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第6話


 夜8時、私は南西の森へと来ていた。昼間でも薄暗かった森は光源が無くては進めないほど暗くなっている。


「ホラーゲームのフィールドみたい……」


 この暗さは敵を見落としそうで怖いね。それでも素材を集めなきゃいけないから中に入る。その前にメイカが用意した光源を用意する。

 メイカが用意したのは青白い光を放つ小さなカンテラ。小ささの割に光量が多く軽量で扱いやすい。


(メイカの話だと昔の知り合いに頼んだ物って言ってたね……)


 βの時の知り合いかな?どうも非売品っぽいから壊さないようにしないと。私は青白い光と共に夜の森へと入っていった。

 しばらく歩いているけれどマンドラモドキやポイズンビーは出てこない。夜はあまり活動しないモンスターなのかな?素材欲しいから出てきて欲しいんだけどね……沢山来られると嫌だけど。


カサカサカサ


 森を静かに進んでいると私の耳に虫が這うような音が聞こえてきた。その音は次第に大きくなっていき……私のすぐ右側まで近づいてきた。


「キシャァァァ!!」


「【ウォーターショット】!」


 カサカサ音が一瞬止まったかと思うと深緑色のクモ、ハンタースパイダーが飛びかかってきた。私は素早く指を向けて魔法を撃つ。

 水の弾丸はハンタースパイダーの胴体に着弾。空中に居たハンタースパイダーは後ろにグルと回転しながら吹っ飛んだが何事も無いように着地した。


(ダメージ入ってるよね?)


 手応えがあんまり無い。マンドラモドキやポイズンビーと比べて強さの格が上がってる気がする。


「キシャァァァ!」


「わっと!?」


 私が苦い思いをしているとキラースパイダーは腹部をこっちに向けて糸を放ってきた。私は横にステップをして回避する。地面にはクモ糸がネバァァ……と広がって残ってる。踏んだらアウトだね。


「時間をかけると回避先が絞られちゃいそうだし……ここは新しい魔法を使おうか」


 私は銃のようにしていた右手を握る。そして人差し指と中指だけを伸ばし、人差し指と中指の付け根に親指を置いた。その間にキラースパイダーは再び私へと飛びかかってくる。


「【ウォーターカッター】!」


 魔法を発動させヒュン!と横に腕を振ると、指の先から水流が勢いよく噴出する。細く頼りなさを感じる水流はキラースパイダーの胴体に吸い込まれるように入り、深い切り傷を作った。


「キ、シャァァ……!」


 深い傷を負ったキラースパイダーは地面にグッタリと倒れ伏した。細くても切れ味は抜群……むしろ細いからこそ脅威的に見えない魔法。


(まぁ、飛距離が伸びるほど威力と切断力が下がるんだけどね)


 接近されたとき用の魔法。2mも射程が開くと水鉄砲だからね……クモを相手するなら近づかなきゃかな。


「《回避》取っておいて良かったね」


 さてそれじゃあ次の獲物探そう。勿論、採取も忘れずにね。暗いとキュア草を見つけるのが大変だね……危うく踏みかけたりしたし。


ブブブ……ブブブ……


 私が足元に気をつけているとポイズンビーの羽音が聞こえてくる……だけどなんか重なった様な感じなんだよね。これってもしかして……私は音がする方に近づいた。


「「「「ブゥゥゥン」」」」


「(うわー……やっぱり巣があった)」


 目の前にあったのは独特なハニカム構造が幹を覆う様に作られた木。部屋の1つ1つに幼虫や蛹の姿が見え、それを守る様にポイズンビーたちが居る。


「(一回り大きめのがポーンかな?女王は……)」


 あ、見つけた。人間サイズのポイズンビーを確認、周辺には10匹以上のポーンが護衛のように居るね。


「これに手を出すの無理じゃない?数の暴力を振われそうなんだけど?」


 ここに突撃させられるの嫌なんだけど……とりあえず見つかるとマズいからささっと離れる。小枝を踏んで逃げるのを失敗するとかいうベターな失敗はしなかった。流石に気をつけたからね……


「無駄死にしたくない」


 ドジ死とか特に。メイカに笑われるだろうからねー。アイツにネタを提供したらいつまで笑われることか。


「キシャァァァ!」


「【ウォーターカッター】!」


 ポイズンビーの巣があった場所からできるだけ離れて、私はキラースパイダーの素材を集めていった。その間に月光草も探して居るけど……あんまり見つからないな。


「メイカのメモだと珍しくって訳じゃないみたいなんだけどね……」


 私は渡されたメモを見る。月光草の特徴は黒っぽい葉っぱで白い花。日中は地面の下に埋もれていて夜に表に出てきて花を咲かせる。花が仄かに光るらしいからこんなに暗くても分かると思うんだけどね……

 あ、そうそう。職業スキルの《目を奪う人差し指》なんだけど。試してみた結果としては使い道が分からないって感じになった。目線を無理矢理私に向けさせるんだけど……これソロだとそもそも相手の目線って私だから意味が無い。そして向けさせるだけで他に効果は無し。しばらくはお蔵入りとさせていただきます。


「もう少し奥に行かないとダメなのかな?」


 職業スキルへの酷評をしつつ、私は灯りを手に森の奥へ更に進む。それにしてもここのホラー感に全然慣れない……他のプレイヤーも居ないみたいだし。


「私以外の光源が見えない……まぁ、そりゃそうだよね」


 他の狩場は月や星の灯りで充分に明るい。特に今日は満月で私の様に灯りを持って行く必要が無い……その分、混んではいそう。


「はぁ……人が少ないのは良いけど。暗いのも好きじゃないんだよ」


 今日、殆ど1人っきりだなぁ……ちょっと人恋しくなってきた。普段、そんなこと思わないのに暗さのせいか変な思考か浮かんでくる。


(1回森から出ようかな……ん?なんかあっちの方明るいような)


 少しビクつきながら進んでいたら前の方がほんのり明るい……気になって近づいてみると、どうやら森の中にぽっかりと開くように空間があった。木が無いから月明かりがばっちり入ってるんだね……でもそれだけじゃなくて。


「月光草……しかもこんなに沢山」


 広場にはワサワサと沢山の月光草が生えていた。今まで見つけられてなかった分がまとめて生えてるような感じで。


「これだけあればメイカも満足してくれるはず……」


 私はしゃがんで月光草を採取していった。これが私が飲むMP回復薬になるんだね……何本になるんだろう?


(《大食い》あるとは言え、大量に飲みたくない……)


 味がそもそも美味しくない。素材とか用意したら味良くなるのかな?オレンジとかリンゴとか……ジュースみたいになって欲しい。そんな風に思いながらブチブチと毟っていると、地面にキラキラ輝く何かを見つけた。何だろうこれ?私は地面を軽く掘ってキラキラ光っているものを拾った。


「何これ……石?」


 キラキラして居たのは薄水色の石。宝石でも何でもないただの石にしか見えないけど……何となく惹かれる。ストレージに入れてみると月涙石って名前が表示される。やっぱり素材だったね。


(メイカなら何か知ってるかな?)


 レアな素材だと嬉しいな。私はラッキーな気分でウキウキしながら月光草を採取していき、ある程度溜まったところで帰ることにした。帰り道でキラースパイダーを倒して素材を獲得……帰ってからメイカに取ってきた素材を渡したら満足してたね。

 ちなみに月光草に関して見つけるの大変だったと文句言ったら、あれ月明かりが当たる場所じゃないと生えてないらしい。とりあえず先に言えと1発デコピンを入れておいた。反省しろ。



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