第50話
「………………結局、さっき何人来てた?」
「分かんない…………でも残ってた300人分ちょっとの麺が消えたから300は超えてるはず。売り上げ目標は達成したからしばらくは休憩かな。流石に腕が疲れた」
行列ラッシュを乗り越えた私とメイカはビーチの片隅に作られたカフェでトロピカルドリンク片手に疲れを癒していた。仕事に忙殺されるところだった……
「魚介類の在庫どれだけ残ってる?足りないなら獲ってくるけど」
「素材は平気かな。レティシアから渡されたやつもあるし……なんか死ぬほどイカの素材があったんだよね。逆に貝が全然無いっていう」
「レティシアさんなら大剣で殻ごと粉砕できそうだけどね」
あの人の大剣、その辺のハンマーとかよりも重くて硬そうだし。私はそう思いながらストローで赤いドラゴンフルーツのジュースを飲む。うん、美味しい。興味本意で買ったけど当たりだったね。
「そういえばメイカは何かプチイベント出ないの?鉄板焼き以外で」
「んー……特には無いかな。私としては今回のイベントは新しい町に行く前の資金稼ぎがメインだったからね。それにポイントもほら充分あるし」
本当だ。覚醒玉全部交換しても8割は残る量ある……焼きそばで荒稼ぎしてるよ。言うて私もそれなりに稼いでるけど、プチイベントが割と美味しかった。
「あ、今のうちにポイント交換いくらかしておこう……とりあえず覚醒玉から交換してと」
今回のイベントも3個交換できるから在庫は6個になったね。使うスキルが中々無いけども……あ、そういえば今回のイベントでは限定スキルがあるんだっけ?イベント限定スキルだからぶっ壊れスキルとかは無いけど。ちょっと見てみて良さげなのあったら交換かな?
「海のイベントだからか、水や塩に関するスキル多いね……」
水場での戦闘時に動きが良くなる《水遊び》。料理の時に塩加減を細かく調節できる《塩振り職人》。泳ぐ時のエフェクトが静かになる《潜入水泳》……ネタ寄りなの多いね。
「あ、これはちょっと私に合いそう?」
「なんか良いスキルあった?私は《塩振り職人》交換しようと思ってるんだけど」
確かに料理するならそれは便利そう。私はそんなことを思いつつ見つけたスキルをメイカに見せた。
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《艶肌》
水で濡れている時に発動
火属性への耐性を10%上昇
CAM+10
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濡れてる時にCAM上昇。私、水属性の魔法ばっかり使うから濡れる機会ありそうだしね。てか付与系で自分の身体を対象にすれば発動するのかな?
「それ取るなら《水遊び》も取っておいてもいいかもねー……てかCAM上昇させるならこの《露出》ってやつも良さげだけど」
「私を変態にしたいの?」
確かにCAM増やすならアリだけども。それ自分の肌面積に応じたCAM上昇だから、限界まで布を削らないと効果低いんだよ。
「他にCAMが上がるスキルは無さそうだし。この2つ交換で良いかな」
とりあえず交換は一旦終了。んー、でもこのあと何しようかな?あ、そうだ。
「スキルの強化しちゃおうかな。覚醒玉消費しておきたいし」
ちょっと強化しときたいのあったからね。てことで覚醒玉を2個消費し、《八方美人》を強化する。これ何気に1番私に恩恵を与えてるからね。覚醒玉を消費しても問題無し。《八方美人》は《容姿端麗》に強化された。
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《容姿端麗》
自分の基礎CAMを50%上昇させる
更にCAM+30
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いや強くなり過ぎ。なんで固定値増加も増えてるの?これで今の私のCAMは……素が165で《容姿端麗》での強化が83+30の113。《傾奇者》で100、《艶肌》を除いたその他スキルで45。装備……今の水着だと100上がるから。
「合計で523……523!?」
「おわっ、びっくりした!?」
自分でもびっくりするぐらいの数値。いつの間にこんな数値に……でもこんなに高くてもスキルぐらいじゃないと効果ないんだよね。
(あーでも、《失恋の鈍痛》のダメージがかなり上がってるか)
確かCAM50毎に1ダメージだからね……今の数値だと10ダメージ。充分なダメージになるね。継続ダメージだから一度当てれば十分だし……戦闘職の人ってHPの増加値多いのとスキルで補強したり、耐性とかあるせいでダメージ減らされちゃうけども。だからこその火傷ってこと?
「これで残り4個。《傾奇者》も強化したいけど……」
「悪いけどしばらくは装飾品作らないよ?新しい町の技術を覚えてから全部作り直す予定だしね」
てことなので今強化してもあんまり意味が無い。覚醒玉3つも消費して使わないのは勿体無いよね。ということで強化はお預け……うん、いよいよやること無くなったね。このままのんびりしようかな。
「あ、居た居た!ドレミ居たよー!」
「キララ煩い。また折檻されたい?」
「勘弁してください!木刀痛いんだよ!」
私はカランカランとグラスの中の氷を揺らしていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。というか1人は最近までレッスンしてもらってたしね。
「お久しぶりです。ドレミさん、キララさん」
「久しぶり。元気そうね」
「私は昨日まで一緒だったから久しぶりでは無いけどね!」
ドレミさんは着物っぽい水着、キララさんはミュージシャン風の水着だね……ドレミの腰に下げてる木刀はスイカ割り用ですよね?薄らと赤いシミ付いてるし。
「なんか私たち探してるみたいでしたけど、どうかしたんですか?」
この2人ということで嫌な予感がするんだけど……私は背中に変な汗が流れていく感覚を覚えた。そしてそんな感覚は正解だった。
「実はね。モモカちゃんにお願いしたいことがあって……夕方にあるプチイベントに参加して欲しいのよ」
「プチイベント……内容は?」
「ざっくり言うとコンサート大会。歌や踊りの大会ね」
やっぱり……ダンスの師匠と歌の師匠。その2人の組み合わせで他のものだったらビックリする。
「ちなみになんで私なんですか?ドレミさんたちが出るんじゃダメなんですか?」
「あ、その2人だと無理だよ。ドレミさんはダンスはできるけど歌は下手っぴ。キララさんは歌はできるけどステップまともに踏めないから。片方だけ特化しててもう片方がダメな人だから……まぁ、年齢的なのもあるけどさ」
「「ぐふぅ!?」」
メイカの遠慮の無い言葉のナイフが大人2人の膝を砂に着けさせる。なんてエグいナイフ……人の心無いんか?
「と、とんでもない一撃だったわ……身体に穴が空いたと思ったわ」
「会社辞める時にこんなダメージは無かったんだけどね……」
キララさんの声小さくなってるし。とまぁ、大人2名がなんとか復活して詳しい話を聞く。大会に出て欲しい理由としては優勝賞品、作った曲をいつでも聴けるようになるオルゴールらしくてキララさんがこれが欲しいらしい。
だけどこの大会。総合点が100だとすると歌で50、ダンスで50。現時点の参加者にはドレミさんやキララさんも知ってるプレイヤーがチラホラ居るらしい。あ、歌やダンスの方で知ってるプレイヤーね。このゲーム、対人戦の集まりがあるように歌やダンスの集まりもあるんだって。
「そんな人たちが出てる大会で私みたいな素人が出て勝てます?」
「ふ、それこそ問題無いわ。どっちのグループもダンスと歌それぞれに特化してるけど、もう片方は人並みよ」
「その点、モモカちゃんは私らのレッスン受けてるからね!圧勝とはいかないだろうけど優勝狙えると思うよ!」
あ、熱い。夏の暑さじゃなくて2人のオーラが熱い。でも人前で歌うの……ちょっと恥ずかしいな。グラシスでライブしたけど、その時の倍は居そう。そんな人数相手に歌えるほど覚悟決まってないし、ここは申し訳ないけど断って……
「ちなみに優勝賞品には服飾関係の素材もあるわ。説明文見た感じ装備を作ればCAMがかなり上がりそうな感じだったわね」
「よし、モモカ優勝してこい」
はい、スポンサーには逆らえません。参加決定……ま、まぁ、私の歌とダンスで観客をメロつかせてくれば良いんでしょ。要するにモテるチャンスよ!
「ところで……歌はどうすれば?私の歌を大勢の前で歌ったらお通夜通り越して葬式みたいになりますよ」
「あー、そこに関しては私が用意するよ!丁度良さげな歌がいくつかあるからね」
「ダンスについては……バラード系なら簡単な振付で済むからね。あとは演出をどうにかすれば良いかな」
てな感じでコンサートに参加することになった私、メンタルよ保ってくれ……
「薬……胃薬ない?」
「ゲーム内でそんなのに頼らないでよ。社畜じゃないんだから」




