第7話
「あー、月涙石ね。そこそこ珍しい素材だね」
額の一部を赤くしながらメイカは月涙石をコロコロと手のひらの上で転がす。メイカの説明によると月涙石は月の魔力が長い時間をかけて結晶化したもの……アクセサリーに使える素材なんだとか。
あんまり理解できてないから、私は昨日のカフェでお茶を飲みながら『へー』としか相槌打ってるだけ。素材の組み合わせによる効果の増減とか聞かされてもね。そういうものなんだぐらいしか分からない。
「とりあえずは凄くレアな素材ってこと?」
「んー……今はってところかな。βじゃ確認できなかったけど、図書館での資料じゃ高山とかの標高の高い場所じゃ採取できるみたいだし。βの時も5個は見つけられてたかな?」
あと月明かりが当たる場所なら生成される可能性があるから、草原とかでも見つけられる可能性がある……確率としては宝くじ1等当たるより低いけれども。
βテストの時の発見例も偶々見つけたものが多くて、場所も決まって居なかったらしい。
「もしかしたら森だと見つけやすいのかな?月光草が生えてるところぐらいしか月光がよく当たらないし……月光草を採取する時に探してみてくれる?」
「別に良いけど。昨日の夜に取りに行った場所は多分無いと思うよ?他に無いかな?って探してて無かったから」
「それなら別の場所があるから大丈夫。あとゲーム的に日付が変わったら探した場所でも再配置されてると思う。割とリアルよりだから生成が確率な気もするけど」
「メタいなぁ……」
ちなみに昨日取ってきた月涙石はアクセサリーにしてくれるとのこと。ただ、初めて2日目の時点では扱うのが難しいから完成は待って欲しいとのこと。
「調薬やって裁縫やって……装飾品もやるの?手足りる?」
「別に問題無い。裁縫と装飾品はオーダーメイドにする予定だからね……薬に関しては拠点が手に入ればまとめて作れるから割となんとかなる」
なら文句は無いかな……とりあえず昨日取ってきた素材は渡したし。森に行ってまた素材集めてこよ。ハチ狩りハチ狩り。
「あ、そうそう。《着飾り》用のアクセサリーなんだけど、とりあえず店売りのを用意しておいた。性能イマイチだけどしばらくはそれで頑張って」
森へ向かおうとした私にメイカは10個の指輪を渡してくれた。指輪は木製で……まぁ、オシャレとは言い難いもの。効果を確認してみる。
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・魔除けの指輪
魔法威力2%上昇
▷説明
木で作られた指輪
魔除けとして作られるが効果があるか不明
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なんだろう。不安になるような説明やめてくれない?そう思いながらも私は指輪を着けていく。両手の指が埋まったね……木製だからか指輪の厚みがあるせいで指が動かしにくい。
「あー、値段安いから全部同じにしたけど。2つぐらい別の装飾品が良かったかな?」
「そうだね……親指使いにくいと採取しにくいからネックレスとかの方が良いかも……良い感じのってあるの?」
「ある。ギルドに行く道中に売ってるから一緒に買いに行こうか」
「OK」
私はメイカと一緒にギルドへ向かった。そして装飾品のお店で魔除けのピアスを買った。
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・魔除けのピアス
魔法発動速度2%上昇
▷説明
木で作られた耳飾り
魔除けとして作られるが効果があるか不明
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こっちも不安になる説明文だね……まぁ、無いよりマシだろうけど。ちなみに魔法発動速度は魔法を放つ時のタメが短くなる。まぁ、この%だとほんの気持ち程度らしいけどね。
「とりあえず全部付けて……魔法威力16%、魔法発動速度4%上昇ね。意外と良い?」
「ちなみに1番安い杖だと魔法威力10%上昇だから……指輪5個と合わせて20%上昇する」
訂正、あんまり良くなかった。だけどCAMも上がるからね……確認してみるとCAMが50も上がってた。
「あ、これ着けた分上がるんだね。《恋の一撃》の威力1上がって嬉しい」
「それで喜ぶのモモカだけだと思う……」
呆れた視線を感じるけど気にしない。とりあえずこれで装備無しからおさらば……早速モンスターを倒しに行ってこよう!
「あ、そうだ。午後ちょっと森以外に行ってもらうかもだから……一応覚えておいてね?」
「ん?了解」
その後、私は森へ。メイカはギルドの生産室へと向かった。
▷▷▷
「【ウォーターショット】!」
「ブゥゥン!」
私の魔法がポイズンビーに直撃する。lvが上がったのと装飾品のおかげで魔法の威力が上昇。まだ一撃で倒せてはいないけど当てるだけで体勢を崩させ、追撃を放つ間を確保できる。
「lvも15まであとちょっと……15になっても素材が集まるまでは帰らない方が良いかな?」
あんまり集め切れてないしね。お土産多い方が嬉しいだろうし……私がそう思った時だった。
ブブブブブ!!!
喧しい羽音が突然聞こえてきた。それと同時に慌てるような人の声も。
「お前!巣を刺激するなって言っただろうが!!何攻撃してんだよ!」
「しょうがないだろ!避けられた魔法が当たっちまったんだから!それより足を動かせ!」
「「「「「ビィィィィ!」」」」」
ガチャガチャと言う音も聞こえてくると茂みを掻き分けて2人のプレイヤーが飛び出してくる。そしてその後ろには……10匹以上のポイズンビーが追いかけてきていた。
「な、何々!?」
私は状況を飲み込み切れていないけれど走り始めた。立ち止まってたら絶対に碌なことにならないからね……とりあえず追いかけられている2人組とは別の方向に逃げたからターゲットが移っても少ないはず。そう思ったいた私だったけれど。
「「「「「ブゥゥン!」」」」」
「いや、多くない!?」
2人組を追いかけてきていたやつの6割ぐらい来てるんですけど!?《誘惑》と《着飾り》の効果で敵に狙われやすいとはいえ、巻き込まれただけで10匹ちょっと相手にするのキッツ!
「あの2人組……会うことがあったら文句言ってやる!」
とりあえずこいつら減らそう。逃げ回ってると他のモンスターたちも合流しちゃうし……何より向こうの方が若干速い。生えている木を上手いこと遮蔽にして仕留めていこ。
「出し惜しみ無し……【ウォーターショット】!」
私は1番近いやつに向けて魔法を放つ。魔法を受けたポイズンビーがふらついて、後ろのポイズンビーたちが衝突する。
「【ウォーターカッター】!」
その好奇を逃さず私は【ウォーターカッター】を放った。ポイズンビーの塊を横に一閃……【ウォーターショット】を受けてたポイズンビーは光へ変わり、3匹ほどのポイズンビーが羽や身体を切られてフラフラと飛んでいた。
「意外と【ウォーターカッター】有効?」
射程短いから使ってなかったけど、この状況なら範囲攻撃はかなり有効。動きを鈍らせるだけでも戦いやすくなる。
「「ブゥゥゥン!」」
「わっ!危ない!」
私がしゃがむと2匹のポイズンビーが通り過ぎる。腹部の針を向けてきてたからしゃがんでなかったら顔に刺さってたね。
「女の子相手に顔面狙い……なんて恐ろしい」
ドッジボールでも許されない行為だよ。私は通り抜けていったポイズンビーたちに【ウォーターショット】を撃ち込む。それと同時に私はストレージからバットを取り出した。
「ブゥゥゥン!」
「ふん!」
魔法を撃ってる隙を狙って飛んできたポイズンビーにバットを振り下ろす。《着飾り》の効果で今の私が武器を装備すると50%性能が落ちてしまう。でも半減なら私のように近接をカバーする程度なら問題無いし……
「飛んでる虫を落とすなら99%低下でも使えるからね」
必要なのは質量。ダメージが入らなくても殴られたノックバックくらいは入るでしょ。丸めた新聞紙で叩かれても衝撃は起きるんだから。
「【ウォーターショット】」
「ブ……!」
地面にはたき落としたポイズンビーにトドメを刺す。幸い、ポイズンビーたちは羽音のおかげで不意打ちに気付きやすい。バットで魔法の後隙をカバーできれば対処できる…………ワーカーはね。
「「「ブゥゥゥン!」」」
「問題はポーンだよね」
3匹のポーン。こいつらは戦ったことないからどうなることやら……ま、やれるだけやってみよう。私はバットを肩に担ぐようにしポーンたちを見つめた。




