため息をついた。




