第28話
イベント最終日。朝早いというのに外は最後の追い込みで忙しそうなプレイヤーが走っている。そんな様子を眺めつつ私は……
「店員さーん。パンケーキ5枚追加で」
「はーい。少々お待ちください」
明日にはこの町を去るのでパンケーキを食い溜めしていた。既に10枚は食べたね……ふふふ、《大食い》様々。食べ過ぎると薬の分の容量消えるけどね。
「ま、今日は戦闘しに行く予定は無いしね」
素材集めも今日は頼まれてない。イベント素材は充分ある。花畑の素材も染料は最低限集めることができた……ダンジョンのフルーツトレントの果物がちょっと欲しいくらいか。これに関しては個人的な理由だけど。冒険中のおやつストック増やしときたい。
(そういえばイベント始まってから行ってなかったね……)
今なら乱獲するの楽そう。しばらく補充しなくても良いように沢山集めなきゃ……と、パンケーキのおかわり来たね。
「うーん、料理自分でできるようにした方が良いかな?」
一応、リアルじゃたまにお菓子作ってたりするし。でも《料理》ってお店で買える状態でどの程度の料理が作れるのかな?
(あとは手の込んでいるものはお店で食べる方が良かったりもするしね)
とりあえず生産系ならメイカに聞いてみようかな。というかメイカなら料理にもそのうち手を出しそう。
そんなことを思いながらもぐもぐとパンケーキを食べ進めていく。流石にもうおかわりは良いかな。食べ過ぎになりそうだし。
「ふぅ……さてと食べ終わったし、ダンジョン行ってこよ」
私はお会計を済ませて花の迷宮へと向かう。そしてフルーツトレントがよく出てくる3階層で狩りを始めたけど、【ジェットカッター】でスパスパ切れて楽だった。
「結構硬かったイメージあったんだけどね」
まぁ、あの時に比べて色々盛ってるからね。ちなみに蹴りは普通に変わらなかった。物理攻撃の威力は大して増えてないから……MP回復は大きいんだけども。
「とりあえずあの時からどれだけ強くなったか。それを知るには丁度良い機会だね」
そんな感じで私は花の迷宮のモンスターを魔法と蹴りで倒していった。それと迷宮は通路の横幅が狭いから大きい動きのステップは使えない、だから小さいステップの組み合わせて戦う練習をするのに良い場所だった。
「1-2-3!」
「ジュギ……!?」
左右に動き、時には後ろに下がる。不規則な動きにモンスターたちは翻弄され私に攻撃を当てることもできずに倒れていった。ボスもなんの苦戦もせずに倒せちゃったしね。
「私は強くなり過ぎた……なんて言えるのは今だからだね」
ちゃんとした戦闘職ならもっと強いんだろうなぁ……私がそう思いつつ町を歩いていると。
「ん?あの時の嬢ちゃんじゃねぇか」
後ろから話しかけられた。振り返るとそこには狼の頭が付いた毛皮を被った大男……山賊?あ、よく見たら。
「あ、山で餓死しかけてたサバイバーのおじさん」
「お、とんでもねぇ覚え方されてやがる。事実だから何にも言えんが」
そりゃあの時名前も聞いてなかったですからね……格好もあの時に比べてだいぶ違うし。
「サバイバーやめて山賊になったんですか?山賊のお頭みたいな格好してますけど」
「山賊……あー、この毛皮か?これは南東の丘陵のボスの毛皮だな。ボスの毛皮を丸々手に入れたもんで作ってもらったんだが、そんなに山賊に見えるか?」
「周りの住民を見てみたら分かると思いますよ?」
明らかにビビってますから。何あの人……みたいな感じで。
「てか嬢ちゃんの方もだいぶ変わったな。角に羽に尻尾……人間辞めたのか?」
「人間卒業してませんよ。これアクセサリーですから……なんか動きますけど」
その後、道のど真ん中で話すのもあれだから端っこに寄った。ちなみにここで自己紹介の方をした。サバイバーのおじさんの前はワタリって名前だった。何処となく本名感強い……本名そのままの私が言えないけどさ。
「てか嬢ちゃんはこの町に居たんだな」
「明日には最初の町に戻ってますけどね。そのあとどこに行くかは未定です」
メイカの生産欲の向くままにだからね。そういえばワタリさんは色んな所に行ってそうだから、何か面白い情報持ってないかな?
「面白い話?あー、面白いかどうかは分からないが北の山には油を落とすモンスターが居るんだが、どうも本サービスからの追加で特に使い道が分かっていないらしいな」
他にも東の荒野では毛皮が供給過多で値崩れを起こしているだとか、南の草原はイベント素材によって布系防具の需要が増えて糸系素材の需要が爆増中。
(裁縫関係ならメイカが気になりそうだね)
なら次は南の方に移動かな?でも虫かぁ……森のハチとか面倒だったね。そういえばハチミツがある巣にまだ行ったことないね。
(これ戻った時に突撃させられそう)
今なら勝てるかな。ちょっと気を引き締めておこう。その後、ワタリさんとは軽く世間話をして別れた。ワタリさんはとりあえずダンジョンに挑むって話してたね。他の3つの町のダンジョンはクリアしてるらしいから楽々攻略っぽい。
「じゃ、縁が有ったらまた何処かで会おうな。嬢ちゃん」
「ワタリさんもお元気で」
ワタリさんは毛皮をマントのように靡かせてダンジョンの方へと向かっていった。後ろから見てもやっぱり山賊だね……あれ、そのうち衛兵さん呼ばれないかな?
ワタリさんと別れた後はメイカのところに向かった。ほぼ貸し切り状態だった生産室は綺麗に片付いている……昨日とかあちこちに素材やら作りかけのアイテムやらがゴロゴロしてたんだけどね。
「あ、モモカ。パンケーキの食い溜めは終わったの?」
「それはとっくに終わってる。フルーツトレントの果物集めもしたしね」
かれこれ2時間は経ってるんだけど?どれだけ食べたと思われてた?そこまで大食いじゃないよ。
「片付け終わったってことはもう移動?」
「そうだね。イベント終わってからだと馬車が混みそうだし……最初の町の生産室借りたいしね」
新しい寝床確保かな?とまぁ、そんなわけで早速移動……また1番安い馬車だね。
「またこれ?」
「仕方ないじゃん。お金節約したいし1番早く町に行けるんだから」
うーん、これ酔うから嫌なんだけど。仕方ない移動中は寝て過ごそう。クッションも買ってあるし多少は楽になるはず。
(花の町。またいつかパンケーキ食べに来よう)
私は馬車に乗り込み段々と離れていく町を見ながら感慨に耽る。そしてガタガタと揺れる馬車の揺れに耐えるために目を瞑った…………
結果として揺れが酷くて寝れず。めちゃくちゃ酔いました。オェ……




