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オーダー・メイト(Order-Mate)~兼食の猟犬と偏食だらけのインフォーマ~  作者: 湖陽 照
第1章 彩流市編 ~二人の愛食者~

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#12 映画公開まであと ③ ~注文(オーダー)通りのバディ候補~

「私、どうしてもあの子にまた会いたい。

あんなキレッキレのアシスト、見たことある?」


「……絶対に却下です」


 目を輝かせる私の手を冷たく振り払い、顔をしかめる。


「どこの誰かもわからない人物を相棒に据えようなんてどうかしてる。

それに、今回は最近噂されている、連続誘拐事件が絡んでいるかもしれないという話です。人の犯罪は警察の管轄だ」


 彼は溜息を一つ吐くと、端末を操作し始める。


「我々ハンターが事件に深入りすれば、『越権行為だ』と毛嫌いされ、折り合いが悪くなる。

普段からお互いに干渉しないように心がけている手前、私たちはスポイラーの処理だけをすませて、速やかに手を引くべきです」


 私は床を蹴って抗議した。

 探しに探してようやく見つけた最高の相棒候補なのだ。ここで諦めたら絶対に後悔する。


「わかってるわよ! でも警察に任せたらあのバディ候補がどこかへ消えちゃうかもしれないでしょ! 

それに例の件、忘れてない? あの誘拐犯の男たちが持っていたパッチ型のデバイス」


 彼にも思うところがあったのか、口を開かずこちらをじっと見る。


「スポイラーが人間の指示に従うなんて、絶対あり得ないことでしょ?

もしあの時、誘拐犯達が持っていた道具が本物なのだとしたら――――、誘拐どころの騒ぎじゃなくなる」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 実は昨夜、支部に戻った直後、私はボスの元にパッチによるスポイラーの使役の件を話に持っていったのだ。

 隣にはセンジも一緒にいてくれて、私の拙い説明の後ろから、『ボス、確かに証拠はありませんが、彼女はこのような中身のある嘘をつけるタイプではありません。少なくとも組織的な犯罪の可能性を視野に入れるべきです』と、真面目にフォロー? の言葉を挟んでくれた。


 けれど――――あのカメレオン野郎には、操られた不自然な挙動や形跡など1ミリもなかった。

 現場に残されていたのはあのスポイラーの死骸だけ。


 肝心のパッチの存在を示す決定的な証拠までは、流石のロマ研の面々が街のデータを漁っても掴み切ることができなかったのだ。


「新居の掃除もせずに有給を取ったかと思えば……、初日からありもしない妄想をわざわざ聞かせに来たのか? ハンターでもないのにスポイラーとやり合った挙句、しまいにはペットのように飼いならすだと? そんな便利なものがあるなら今すぐお前に使ってやりたいぐらいだ! 

お前は休暇中の身だ、小説を書きたきゃ部屋で大人しく執筆してろ。いったい何本ペンが犠牲になるか分からんがな!」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 とまあ、全く相手にされなかった。

 怒声に占められた短い回想が、脳裏をよぎる。


「ボスは全く相手にしてくれなかった。ロマ研でも証拠が掴めなかったのなら、私たちが現物を手に入れてボスに突き付けてやるしかないのよ! 


警察が気になるなら、あいつらがもたもたしてる間に私たちが丸ッと全部解決しちゃえば文句ないじゃない! 何かヤバイ証拠が見つかったり、誘拐された人達がいたら、警察に匿名で情報を流してリークしちゃえばブッキングもないし完璧でしょ!」


 まくし立てる私の言葉に、センジが「相変わらずの暴論ですね……。ですが、匿名のリークか――――」と考え込んだその時。 


 その様子をニヤニヤと眺めていたSEが、凄まじい速度でタイピングを始めた。

 オタク特技の超高速サーチだ。ラボの大型モニターの画面が目まぐるしい速度で動く。


「ドゥルルル……ドンッ、特定完了! X氏が持っていた銃の独特な駆動音がセンサーに引っかかりましたぞ。場所は――――ウホッ! これはまたベッタベタな展開になってきましたなぁ、港湾地区のコンテナ倉庫エリアの何処か。さすがにこれ以上追うことは出来ないでござるが、誘拐犯のバンが逃げた方向とも完全一致。先回りするなら今ですぞ、サキ氏!」


「港湾地区……!? やるじゃんSE!!」


「任せろブラザー」


 バチッ! と、ハイタッチを決めるとソムリエが「宜しければこちらを……」と箱を手渡してきた。


「休暇中のハンター様――――いえ、バッジも特別カスタムの『インカ―マン000000(ロクゼロ)』も手元にない()ハンター様にはこちらがよろしいかと」


 箱を開けると、そこには一見するとスタイリッシュなカメラが収められていた。


「何これ、カメラ?」


「このような間に合わせしかご用意できず申し訳ありません。


――ですがこちらのカメラ、シャッターボタンを押せば、レンズ奥から強力なエネルギー弾が発射される仕様になっております。外見はただのカメラですから、万が一警察の方と鉢合わせることになっても民間人の私物として誤魔化せます」


「最高じゃん! カメラなら観光客のフリもできるし完璧ね!」


 渡されたカメラをガシッと掴んで喜んでいると、センジが不審そうに眉をひそめてソムリエたちを睨みつけた。

 

「……おい、お前たち。なぜそこまでしてサキに肩入れする?

自分たちの『ロマン(こだわり)』に一切の妥協を許さない、あの偏屈なロマ研が非公式の試作武器まで提供して」


 確かに。


 一見すると気さくでフレンドリーに見えるロマ研。

 だがしかし、その実、自分たちの独自の美学とこだわりに並々ならぬ執着を抱く、極めて気難しい職人気質の集まりだ。


 気に入らない相手も含め、基本的には完全に事務的な営業口調でビジネスライクに接するか、あるいはラボのドアすら開けず門前や別室でスタッフに対応させるような連中でもある。

 

 彼らがここまで他人の私情に首を突っ込むこと自体が異常だと、彼の目には映った。

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