第33話
レッスン最終日。最後のレッスンはドレミさんとの模擬戦リベンジ。一撃でも良い一撃を叩き込めれば終了……昨日の模擬戦で学んだことを活かす時!
「先手は良いわよ。いつでも来なさい」
「それじゃあお言葉に甘えて……【ヘイルバレット】!」
クイクイっと木刀を振るドレミさんに【ヘイルバレット】を撃ち込む。ドレミさんが氷の弾を木刀で砕いている間に私は回り込むように距離を詰めていく。
ドレミさんは冷静な目で私に視線を合わせ続け、木刀を振り下ろしてくる。
「【スノーシールド】!」
私はそれに合わせて氷の盾を作って攻撃を受け流した。これはかつての強敵、シャドウミミックを参考にした……今までこの魔法使って来なかったけど、模擬戦で盾の強さを知ったからね。距離詰める時に使うと凄く楽になる……魔法で作った氷だからかなり硬いし。
(そんな氷の盾なのに……なんで木刀で簡単にヒビが)
真正面から受けたんじゃなくて、受け流してるのに全体に大きなヒビが入った。怖すぎ……当たったら大怪我しそう。最後のレッスンとだけあってドレミさんも前よりも本気で来てる。
「せい!」
「甘い!」
私は木刀を逸らし切ってドレミさんへ回し蹴りを入れようとする。しかしその攻撃は軽く避けられ、跳ね上がるように木刀が向かってくる。今の体勢だと避けるのは難しい……ここは緊急脱出!
「【ジェットカッター】!」
私は足の裏から水流を出し距離を取った。これはMMS対人会で教えてもらった技術。【ジェットカッター】のような魔法はいざという時の回避手段としても使える。体勢が崩れている時でも距離を取りたい時に使うと有効的。
(足から出すと攻撃判定消えちゃうから。攻撃しながら避けるとかには使えないんだよね……)
あとMPを多めに使わないと距離を取りにくい。だから緊急回避用の技……それを早々に切ったのはマズいね。背中が冷や汗で寒い。
(本当にこれどうしよう?ドレミさん、プレイヤースキル高過ぎる)
lvは私の方が上、だけどそれを補うどころか上回っているプレイヤースキル。私の魔法を斬り払っちゃうし、攻撃も見てから対応されてしまう。
ある程度はスキルで補強してるんだろうけど……そういえばドレミさんって町周辺のボスを一通り倒してるんだっけ?
(イベントは仕事の影響で参加できてなかったらしいけど……覚醒玉で強化されたスキルが最大4つか)
それで更に強化している感じだろうね。とまぁ、ドレミさんのアレコレを考えたけど……結局のところ一撃を入れるピースとして使えはしないね。
「とりあえず手数で押してみるけど」
私は昨日の模擬戦……速い相手と戦うセオリーは撹乱して隙を作って切り込むを実践して攻めていく。しかし私の攻撃は簡単に木刀で防がれ、来る反撃をどうにか回避していく攻防が続いた。魔法はMPが勿体無いから物理主体で付け焼き刃のフェイントを駆使しても全然近づけない。
「この間よりもフェイントのキレは良いけど、まだまだキレが足りないわね」
「でしょうね!」
淡々と処理されてますからね。こっちは頑張ってフェイントをしているのに……幸いというか木刀で防がれても《誘惑吸収》でMPを少し回復できる。とりあえず満タン近くまで上げれたから魔法も使っていきたいけど。
(今まで通りじゃダメだよね)
魔法やフェイントで撹乱して距離を詰め、一撃を入れる。ドレミさんにそれをやるのキツ過ぎ……こうなったらMPを気にせずに短期決戦を狙うしかない!
「【スノースモッグ】!」
「煙幕?」
私は自分とドレミさんの間に雪煙を展開。更に動作発動で【ウォーターバレット】を数発放つ。
「視界不良からの遠距離攻撃……強い手だけどよく使われる手ね。それに」
ヒュン!ヒュン!バシャ!バシャ!
雪煙のせいで見えないけれど木刀が振るわれる音と、【ウォーターバレット】が弾き飛ぶ音が聞こえてきた。
「《気配察知》の強化スキル《第六感》。魔法の雪煙で《魔力察知》は使えないし、《見切り》も充分に発揮できないけど……この程度じゃ近づくのも難しいわよ?」
でしょうね。でも手札公開ありがとうございます……絶対お情けでしょうけどね。でもありがたいね。今からやることが上手くいきそうだから。
「さてどう出てくるかな?ん?」
ドレミさんが困惑するような声をあげる。気づかれたかな……私が真上に撃ち上げた【ヘイルバレット】に。
さっき【ウォーターバレット】を撃った時に動作で一緒に上に向けて撃っておいたもの。放物線でピンポイントの位置に落とすのは難しいから数は多め。普通なら対処するのは難しいだろうけど……
「上からの攻撃。でも避けちゃえば問題無いわよね」
(そうなるよね)
これだけ強いドレミさんなら対処されてしまう。上からの攻撃なんて避けちゃえば良いもんね……だからこうする。
「【ジェットカッター】……【視線を奪う人差し指】!」
私はドレミさんが動き出す前に雪煙を突っ切りながら突撃。更には視線を私に強制的に向けさせた。上に意識が向き、回避しようとしていたドレミさんの動きが一瞬止まる。
「あら?」
動きが止まったドレミさんはいま2択を私から押し付けられている。上からの雹弾に対処するか、突っ込んでくる私を対処するか。
どっちかでも当てられれば私の勝ち。ドレミさんが選択したのは……
「スゥ…………《飛刃》《抜刀》《回天》!」
まさかの両方への対処だった。ドレミさんが腰に構えた木刀をグルっと一回転するように振ると、木刀から無数の斬撃が回転しながら撒き散らされた。
撒き散らされた斬撃は上へも広がり、【ヘイルバレット】が次々と砕かれていく。そして私にも斬撃は向かってくる……
(緊急回避……したらもう近づけなくなる)
ならここは更に突撃あるのみ!私は【ジェットカッター】を発動。更にスピードを乗せ、身体のあちこちに斬撃の端が当たる痛みを感じながら隙間を潜り抜け……体勢を整えてドロップキックの構えを取った。
「行っけぇぇぇ!!」
氷片が降る中、私の渾身の一撃がドレミさんへと伸びていく。そしてあと少しで当たる……ってところでドレミさんの腕が凄い勢いで動き、木刀が私の蹴りを受け流した。そして私は勢いそのままにドレミさんを無情に通り過ぎていく。
「あぁぁぁぁ!?」
ドッ!ゴロゴロゴロゴロ!!ベタン!!!
「むぎゅ!?」
勢いそのままに地面に転がり地面に伸びる。か、顔が……2段ブーストで速度乗ってたから衝撃が強過ぎて動けない。これ何かしらの状態異常になってそう。
「あ、あそこまでやって失敗かぁ……無念」
「いや、そうでも無いわよ」
「ほぇ?」
短時間でのMP大量消費の影響で若干気怠い私にドレミさんが近づいてきた。そして指でスーツの一部分を見せてくる。そこには何かが掠って切れたような痕跡が残っていた。
「躱し切ったと思ってたんだけどちょっと甘かったわね……それにスキル使わされたから普通に私の負けよ。これもこんなになっちゃったし……」
とドレミさんは持っていた木刀のなれ果てを見せてきた。私の蹴りや魔法を弾いても壊れなかった木刀が半分を残して無くなっていた。
「スキル3個同時は持たなかったわね……あとで弁償しなきゃ」
ドレミさんは溜め息を吐く。私は私でクリアしたことの実感が持てずにフリーズしていた。いやだって今まで軽く捻られてた相手だよ?受け入れるのちょっと時間かかる。
「え……クリア?本当に?」
「そうよ。こりゃちょっとボコボコにし過ぎたかな?」
とりあえず起きなさいと私は立たせられる。そこまでされてやっと実感が持てた。や、や……
「やったー!」
私は空に両腕を伸ばした。心のどこかではクリアできると思ってなかったからね。滅茶苦茶嬉しい!
「ふふふ、それじゃあお祝いに何か美味しいものでも食べに行きましょうか。メイカちゃんにモモカちゃんは食べることが好きって言ってたからね……私の奢りよ」
「はい!」
こうして私のレッスンは終了した。まぁ、集中レッスンが終わっただけであって、時間がある時とかには色々教えてくれる感じになっただけだけどね。5日じゃ足りない部分もあるし。
(基礎練習は欠かさずやろう)
リアルの方でね。あれ中々良い運動になるから運動不足解消に丁度良い。メイカにもやらせようかな……そうすれば体育の授業でもう少し動けるでしょ。持久走1周半で死にかけたりとかしないはず。
とりあえず明日からは冒険再開だね。素材集め頑張っていこう!そのためにエネルギーをチャージ♪チャージ♪
「もぐもぐ。もぐもぐ」
「聞いては居たけど凄い食べるわね……リアルだったらエンゲル係数高そうね」
スキル説明
《気配察知》
周囲の生物の気配を探れる
死者など一部の相手には効果が無い
《第六感》
周囲の生物の気配を探れる
死者など気配が希薄な相手も感じ取れる
《魔力察知》
魔法の発動やアイテムが浴びた魔力を探ることができる
《見切り》
視界内に限り、相手の攻撃の軌道を薄らとみることができるようになる
《飛刃》消費MP:10
刃物系武器専用。斬撃を飛ばすことができる
ただし、威力は普通に斬る半分程になる
追加でMPを消費することで他の攻撃スキルと組み合わせて使うことができる
《抜刀》消費MP:15
刀専用スキル。納刀状態からの攻撃の際
攻撃範囲が1.5倍になる
(木刀の場合は腰に構えるだけで使用可能)
《回天》消費MP:20
回転しながらの攻撃威力を上昇
また、攻撃時に転倒耐性、ノックバック耐性を得る




