VSクリスタルバッファロー②
ひらひらとなびくマントを身体の横へ構え、ノースはクリスタルバッファローを待った。
クリスタルバッファローは近づくにつれ、その巨体を露わにした。
全長5mとはさすがに言い過ぎだが、それでもダンプカー程はあった。
やつの狙いは赤いマント。
興奮し、目が明らかに血走っているのがわかる。
「ちょっ、これ、無理っぽいんですけど」
「まだ逃げちゃダメよ。ギリギリまで引きつけて!」
アキナの大声での指示にノースは踏み止まる。
その距離あと5m。
「あ、やばい、無理!」
ノースはクリスタルバッファローを十分引き付けることなく走って逃げた。
それでもクリスタルバッファローはノースが先程まで立っていたところを全力で通り過ぎた。
クリスタルバッファローの通った後には疾風が吹き荒れ、それに煽られてノースはすっ転ぶ。
「無理無理無理無理!!!!」
ノースは叫び声をあげて逃げ始めた。
クリスタルバッファローはUターンをして再びノースに狙いをつけた。
スタコラさっさと逃げるノースに追いつき、歪曲した透明の角で彼を刺し迫る。
「いて!」
角がノースに迫る直前、ノースの足がもつれて転がる。
前回りをしながらノースはまたも逃げ切った。
「ノースさん、がんばれ〜」
アキナの無邪気で無慈悲な応援が響く。
ノースはそのまま膝をつき、天を仰ぎ見て両手の指を絡めて胸の前で組む。
その姿は神に祈りを捧げているかのようだ。
だが違った。
それは、神に懺悔をしている姿だった。
究極の緊張状態でノースは神に懺悔を始めた。
「ごめんなさい、ごめんなさい。神様。俺はこれからあなたの大切な世界をぶっ壊します。あの忌々しい牛と一緒に世界を火の海にします。俺のせいではありません。俺のせいじゃないんです。恨むならアキナを恨んで下さい。呪うなら、俺の彼女を呪って下さい。かみさま、本当にごめんなさい」
ノースの懺悔を心優しい神様が聞き届けていたとしても、目の前に迫るクリスタルバッファローが耳を傾けるわけもなく。
ノースはクリスタルバッファローの突進に吹き飛ばされてしまった。
「ノースさん!」
アキナが叫ぶ。
その声でクリスタルバッファローの次の獲物が決まった。
クリスタルバッファローはブルルッといななき、アキナ向かって突進した。
「キャッ!」
アキナは目をつむって無意識に拳を前方へ突き出した。
ボコッ。
鈍い音が響く。
ドコッ。
地響きがする。
アキナがゆっくりと目を開けると、腰を抜かした店員さんがいた。
そして額が大きく陥没した、クリスタルバッファローが倒れていた。
「あ、あたしってチート?」
誰も聞き取ることのできない呟きが草原の風に混じって溶けた。




