第22話
イベント開始から3日程経過した。現在の攻略数は10……ちょいちょい素材集めとかしたり、学校の課題を進めたりしてたからあんまり進んでない。まぁ、ポイント集めは順調だから問題無いけど。
「そろそろ3万……覚醒玉を3つ交換できるね」
スキルの強化が楽しみだね。ちなみにレベルはあんまり上がってない。lv30を超えてまた伸びが悪くなった……素のステータスが低いとlvを上げて伸ばさなきゃいけないのに。
「継続ダメージが無ければここまでこれてなかったね……あんまり効く相手がいないけど」
ゴーレムはね。ちなみにあれから出てくる敵はあんまり増えてない……ちょっとジャンクゴーレムにゴツくてパワーのある個体や逆に細くて素早い個体が出てきたくらい。
特段素材に変化は無かった。量が増えたくらいだったね……メイカはだいぶ嬉しそうだった。
「ポイントも戦ってる私より稼いでるっぽいし……流石としか言いようがないね。と、【ウォーターショット】」
「キキキ!!」
私は天井から不意打ち気味に魔法を撃ってこようとしていたコウモリ、ウィンドバットを撃ち落とした。ある程度進んだところからコウモリたちは不意打ちばっかりするようになってきた。基本的に天井を見てれば大丈夫だから苦戦しないけど。
「むしろ正面の方がちょっと面倒だしね」
ゴーレムたちは足音で普通に分かるし、ミミックは宝箱に気をつければ大丈夫。なのでそこまで難易度が上がってる感じはしない。そろそろボスの居るエリアに着くし。
「節目だけど何が出てくるかな?」
そんな感じで敵を倒しコインを拾いながら進んで闘技場に到着した。ここのボスを倒せば丁度良い感じに貯まるはず……さて肝心のボスは。
「ん?何あの箱?」
闘技場の中にあるのは黒い宝箱。ミミックのボス……でも動かない人喰い箱がどう戦うの?私がそう思っていると箱の蓋が勝手にパカリと開いた。箱からは黒いモヤが溢れ出して球体となり脈を打つように鼓動する。そしてモヤを吹き出していた箱がボロボロと崩れていく中で球体は地面へと、そして人型の何かが現れた。
その姿は頭から2本の角、腰からコウモリのような羽、ツルッとした細長い尻尾を生やし、真っ黒で分かりにくいけれどフリフリの服を着ているのが分かる。その姿はまるで……私とそっくりだった。
「…………」
黒い私は何も言わずに私に向けて指を伸ばした。指の先にピンクの魔法陣が出現すると……桃色の液弾が発射される。あれは【アシッドショット】!?
「危な!!」
意表を突かれながらも私は液弾を回避する。外れた液弾は地面に広がりますジュワァ……と溶ける音が聞こえて来る。
「…………」
「こ、今度は【ポイズンバレット】か……」
黒い私は紫色の雹弾を撃ってくる。さっきの【アシッドショット】と良い、私の能力が使えるのね……となると【恋の一撃】もあるはず。継続ダメージを受ける訳にはいかない。
「てか一方的に撃ってくるね。ならこっちも【アシッドショット】!」
私は黒い私……紛らしいから偽物って呼ぼう。偽物に魔法を撃ち込んだ。それに対して偽物は左の手のひらをこっちへ向ける。白い魔法陣が出現して氷の結晶のシールドが魔法を防いだ。
あれは【スノーシールド】……普段あんまり使わないから忘れてたね。MP消費するくらいなら回避した方が良かったからね。そもそも強度が結構不安だったし。
「遠距離だとこれキツイかも。なら接近戦で!」
私は偽物の魔法を避けつつ距離を詰めて蹴りを放つ。それに対して偽物も蹴りで迎撃してきた。足と足同士がぶつかり鈍い衝撃を感じる。威力は同じくらいっぽい……ステータスも私も同じなのかな?
「…………」
「っ!?こいつ私よりも動きが良いんだけど!!?」
偽物は軽くステップを踏んで連撃を放ってくる。私よりも連撃を放つ感覚が短い……でも魔法に比べたらマシではあるけどね。
「…………」
「ふっ!せい!」
私は偽物の攻撃を捌きながら攻撃をしていく。それに対して偽物は【スノーシールド】や蹴りで防御してくる。受け方が上手い……
「やぁ!」
私の渾身の踵落としも【スノーシールド】で防がれてしまう。この盾、見た目の割に硬くて本当に困る。私も使える魔法だから優秀なのは嬉しいんだけどさ。
「…………」
踵落としの反動で少し距離ができると魔法を撃ってくる。しかも殺傷性高めの【ポイズンバレット】、魔法の使い方も上手いの腹立つ。
(というかMPどれだけあるの?私ならとっくにガス欠で薬飲まなきゃいけないのに)
そこはモンスターだからってことで多いんだろうね。流石に無限とかは無いだろうし……無いよね?
「…………」
「っ!やらかした」
変な不安を考えたのが良くなかったのか【ポイズンバレット】が腕を掠った。掠った部分に紫色の光が纏わりつき感覚が少し鈍くなった感じがした。
毒は解毒薬があるから治せることは治せる。でもこいつの前に隙を晒したくはないんだよな……そう思いながらどれだけダメージを受けてるのか確認してみるとダメージは微々たるものだった。《初恋の一撃》の加算を見積もっても少ない。なんで?
「あ、そういえば《毒耐性》持ってるんだった」
更に状態異常は受けた被害に応じて効果が増減する。今回はかすり傷だったから《毒耐性》でカバーできる範囲に抑えられた感じか。耐性持ってて良かった。
(それを自分の魔法で思うことになるとは思わなかった……)
あと強酸は耐性無いから直撃したら終わり。メイカ曰く、防具にも悪影響らしいし……《刺激的な初恋》付与の魔法は受けないようにしなきゃ。
「とはいえ距離詰めたところであの防御の厚さ……どうやって乗り越えようかな」
MPの多さがね。【スノーシールド】が本当に厄介、あれは今の私じゃどうやっても壊せないだろうし……何より向こうが私よりも動きが良いせいで力押しもできない。
「逆に言えばこの戦いの中で私の戦い方を最適化させていけば勝てるはず……」
無駄を削ぎ落としてどうにか勝つ。ここまでなんやかんや雑な戦い方でもなんとかなってたけど、ここからはそれが通用しないんだろうね。この偽物がそうだし。
「こいつから学べることを学んで強くなろう!」
私はただ静かに佇み指を向ける偽物を睨みつける。その立ち姿、絶対に慌てさせてやる。




