プロローグ
不可視の化け物は確かにそこにいる。
――スポイラー、探知。推定、タイプ:機械種
透明といえども、ガラス越しに見る景色のようにそれは歪んでいた。すかさず弾を打ち込んでいく。
黒、黒、黒、黒――――――
弾痕から重苦しい黒がゆっくりと血管のように伸び、アレの輪郭を徐々に鮮明にしていく。
それと同時に、壊れかけの機械音が突如として耳を打った。
「ここだ」
ハンターとして日が浅いながらも、早々に相棒として手に馴染んできた銃に意識を集中させる。
溜めた力を弾丸に乗せ、撃つ――。
銃口から放たれた大きな黒球は、ホログラムの煌めきを纏って胸部を潰す。
悲し気な不協和音を上げながら、小さな火花がちらちらと散っていく。叫びきった一瞬、音が停止し、ドシャッとコンクリートに倒れ伏した。
僅かに乱れた呼吸を整えつつ、首を伸ばして様子をうかがう。
全てを飲み込む黒々とした線は、最後に放った弾に付随されたホログラムの残光にかき消され、次第に薄くなっていく。その代わり、そっとチークを入れるように線画の体躯が、申し訳程度に染められていく。
破損個所から覗かせる、それらしい鈍色の部品やコード。鋭利な鉛白の手足に、繋ぎ目からちらつく謎の露草に似た青の光。
目視で動かないことを確認したのち、腕に身に付けた端末を向ける。
――対象、フォックス00・ダッシュ、浸食率E+。問題なし。周囲の安全及び負傷者の有無を確認してください。
「ふぅー、終わったぁ」
回収班に連絡を入れ、大きく伸びをしつつ緊張を解いた。
直ぐに攻撃を仕掛けたお陰か、まだ色の吸収がそれほどではなかった。結果、存在が固定化されず碌に攻撃もしてこなかった。
決して、退勤して直ぐの時間帯にようやく取れた予約必須の東国風食事処【春夏冬】の限定パフェの為に速攻を仕掛けて終わらせた訳ではない。全ては市民の安全のためである。
「よし、これですぐに帰って報告書を書けば残業なしで帰れるよね! 待ってて私のパフェ!」
彼女、サキの足取りは小鹿のように軽やかだった。




