68話 【氷の勇者】と【水の勇者】
やばい、やばい!
釜元がやられた。
しかもめっちゃ卑怯な方法で。
俺の【影】では竜王なんて相手に出来ないからな。
ごめん。釜元。
どうしよう……
一条も、竜王の娘も魔王の娘もさらえなかった。
代わりにコイツ……名前なんだっけ?
俺の影に引き込まれて気絶している。
こいつのせいで。
それにしても、いつの間に現れやがった?
全然気付かなかった。
「ねぇー、戻ったの?」
誰だ?
里見か。
「あれ?飯島、もう帰って来たの?」
里見冬美【氷】の勇者だ。
勿論、俺より強い。
「あれ、釜元と廣瀬は?と誰そいつ?一条君は?」
取りあえず、今回は一条を連れて来ることが、最大の目的だったからな。
「一条は連れて来れなかった」
「はぁ?まじで! どうすんのよ。髪ごわごわで気持ち悪いのよ。
あと服もコスメも、あとお菓子も、欲しい物がいっぱいあるのにどうすんのよ!ちゃんと仲間にしなさいよ。ちゃんとお願いしたの?馬っ鹿じゃない!」
みんな期待していたからな。
「一条は…ここには来ない。
釜元も廣瀬もやられた…」
「はあぁ?誰に?」
「……一条」
「なんで?あんたらが偉そうにしたんじゃない?
【影】なんかより、一条君の方が凄い役に経つのに、
本当に使えない!」
くそ!なんで俺がそんな事言われなきゃなんないだよ。
「ねえ、冬美何騒いでるの?」
「一条君、連れて来れなかったんだって」
「まじで?あり得ない」
「だから男達だけで行かせるべきじゃなかったのよ」
香川と秋田だ。
里見と三人でつるんでいるギャルだ。
苦手だ。
「で?そいつだれよ?」
「一条と一緒にいた奴」
「誘拐したの?最低!」
誘拐じゃねぇ、人質だ。
「あれ?こいつ見たことあるんだけど」
「というか、相楽じゃね?」
「マジ!うけるんだけど」
あっ、そうか。
こいつ、里見達が苛めていた相楽じゃん。
「おい!起きろよ。ブス!」
【水】の勇者香川が水をぶっかける。
マジか、可哀想に異世界でも苛められるのか。




